12月14日(金)杉田 敦 ナノスクール[寛容になるための方法 #7]

11月のナノスクールはStuart RingholtがdOCUMENTA (13)で発表した[Anger Workshops]とバグワン・シュリ・ラジニーシの思想、そしてオームという呪文をもとに寛容について考えた。


初めにStuart Ringholtの[Anger Workshops]を体験する。[Anger Workshops]はdOCUMENTA (13)で発表されたワークショップ、参加者は怒りと、愛を身体で表現します。


詳しい内容は「まず、一つ目のフェーズでは爆音で流れるハウスミュージックの中で全身を使い怒りを表現します(5分間)。次のフェーズではモーツァルトの音に乗せて、愛について考えそれをほかの参加者に伝えます(3分間)。そしてその後、それまでの8分間の経験について、参加者同士で語り合います。」


実際に我々がやって見たところ、少し芝居染みた感じになってしまう。多分本物のほうは物凄いエネルギーのなかで行われていたのだろうと思うのだが、なぜだろう。気になる方は一番下に載せた[Anger Workshops]のアーカイヴ写真が見れるサイトのURLを開いて見てください。


一つ思うのは、日々感じる自分自身のイライラや怒り、そして相手の怒りやイライラは、ちょっと見えずらいかたちで、複雑で、でも怒りがあるような無いような、、、。と言う中で過ごしているのかもしれない。つまり何に寛容になるべきなのかがまずよく分からない状態なのかなと感じる。


そして次に、バグワン・シュリ・ラジニーシの思想について考える。その思想とは「真理の探究こそ第一の優先事項であり、人は自らの生の源泉を探究することに関心を寄せねばならないと説く。瞑想が始まりでサマディ(悟り)が終着と説く。(「からっぽの鏡・馬祖 壮神社」)」


そしてオーム。オームはバラモン教をはじめとするインドの諸宗教において神聖視される呪文で日本でもヨガのクラスで唱えられる事が多いらしい。


瞑想を必要としてるのかナノスクールでは最近このようなテーマが多いのですが、バグワンの文章でこんな記述があったのでなんとなく重要だなと思い最後に載せておきたい。


「人をほんとうに助けようとするならば、誤解されるのは避けられない。ほんとうに助けようとするつもりがないなら、誤解されることもない。崇拝や賞賛の的になれる。ただ話をし、哲学を説くだけなら、人は怖がらない。彼らの人生に立ち入ろうとしないなら。


複雑な理論や思想体系を人は学びたがる。それなら申し分のない体験になる。それはエゴを強化してくれる。それはエゴを養ってくれる。だれもが知識を増やしたがっている。それは微妙にエゴを肥やす。
(中略)


人に全面的な変容をもたらすには、ハンマーを使わなければならない。人を形作っている多くの部分を削り落とす必要があるからだ。人はひどい状態にあり、現状では、すべてがおかしなことになっている。それを直さなければならない。だが、人は自分の生き方にたいへん固執しているので、それを変えようとする人物、表面的に変えるのではなく核心において変えようとする人物は敬遠される。怖がられる。少数の勇気ある者だけが、グルジエフのような人物に近づいていく。たいへんな勇気が必要だ。だが、この勇気があってはじめて、人は生まれ変わることができる。」― Osho, “The Dhammapada” Vol. 2, #2 冒頭部分


このテーマもあと数回のナノスクール、果たして寛容になれるのでしょうか!?


Stuart Ringholt: Anger Workshops
http://performa-arts.org/…/entry/stuart-ringholt-anger-work…


みやざわひびき


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月イチセッション
杉田 敦 ナノスクール《nano school #57》[How to be tolerant:寛容になるための方法 #7]
http://blanclass.com/japanese/schedule/20181214/
https://www.facebook.com/events/340651603391950/


あなたの横を、いかにも先を急いでいる男が通り抜けてゆく。肩にかけているバッグがあなたにあたる。あなたはすこしよろめいてしまう。男は気づいている。男は振り向かない。遠ざかりながら、男の舌打ちが聞こえてくる。あなたは怒りがこみ上げてくる。あなたに為すすべはない。


あなたはどうして怒ってしまったのだろう。男には先を急ぐ理由があり、あなたは少し男の行手を塞いでいたのだ。いや、男にはこれといった理由もなく、あなたは十分、身を寄せていたのだとしてもだ。あなたは怒る必要はない。あなたはあなたの貴重な人生の時間を、そんなことのために費やすべきではない。あなたはちょっとだけ肩をすくめて、なんなら、振り向いて、後ろの人と笑い合ったっていいはずだ。


数学や語学、歴史学社会学、そうしたものを学ぶのと同じように、わたしたちは寛容さを学ばなければならない。ナノ・スクールの第5期は、"How to be tolerant:寛容になるための方法"と名付けて、寛容について考えます。一年を通して、Fischli & Weissの"How to work better"のような標語を作成できたら素晴らしい。


※ナノスクールは完全予約制となります。 参加資格は、アート、あるいはそれに関連する分野の専門家、あるいは専門家を目指す人とさせていただきます。


日程:2018年12月14日(金)18:30〜
参加費:1,500円/学生 \1,000円(要予約)
会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)

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アクセス:京浜急行「井土ヶ谷」駅の改札出て正面の信号わたりすぐを左折、一つ目の交差点を右折、二つ目の角を左折、三井のリパーク後ろ、blanClass看板がある細い段々を上がって右の建物2階
https://goo.gl/maps/Q7Aat7nBarE2

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予約方法:ご予約は前日までにご連絡をお願いします。なお定員に達した場合などお断りすることもございますので、あらかじめご了承ください。
〈タイトル〉ナノスクール予約〈本文〉1)日にち 2)氏名 3)住所 4)メールアドレス 5)参加人数
上記の内容でイベント前日までに以下のメールアドレスに送信ください。こちらからの返信を持って予約完了とさせていただきます。
info@blanclass.com

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杉田 敦 Atsushi SUGITA

  • 美術批評。オルタナティヴ・スペース art & river bankディレクタ。女子美術大学教授。最近の著書に、『静穏の書』、『ナノ・ソート』(共に彩流社)、『アートで生きる』(美術出版社)、『リヒター、グールド、ベルンハルト』(みすず書房)、『inter-views』(美学出版)がある。作品に"critics coast"(越後妻有アートトリエンナーレ, 2009)など、キュレーションにポルトガルの現代美術展『極小航海時代』(JAM)などがある。また、批評タブロイド紙 "+journal" の編集、アーティストの増本泰斗と、ディスカッション・プロジェクト"Picnic"も行っている。

12月15日 ★★シリーズ SakSak#8 村田 紗樹 [名で触る]

今週の土曜日、12月15日はSakSak#8
ゲストは村田 紗樹さんです!


村田さんは、blanClass での土曜日のイベント、岸井大輔さんの「始末をかく」への参加、ステューデントイベント、前回の引込線への参加などなど、僕的にはブランクラス経由で様々なところで関わってきた人。

彼女の作品には、音声を扱ったインスタレーションや体験型の作品が多くあり、鑑賞する人物と作品との距離感がよく分からなくなってくるような仕掛けがあって、見たり聞いたりしているうちに、いつの間にか妙な緊張感の中に引き込まれてしまう感じがあって面白い。


今回のイベントでは「名前のついていないところに名付けてみたりしながら、 名について考えてみたい」ということで、例えばそれは、得体の知れない何かに対して、ひとまず距離をはかるための方法を考えてみる、みたいなことなのでしょうか。

ほとんどの物や事には、既に正しい名前や呼び方が付いているような気にもなるけれど、全部が全部、そうとも言い切れないはず。誰かと会話をするときだって、知らず知らずに使っている方言や誰が決めたのか分からない正式名称と、間違った敬語とスラングと、そういうのをごちゃ混ぜにして、組み立て直しながらじゃないと、なかなか会話にならないから。


そういえば、前に住んでいたアパートによく遊びに来ていたノラ猫に、「あいつ」っていう名前をつけていたけれど、もう会わなくなった今の方が「あいつ」っていう名前がしっくりくる距離だなぁということを思い出しました。

こういうイベント自体もきっと、ノラのような得体の知れない何かでしかないのだろうけれど、ひとまず集まった皆さんがそれぞれに、この野良イベントを触ってみることなら出来るはず。
ぜひ会場に足を運んで、触って、その正体に名を付けることができるかを、試してみるのもいいかも知れない。


のもとなおき

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SakSak #8 村田 紗樹
名で触る |ワークショップ
blanClassウェブページ http://blanclass.com/japanese/schedule/20181215/
facebook イベントページ https://www.facebook.com/events/301093083833319/


実家の私の部屋の扉は引き戸なのですが、夜寝ているとその引き戸の方からプクプクプク…と聞こえてくることがよくあり、私はそれを「ミゾノクチ」と呼んでいました。名前のついてないところに名付けてみたりしながら、名について考えてみたいと思っています。(村田 紗樹)

日程:2018年12月15日(土)
開場:18:30 開演:19:00
入場料:1.600円(ワンドリンク付)
場所:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)
https://goo.gl/maps/Q7Aat7nBarE2
企画:野本 直輝

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村田 紗樹 Saki MURATA
1989年神奈川県生まれ。「whisper-amplifier」各地/2014~、「引込線2017」旧所沢市立第2学校給食センター, 埼玉/2017、始末をかく「始末をかく」北千住BUoY, 東京/2018、など。

SakSak
SakSakでは、誰かが発する表現を手掛かりに、その先を一緒に考えながら、その思考を交換することができる場の可能性を模索します。そのために取り敢えず、粗くてもろい、隙間だらけの場を想像してみる。(野本 直輝)
HP https://saksak.localinfo.jp

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12月8日(土)ヤング荘[忘れがたき故郷(仮)]


今週土曜日のLive Artはヤング荘が久しぶりの登場。


ヤング荘はblanClassの場所がBゼミという学校のような場所だった頃に、そこに学びきていた津山 勇、安野洋祐、北風総貴、3人のアーティストが2001年の長い春休みの間に作ったアーティストユニット。


blanClassになってからも、2010年に3人で「紙芝居」パフォーマンスをしてくれている。その後も何度か、新年のイベントで、彼らが干支に扮する一連の年賀状シリーズの映像作品を上映してもらったこともある。


その年賀状日シリーズも干支を一周し、それを記念した展覧会も終えたので、いよいよ新シリーズが始まるということになって、そのタイミングで彼らの古巣でもある、この場所に久しぶりにお呼びしようといことになった。


新シリーズもやはり年賀状を媒体にしたシリーズになるということで、イベントでは、その新シリーズについてのトークと同時に制作もしてしまおうという企画。


前回の2010年以来、津山勇、北風総貴の2人で、ヤング荘は運営されてきたが、これまた久々に、二人が安野洋祐くんにも連絡を取るというので、当日は結成当時のヤング荘がその当時の姿のまま登場することになるかもしれない。


その当時のとても怪しいヤング荘を知っている人も、相当にレアだろうけれど、時空を超えて、ナウでヤングでアンニュイなアーティストユニット、ヤング荘に会いに来てください。


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【blanClass放送室】
12/8(土)のゲスト、ヤング荘の津山勇さん、北風総貴さんと一緒にハングアウトで、約束事について、忘れがたき故郷についてお話を伺いました。



2018/11/27/ヤング荘/blanClass放送室



こばやしはるお




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裏方ヤング荘[忘れがたき故郷(仮)]
http://blanclass.com/japanese/schedule/20181208/
https://www.facebook.com/events/1937241216580746/


約束事について考えてます。


日程:2018年12月8日(土)
開場:18:30 開演:19:00
入場料:1,300円(ドリンク別)
会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)
https://goo.gl/maps/Q7Aat7nBarE2
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ヤング荘 Young Soul

  • Bゼミ Learning System終了。2001年、津山 勇、安野洋祐、北風総貴の3人で結成。過去に実在したアパートの看板を入手し、同名をユニット名として活動を開始。私生活を記録したパフォーマンスビデオや、1坪2階建て木造家屋のインスタレーションの他に、展覧会カタログのグラフィックデザインなど、多岐にわたる分野を横断しながらも一貫した世界観を作り出している。

www.youngsoul.biz

12月1日(土)L PACK.[ハロ〜!ワーク2019]


今週土曜日のLive Artは、blanClass創立年の2009年から3年に1度お呼びしているL PACK.の小田桐奨と中嶋哲矢のお二人が3年ぶりの登場です。


今回は前回2015年に行ったイベント(ハロ〜!ワーク2016)同様に、3年分の活動を整理しながらコーヒーをすすりつつ、お二人の就活を行います。


普通だったら、就活をしている方が相手のテリトリーに出向きお願いにあがるものだが、そこを逆転してスカウトマンたちが訪れやすい場を設えるという試みだ。


前回の「ハロ〜!ワーク」では実際のオファーが持ち込まれて、見事就活が成功。2016年のさいたまトリエンナーレで連携プロジェクトを行った。


さて今回の「ハロ〜!ワーク2019」は、前回とは違うこともいろいろある。


まずは、就活アーティストがL PACK.だけでなく、ゲスト就活アーティストとして、西野正将、森田浩彰の二人がさらに加わっていること。


もう一つは、料金設定がだいぶ変わっていて、アーティストたちとお話をしながらL PACK.が淹れる美味しいコーヒーが飲めるというのが1,000円。それに加えて14:00~のトークが聞けるのが1,500円、きわめつけは、さらにご要望のオファーにL PACKがプランドローイングを描いてくれると11,500円というもの。このプランドローイングは、実現可能なものでも実現が難しいものでも、実現が不可能なものでも受け付けているそうなので、出来上がったドローイングはきっとレアーなものになりそう。


ゲスト就活アーティストの西野正将、森田浩彰、ご両人にも、プランドローイングのことを交渉中ということなので、そちらも楽しみ。


かっちりとしたアートワークのオファーだけでなくても、頼んでみたら、引き受けてくれるかもしれないので、幅の広い「お願い」をどうぞご持参ください。


今年はまだまだ木枯らしも吹かず、暖かな午後が続いています。「お願い」のない方も、ぜひのんびりと美味しいコーヒーを飲みに来てください。


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【blanClass放送室】
L PACKの小田桐奨さん、中嶋哲矢さんと、12/1(土)のイベント「ハロ〜!ワーク2019」などについてお話ししました。収録場所は建築家の敷浪一哉さんとL PACK.が共同で運営している日用雑貨のセレクトショップ「DAILY SAPPLY SSS」。



2018/11/27/L PACK./blanClass放送室



こばやしはるお


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就職活動L PACK.[ハロ〜!ワーク2019]
http://blanclass.com/japanese/schedule/20181201/
https://www.facebook.com/events/121532308743248/


3年に一度のL PACK.によるblanClassでの発表も今回で4回目になります。今年は前回2015年に開催して好評だった『ハロ〜!ワーク』の2019-2020年度版を開催します。東京オリンピックも近づいてくる2019年-2020年のスケジュールを早く確保したいぞ!という各ジャンルの方々のご来場をお待ちしています。もちろんオープンなイベントなので、仕事の依頼が特にない方もどうぞ。


出演:小田桐奨(L PACK.)/中嶋哲矢(L PACK.)
ゲスト就活アーティスト:西野正将/森田浩彰


日程:2018年12月1日(土)13:00~19:00
トークイベント:14:00~15:00
入場料:1,000円(コーヒー付)/1,500円(トーク参加チケット&コーヒー付)/11,500円(トーク参加チケット&コーヒー&プランドローイング付)
会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)
https://goo.gl/maps/Q7Aat7nBarE2

                            • -

西野 正将 Masanobu NISHINO

  • 1982年大分県生まれ。平面から映像とメディアにとらわれず、自身の生活の中で感じた「違和感」から日常を考察するための新たな視点を模索している。近年の主な活動として「中之条ビエンナーレ2015」、「黄金町バザール2016」などがある。現在12月16日まで開催中の横浜美術館コレクション展に作品が出品されている。
                            • -

森田浩彰  Hiroaki MORITA 

  • 1973年福井県生まれ、1998年Bゼミ修了。2012年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジMAファインアート修了。「JUMP」(十和田市現代美術館・青森・2015)、「カメラのみぞ知る」(ハギワラプロジェクツ・東京・2015)でグループ展に参加。個展は「From Something to Something Else」(青山|目黒・東京・2016)、「かわのまち」(NICA・東京・2015)などがある。近年はコラボレーションプロジェクトとして五月女哲平と行っているMaS(T)Aとして「シミュレーションゲーム」(川口市立アートギャラリー・アトリア・埼玉・2015)に参加。
                            • -

L PACK.

www.lpack.jp

約束と約束事(2018_11-12)


12月のゲスト、L PACK.は3年ぶりの出演。3年ぶりに呼んだのには理由があって、そういう約束になっているから。


L PACK.の小田桐奨と中嶋哲矢のお2人は、blanClass創設当時から、近くの黄金町でお店を出していて、その当時のスタッフとも親しかったことから、2009年に出演をしてくれた数少ないアーティスト。ということもあって、3周年記念イベントでお呼びすることになり、その時はほぼ1週間、小田桐くんが住む形になり、そこへ中嶋くんが通ってきて、それまでに溜まったblanClassのアーカイブから勝手に再演をしていくという、コーヒ付きのイベントをしたのだが、その折に、「また来てね」とお願いしたところ、「じゃあ、3年に一度に来ます」ということになり、それを真に受けて、3年経つたびに連絡をしているのだ。最近、横浜に戻ってきて、新たに「DAILY SUPPLY SSS」というお店をスタートしたばかりなので、ちょうど良いタイミングになった。


もう1組12月のゲスト、ヤング荘はもっと久しぶりの出演。


ヤング荘は津山勇、安野洋祐、北風総貴の3人で結成したユニットで、2010年にその3人のパフォーマンスをしてもらって以来、2回目のソロ出演なのだが、何度か新年のイベントに年賀状と干支をテーマにした映像作品の上映をしてもらったことがある。当初より干支が一周(12年)したら発表すると言っていた年賀状のシリーズが一周し、次のターンに入り、今年4月に晴れて「十二支超」というタイトルの展覧会が行われた。


なんだか他人事なのにホッとして、呼ぶことにしたのだけれど、ここまで間が空いてしまったのは、シリーズが完結するまで、暗に待っていたからかもしれない。


今回イベントでは、紹介文に「約束事について考えてます。」とあるので、もしかするとまたしても新たに長期の約束事が生まれるのかもしれないと思うと、ちょっと怖い。


今では副業も奨励されて、社会全体が終身雇用の世の中から大きく舵を切ろうとしているが、少し前まで、自分の人生の大半のことを十代、二十代には早々と決定してしまうのが当たり前だったころは、一度してしまった約束は、今以上に拘束力があったに違いない。いやいや今だって、ブラック企業を辞めることができず、自ら命を絶ってしまう人もいるのだから、そう易々と価値観が変わるものでもないようだ。


だから約束にしても約束事にしても、とても怖い。その約束や約束事に縛られてしまうからだ。


そんなわけで、普段からできるだけ約束をしないよう、心がけてはいるのだが、だからといって約束せずにはいられない。なぜならば、blanClassなんて、約束をして、それを実行することでしか成り立っていないからだ。


いろいろな価値観、ルール、思想や正義なんかとも距離をとりつつ、しっかりとした書類を交わすのでもなく、クォリティーの高い仕事を目指すのも諦めて、ほとんどなにもしていないけれど、テキトーにした「約束」をテキトーに守ることが、唯一、blanClassのクリエイティビティーだと思っているところがある。


果たせなかったり、破ってしまった「約束」がなかったわけでもないが、それなりに正直に小さな約束をぽちぽちと守りながらblaClassを続けている。


小林晴夫(2018.11-12 チラシ掲載)

11月30日(金)アートでナイト#6[Absent Statue|不在の彫像]|笠原恵実子

昨年夏にアメリバージニア州の小さな町シャーロッツビルで、KKKやネオナチ支持者とそれに反対する市民グループが激しく衝突する事件がありました。白人至上主義男性が車で市民グループに突っ込み、女性一人が死亡、35人が負傷するという事態となり、SNSを通じて瞬時にそのイメージが拡散されました。


KKKやネオナチ支持者らがシャーロッツビルで大規模集会を行っていたのは、市内公園にある南北戦争時の南軍司令官リー将軍像の撤去を市議会が決定したことに起因します。南北戦争とは奴隷労働に支えられたプランテーション経済の南部連合と、工業化によって新たな労働力を求めた北部連合によって争われた内戦であり、近代化に伴う産業形態や貿易制度の変化が大きな争点でありました。KKKやネオナチなどの極右団体は、黒人奴隷制度維持を主張した当時の南軍を白人至上主義と重ね合わせ、旧南軍旗を集会で用いています。彼らにとってシャーロッツビルリー将軍像撤去は、白人至上主義のために戦った英雄像の撤去を意味したわけです。そういった解釈に対して、リー将軍同様南部連合であったジャクソン将軍の子孫が、バージニア州議会議事堂にあるジャクソン将軍像撤去を自ら求め、シャーロッツビルでの白人至上主義者の集会を踏まえ「南部連合の像が存在することによって、人種差別主義者に主張の拠り所を与えてしまうと分かった」と述べました。この公開書簡もツイッターで瞬時に拡散し、Monuments Must Goいうフレーズが生まれトレンド入りを果たしました。


全米各地にはシャーロッツビル以外にも南部連合に捧げられた像が何百と存在しますが、この事件をきっかけに、それらの彫像は大きな注目を浴びることとなりました。いくつもの地方自治体が彫像の撤去を決定し、また左翼グループが暴力的に彫像を排除する、ノースキャロライナ州ダラムの様なケースも起きています。人々が今まで止まって眺めることさえしなかった古びた彫刻の、その意味や歴史的背景、象徴性について考えることなったこれら一連の現象を、私はとても興味深く思っています。たくさんの意味不明な彫像がある日本においても考えるきっかけになればと思います。


私は10月末からノースキャロライナ州ダラムに行き、実際に彫像撤去に関わったアクティビストたちと話をする機会を持ちます。今回のアートでナイトではそれらの報告も兼ねて、みなさんと「Absent Statue|不在の彫像」について意見を交わしたいと考えています。


かさはらえみこ


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特別セッション
アートを共に語る会笠原恵実子 アートでナイト#6[Absent Statue|不在の彫像]
http://blanclass.com/japanese/schedule/20181130/
https://www.facebook.com/events/1956442264656409/


昨年夏、アメリバージニア州で、白人至上主義者たちとそれに反対する市民グループが衝突し、KKK支持者が運転する車で女性一人が殺害されました。きっかけとなったのは南北戦争時の南部連合将軍の彫刻像撤去問題であり、奴隷制度維持を掲げた当時の南部連合の主張が、現代アメリカ社会における白人至上主義とすり替えられている現状が浮き彫りとなりました。こういった状況に危機感を覚えた人々は多く、全米各地に残存する南部連合彫像に今だかつてないほどの注目が集まっています。今回はこういった一連の現象についてみなさんと考えてみたいと思います。10月末には彫像撤去に関わったアメリカのアクティビストたちとの交流が予定されていますので、その報告も兼ね、多くの意味不明の彫像が存在する日本の状況にも言及できたらと考えています。


日程:2018年11月30日(金)19:30〜21:30
入場料:1,500円(ドリンク別)/学生:800円
会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)
https://goo.gl/maps/Q7Aat7nBarE2

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笠原 恵実子 Emiko Kasahara

  • アーティスト。初期は身体を通じて女性と社会との関係性を考察する彫刻作品を制作。近年は性別や宗教、国籍や言語など社会を規定する制度とその状況についてフィールドリサーチを実施し、その記録を元に制度の曖昧性を示唆する作品を多岐に渡る手法で制作している。主な展示に、PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015、ヨコハマトリエンナーレ2014、『キュレトリアル・スタディズ04笠原恵実子 inside/outside新収蔵作品を中心に』(京都国立近代美術館、2010)、シドニービエンナーレ(2004)、光州ビエンナーレ(2001)など。

11月24日(土)ステューデントアートマラソン vol.14


今週土曜日のLive Artは、ステューデントアートマラソン


2016年に公募式になってから4回目になったblanClass定番企画。ステューデントアートマラソンは、学科や専攻を違えた現役学生が、一時だけ学校を離れ、それぞれの表現をやってみる異種格闘技戦


今回は7名の若きアーティストが、例えば、現実と記憶のギャップ、ストーリーとイメージ、個人的な出来事と公になった情報、安全の確認、ポケットの小銭などなどのそれぞれが身近なところで感じたり考えた問題をそれぞれ、上演型、参加型、ワークショップ型など、パフォーマティブで実験的な形で発表します。


毎回、未解決で予兆的な問題提起が投げ出される、とても貴重な場になります。


どうぞお見逃しのないよう…。



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【blanClass放送室】
11月24日(土)のステューデントアートマラソンvol.14に参加するステューデンツの中から、芹澤 采さん、砂長美智さん、齋藤健一さん、沢辺啓太朗さんの4名で放送室を収録、最近のみんなの制作や活動のお話を聞きました。進行はblanClassスタッフの宮川知宙が担当しています。




2018/11/6/ステューデントアートマラソン vol.14/blanClass放送室



こばやしはるお


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アートマラソンステューデントアートマラソン vol.14
http://blanclass.com/japanese/schedule/20181124/
https://www.facebook.com/events/287656131874230/



blanClass定番企画、ステューデントアートマラソンは学科や専攻を違えた現役学生が、一時だけ学校を離れ、それぞれの表現をやってみる異種格闘技戦。世の中にはたくさん存在するはずのどのジャンルからもズレているような作品行為が見られる稀有な機会です。


日程:2018年11月24日(土)
開場:14:30 開演:15:00
入場料:700円(ドリンク別)
会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)
https://goo.gl/maps/Q7Aat7nBarE2

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敷地 理[far away very close]
片手で自分の頭蓋骨を掴む。身体の外側にある、確かに存在する世界に対して、目で見て作り出す世界だけを正しいと思うのなら、その世界は片方の手で掴んでしまえる程の小ささである。動きながら自分の周りに集まってくる意識と反対に遠くの存在を考えてみる。それは僕の記憶のよく思い出せない昨日と、よくフラッシュバックするずっと前の出来事の関係に似ている気がする。
Osamu SHIKICHI東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修士1年)

齋藤健一[確認の確認]
安全を確認する作業は何度も繰り返されることによって、本質的な意味を失うことがある。それは、どこかの工事現場や駅、あるいはどこかのプールで起きている。そこで私は、失われた意味やそれが失われる原因を、パフォーマンスによって確認していきたいと思う。
Kenichi SAITO東京造形大学絵画専攻2年)

芹澤 采[視覚を奪った鑑賞法]
美術作品に込められたストーリーが各々ある。そのストーリーと視覚から得た情報を頼りに鑑賞して行くスタイルがほとんどだ。では、ストーリーだけを言い渡されて、視覚を奪った鑑賞方法を取ると受け取る側はどう変わっていくのか見て見たい。
Aya SERIZAWA多摩美術大学油画専攻4年)

  • 2017年「はなまる展」(多摩美術大学芸術祭)、2018年「Art chapel」(KUMA GALLERY)
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栗原 麻緒[Light]
あなたが腹の底で抱える真実を見ることは出来ない。本心を隠すことで、無用な誤解や衝突を避けることも選択肢の一つである。もし、自分が周りの意見に合わせれば、他の誰かの意見の信憑性も揺らぐだろう。誰もが口を紡げば何も見えない。
Mao KURIHARA女子美術大学大学院工芸1年)

砂長 美智 [小さなものを大きくすることの実験]
個人的な小さい出来事が公に発信できたり共有されることは今の時代SNSなどの普及により当たり前のことだと考える。そのようなコミュニケーションは公になる瞬間に、真実の出来事が隠蔽されたり捻じ曲げられているように見られることが多々ある。その出来事について作品を作ることにより考えられたらと思う。
Michi SUNANAGA東京造形大学絵画専攻4年)

沢辺 啓太朗[Making Textiles]
服、カーテン、壁紙、家具。身近なところに存在し、またそれ無くしては生活すら難しくなるにも関わらず忘れられがちなテキスタイル。今回はテキスタイルの定義を検討し、それに沿って簡単な制作を行います。
Keitaro SAWABE東京造形大学テキスタイルデザイン専攻1年)

脇田颯人 [透明なテント1(仮)]
私は謎のイベントが好きだ。それは生産的な行為ではなく自己満足と言われても仕方のない行為に見えるけれど、この社会とは別のところで自由の空間を作り上げることが自分を救うことにも誰かを救うことにもなりうるのではないか。必要なのはボクとキミでその「場所と時間」を作ること、作ることによってボクとキミとその周りとの関係について考えること、その小さな関係を広げてボクたちが生きることを探ること。そんなことを最近考えています。それを上演もしくは上映で表現したい。
Ryuto WAKITA東京造形大学映画専攻3年)

  • 1997年生まれ。東京造形大学映画専攻在学中。主な作品に映画「闇に目を」(2017年3月渋谷・光塾にて上映)、映画「リバー・サイド・カメラ」(2017年10月早稲田映画まつりにて上映)、映画「前後左右○□」(ぴあフィルムフェスティバル2018 1次選考通過作品)、演劇「なんだか好きになりそうだ」(2018年9月東京造形大学内展示室mimeにて上演)、映像・演劇・パフォーマンスなど表現を問わず活動中。

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