5月12日(日)泉 イネ[サロンさど島]

今週のLive Artは日曜日、泉イネが1年半ぶりの登場。

 

前回のイベントは[メンセナンツ]というタイトルで、面接とメンテナンスを掛け合わせたようなイベントを計画した。

 

今回のイベント[サロンさど島]も、場を開いた上で、対話をしながら、おぼろげな目的に向かうという方法は近いのかもしれない。

 

でも今回はおぼろげながらも「佐渡島」というはっきりとした目的地が設定されており、そこへ向かう旅の道すがらを、道連れにするお伴を募りながら、さらに細かな目的も探っていこうというお茶会が催される。


なぜ佐渡なの? というと、佐渡に刻まれた歴史や風雨度もあるのだろうが、何かしらに泉イネが「ピン」ときたからということらしい。声をかけている人々は、なんか凄そうな人々なので、ただの旅では終わらない気配…。


お客さんが訪れたら、一緒にお菓子などをつくりつつ、佐渡へ思いを馳せていく…? はてさてどういうイベントになるのでしょうか? ぜひともご来場くださり、その行く末を一緒に目撃してみませんか?


blanClass放送室は、現在イネさんが別府に滞在中のため、5/8(水)にこちらに入るというので、blanClassで収録を行う予定です。


イネさんの文章をコラムにも…、メールニュースより転載したします。そちらもお読みください。
https://blanclass.hatenablog.com/entry/2019/05/06/210021

 


こばやしはるお


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茶会泉 イネ[サロンさど島]

 

泉イネが佐渡島へ旅に出たのは2015年。作家を休み、佐渡の宿坊へ。そこから出会った人、場所や風景についてと、これからの旅について。

 

金山、流罪能舞台世阿弥、芸能、豊かな自然。佐渡にまつわるあれこれ。ある振付家と罪について、あるキュレーターと罪と害の違いについて話した記憶。誰も傷つけたことのない人なんているのでしょうか。制作は、アートは?

そんなことを茶菓子をつくりながら話せたらいいかもしれないし、話さなくてもいいのかもしれない。ひとつの島について想う、美味しい時間にしたいです。

サロンへ来られる方は佐々木友輔さん(映像作家)島敦彦さん(金沢21世紀美術館館長)。

 

タイミング合えば来られる方は木野彩子さん(振付家舞踊家)、中村恩恵さん(振り付け家・舞踊家)、梶井照陰さん(佐渡島在住・写真家・僧侶)、寺田佳央さん(画家・「佐渡芸能アーカイブ」制作)、坂本大三郎さん(山伏・作家)、天野太郎さん(横浜市民ギャラリーあざみ野学芸員・札幌国際芸術祭2020企画ディレクター)、山出淳也さん(NPO法人BEPPU PROJECT代表)。

skyp参加されるかもしれない方は上條桂子さん(フリー編集者)などなど。

 

関連サイト
https://shimart-mistletoe.tumblr.com
http://shimartmistletoe.tumblr.com

 

日程:2019年5月12日(日)16:00ー19:00(出入り自由)
入場料:1,500円(ワンドリンク付)
会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)
https://goo.gl/maps/Q7Aat7nBarE2
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泉 イネ Ine IZUMI
2008年、本にまつわる6人の女性を架空の本姉妹モデルとして「未完本姉妹」の制作をはじめる。
2014年からは本姉妹をモチーフに紡がれた絵や写真、文、記憶をピアニストに伝え、未完本姉妹のテーマ音楽を制作。いつかできるかもしれない小説・映画へのアプローチを続ける。
ダンサー:振付家と絵のセッション「And Zone」、工芸職人との共同制作「糸の手」。免疫疾患の発症をきっかけに作家が休むことを問う「休み時間」(higure17-15cas、DIC川村記念美術館)、佐渡島や様々な土地へ通いながら新たに出会う人や風景を結ぶ試み「shimaRTMISTLETOE」など、自身を筆か絵の具として絵を描くように生きています。

 

泉イネより|サロンさど島 ( 5/12 blanClass )

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佐渡島 岩首の棚田

こんにちは

みなさん、お元気ですか。


5月12日「サロンさど島」blanClass のご案内です。

サロンには映像作家の佐々木友輔さん、島敦彦さん(金沢21世紀美術館館長)寄られます。

と書くと、ちょっと難しそうな雰囲気に感じられるかもしれませんが
イネ風に…のんびりふわふわした時間にしたいと思っています。


あとタイミングが合えば
木野彩子さん(振付家舞踊家)、中村恩恵さん(振り付け家:舞踊家)、梶井照陰さん(佐渡島在住、写真家:僧侶)、寺田佳央さん(画家、「佐渡芸能アーカイブ」制作)、坂本大三郎さん(山伏:作家)、天野太郎さん(横浜市民ギャラリーあざみ野学芸員:札幌国際芸術祭2020企画ディレクター)、山出淳也さん(NPO法人BEPPU PROJECT代表)も寄られる予定です。
skyp参加されるかもしれない方は上條桂子さん(フリー編集者)


今さら、ほんとに??と自分でもドキドキですが
誰が寄られるかは当日のお楽しみに。。


寺田さんは佐渡の岩首という棚田の山の上に「世阿弥の彼岸ボート」小屋を作られて
佐渡の芸能にも詳しく、画像を見せていただくことになりました。


16:00〜19:00 の間、出入りは自由です。
モバイルキッチンでお菓子つくりながらお喋りしています。
ふらり寄るだけでも、なかなか会えない方々、会ったことのない方もどうぞお気軽に。
佐渡へのこれまでを垣間見ていただけるようメモを貼るので
気になるメモありましたら私に声をかけてください。


<寄られる方にひとつお願い>
佐渡と聞いて思いつく色をワンポイント身につけてきてください。
物が見当たらなければ、その色を心に留めてきてください。

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日程:2019年5月12日(日)16:00~19:00(出入り自由時間)
入場料:1,500円(ワンドリンク付)
会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)
https://goo.gl/maps/Q7Aat7nBarE2
アクセス:京浜急行「井土ヶ谷」駅の改札出て正面の信号わたりすぐを左折、一つ目の交差点を右折、二つ目の角を左折、三井のリパーク後ろ、blanClass看板がある細い段々を上がって右の建物2階

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佐渡島


学生の頃、能クラブに入ったことがきっかけで一度だけ合宿へ行ったことがありました。
佐渡には能舞台が30以上、日本の能舞台の1/3あるといわれています。(それは世阿弥が流されたからではなく、金が採れた江戸時代の佐渡奉行が能に長けていて能楽師を率いて佐渡へ渡り、能舞台を当時200以上つくらせたから)


私はあのとき見た風景を忘れながら、制作や子育て、生きることにバタバタして倒れて休んで…
途方にくれた頃になんとなく佐渡を思い出しました。それから、佐渡に実家があった上條さんに相談したり、
友人に教えてもらった、佐渡に住む写真家・僧侶の梶井さんへ連絡して佐渡を訪れたのが2015年の6月。


再び訪れた佐渡の風景は目に染みました。

深い青色の日本海から顔を出している孤島。

金が採れて、能舞台がたくさんできて、賑わった時代の名残。

世阿弥が腰かけたと言われる石。

外海府には何千年も波風をうける大きな岩盤。

両津から北へ向かう内海府沿いの道は、途中から空気が異界へと切り替わる。

南の方には穏やかな柿畑。棚田。昔、船がつくられた集落。

雅な人から宗教家、戦で追われた様々な人達がたどり着いた住処。

木肌のまま静かに残るたくさんの寺社。

長くシャッターの降りている商店街。

土田麦僊の生まれ育った新穂の風景。

加茂湖と、穏やかな波の真野湾

トキが足をぶら下げてスゥーと飛び、大佐渡と小佐渡の間に広がる平野。

昔から住んでいる人、新しく住み始めた人の営み。

たくさんの文人達が訪れた島…


私が佐渡へ行くようになってから
会う人はみな「佐渡はいつか行ってみたい」と言います。


何に、惹かれるのかな


惹かれるところは宝物のようにいくつも眠っている島だと、私は想います。


サロンさど島でお会いしましょう


南は別府より 

 

 

いずみいね

5月2日(木)・3日(金)・4日(土) たくみちゃん[完全で検証可能かつ不可逆的な]ワークイン:4月29日(月)- 5月1日(水) 

今週は月曜日から土曜日までずっとたくみちゃん。
 
本日(4/29)より、ワークインプログレスが3日間。 本番が5/2(木)より3日間。ゴールデンウィーク中、6日間連続で行われる。
 

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たくみちゃんは、blanClassでは、2016年より以前の名前「橋本匠」として、独自の形式「トランスファーめいそう」を発表してきたアーティスト。(昨年の発表の時にアーティストネームを現在のたくみちゃんに改名した)
 
トランスファーめいそう」というのは即興でひねり出される、音(オン)の強い言葉の連鎖とそこに呼応するように重ね合わされるからだの動きによって展開される。
 
さらには描いては消える、ドローイング、書、同時中継のムービーなどが重なって、結果たくみちゃん独特の迷走? 状態にお客さんを引き込んでいくというもの。トトトーンと転がるように、言葉やものやからだがつながったり解けたりする様は、見ている(聞いている)うちに癖になってくる。
 
これまでの「トランスファーめいそう」は、あくまでもこの即興に力点が置かれたものだったのだが、今回は、新境地、パフォーマンスのためにテキストを書くことから始まった。
 
テーマはタイトルにもなっている「完全で検証可能かつ不可逆的な」。これはアメリカが北朝鮮に対して朝鮮半島の「非核化」において、示されてきた条件のこと。
 
即興の形式を見直して、ある程度固い形を自身の制作に求めるようになったのには、「たくみちゃん」という改名後のアーティストネームと「トランスファーめいそう」というインプロ形式がどうも合わないということのようで、名前を変えるだけではない作品の確固たる変化を求めてのことでもあるようだ。
 
この新しい試みがどんな感じに収まるのか? ワークインプログレスの成り行き次第では、思わぬ方向にたどり着くかもしれない。ちなみにワークインを見た方は、本番の料金は割引になりますので、ワークインと本番の両方を見るのも一興では?
 
 
こばやしはるお
 
 
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【blanClass放送室】
ゲストはたくみちゃん。2019年のゴールデンウィーク中にワークインが3日間、本番が3日間、連続6日間の公演を行います。今回の作品のテーマにもなっている長年アメリカが北朝鮮に要望しようとしてきた核問題の「完全で検証可能かつ不可逆的な」というキーワードとインプロからの飛躍との関係についてお話をお聞きしました。
 
 
2019/4/9/たくみちゃん/blanClass放送室
 
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パフォーマンス又は演劇|たくみちゃん[完全で検証可能かつ不可逆的な]
 
 
テキストを書いています。30代になったのでそういったこともしていきます。
テキストの中にインプロをとり込み、未来の不確実さを、そのまま人類の未来に投射します。
blanClassだからこその内容にしたいです。是非ご参加ください。
 
 
日程:2019年5月2日(木・祝)・3日(金・祝)・4日(土・祝) 
開場:18:30 開演:19:00 
2,100円(ワンドリンク付) 
ワークインプログレス含めリピーターは1,000円 
 
ワークインプログレス公演 
日程:2019年4月29日(月・祝)・30日(火・祝)・ 5月1日(水・祝) 
15:00ー1時間程度+teatime 1,000円 
 
会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)
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たくみちゃん TAKUMICHAN
たくみちゃんは独自のインプロヴィゼーションを構築する。近年の発表に「歌舞伎町ダンスクロッシング」「幽体の集めかた」等(共に2018)。横浜ダンスコレクション2016審査員賞(Aokid×橋本匠として)、SICF19 PLAY 中村茜賞など。

4月27日(土)佐々 瞬[ある家の行方]

今週土曜日のLive Artは佐々瞬が4年ぶりにソロ出演します。

 

佐々瞬は2011年3月、「3.11」の直後にイベントをしていただいて以来、blanClassでも、さまざまなアプローチのパフォーマティブな表現を試みてきた。

 

以下は、彼がblanClassで行ったソロイベントやコラボレーション企画のタイトルの一部。

 

[それについての話,それらの行方]
[ある時間、彼らの話]
[それらの日々をへて、あの日がやってくる]
[彼らとの対話(仮)]
[それら について話すこと]

 

「それ」、「あの」、「ある」、「彼ら」のような、指し示している事柄が特定できないようなタイトルが多い。それは、括弧で括られるような事件の名前や固有名詞が現実の事象から離れて、例えば別のイメージに転化してしまい、その名前を繰り返すことで、わかってしまったような錯覚に陥ることに警告を発しているのに違いない。

 

にもかかわらず、確かにあったであろう、事柄、時間、場所のことを、経験したものではない人々が、考える姿勢をアートワークとして形にしようと奮闘をしているようだ。

 

今回久しぶりのblanClassでのイベントでは、活動の拠点を仙台に移した佐々が、ここ数年、取り組んでいる、幾つかの場所の中から、津波の被害にあった仙台の沿岸部に取り残され、取り壊されずに残っている一つの住宅をめぐって、何かしらのアクションが企てられている。

 

事前にあまり詳しく語れないのが、佐々くんのイベントの特徴。当然のことながらちょっとした? サプライズも用意している。

 

来ていただけるお客さんが怒ったりはしないかと、心配にもなるが、どうぞ、そこらへんも面白がって、事柄や人柄を支え得る「場」のあり方について、あるいは可能性について考える機会にしてください。

 


こばやしはるお


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【blanClass放送室】


4/27(土)のゲスト佐々瞬さん。週末
のLive Artに久しぶりの出演します。仙台で活動中の佐々さんが、最近企てている「ある家」について、仙台とハングアウトでつないでいろいろとお聞きしました。

 

2019/4/16/佐々 瞬/blanClass放送室


2019/4/16/Shun SASA/blanClass Broadcasting

 

 

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パフォーマンスもしくはトーク佐々 瞬[ある家の行方]
http://blanclass.com/japanese/schedule/20190427/
https://www.facebook.com/events/2218349925095434/

 

宮城県仙台市の海沿いに建っている、ある家についてのイベント。
その家は東日本大震災津波によって被害をうけ、震災から8年が過ぎた現在も当時のまま残されている。その家が今後どうなるのかが示される。ゲストアーティスト参加の可能性あり。

 

日程:2019年4月27日(土)
開場:18:30 開演:19:00
入場料:1,500円(ワンドリンク付)
会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)
https://goo.gl/maps/Q7Aat7nBarE2
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佐々 瞬 Shun SASA
東京造形大学卒業。仙台を拠点に活動。「過去/未来」の出来事や記憶を、常に更新され続け得るものとして扱い、「今」をあらゆる可能性へと切り拓く試みを一貫しておこなう。その作品は、複数の個人による、きわめて私的で曖昧な記憶や記録によって紡がれる。近年の主な展覧会に「あなたに話したいことがある」(2017年、Gallery TURNAROUND、仙台)、「うたが聞こえてくる暮し(旅先と指先)」(2016年、ARTZONE、京都)など。また、参加したグループ展に「六本木クロッシング2016展」(2016年、森美術館)、「Omnilogue: Your Voice is Mine」(2013年、シンガポール国立大学美術館、シンガポール)、「大邱フォトビエンナーレ2012」(2012年、大邱芸術発展所、韓国)「MOTアニュアル2012」(2012年、東京都現代美術館、東京)などがある。
http://sasashun.com

死んでしまった者と生きている人の狭間で「実験的」であること|「ゴーストライター」と「ハイツ高山」について

今年の2月、TPAMフリンジ参加作品として、昨年に引き続き高山玲子にお願いをした。

 

高山玲子は演劇という形式を足場に主に俳優として活動してきたアーティスト。blanClassでは、2017年からあえて最終的なフォーマットを決めないような制作方法を模索しながら、極めて実験的な上演を行ってきた。

 

TPAMの本体が舞台芸術の専門家たちの交流が目的の催しということもあり、2018年に2年ぶりにTPAMフリンジに参加するにあたり、舞台芸術+blanClassならではの多ジャンルなコラボレーションへの挑戦を期待して、彼女に出演をお願いしたのだった。

 

昨年(2018年)は「ゴーストライター」というワークショップと演劇の上演が別の階層にいながら、同時に行われるといった試みをした。コラボレーターは、アーティストの荒木悠が同時通訳としてかなり重要な役が任された。ほかに、撮影が福井琢也、衣装に高橋愛(suzuki takayuki)が参加している。また訪れた人々も観客というより、ワークショップの参加者としてなくてはならない役割を果たすことになるので、半強制的にコラボレーターになる。

 

まずはその参加者たちがそれぞれ自分が生まれてから死んでしまうまでの人生を用意された用紙に記入するというワークショップから始まる。そこに書かれた最後の部分、つまりそれぞれの「終焉の時」を本人に朗読してもらい、荒木悠が英語で同時通訳をする。日本語から英語に翻訳されるテキストを元に、別室にいる高山によって上演が試みられる。その様子は参加者たちのいる会場に同時中継されている。

 

トランズレートされた、個々の参加者が思うそれぞれの「終焉」のイメージを、テキストだけを頼りに参加者たちの身体とは異なる演者が再現をするというのが、彼女が自身に課したタスクなのだが、会場に充満している雰囲気を遮断したような状態で、別室で演じている高山だけが、その雰囲気を共有できない。この実験に訪れた人々は観客という立場ではなく、いつの間にかその場を形作る重要な役割を担うのに比べて、その場の空気は高山には届かないのだ。

 

ゴーストライター」とは、通常、名前を出している著者の代わりの影の著作家のことだが、高山玲子版「ゴーストライター」では、参加者自身の未来の終焉を文字化すること、その朗読を英語に同時通訳する翻訳者のこと、さらには本人にの代わりに演じる高山自身のことも比喩している。つまり終焉を迎えた後の「ゴースト」に成り代わってテキストを書き、翻訳がなされ、演者が演じることで、すでに死んでしまった人々やこれから死んでしまうだろう人たちの「ゴースト」たちをあぶり出そうとする試み。

果たして「ゴースト」たちは現れたのだろうか? 参加者たちは未だに「終焉」を迎えず生者として、そこにいるわけなので、その「ゴースト」自体は、すでに死んでしまった人たちと同じようにやはり不在のままだったのではなかっただろうか?

 

今年(2019年)の「ハイツ高山」は、40分程度の演劇がループ状に上演され続けられるというものだったのだが、4日間の公演はそれぞれ5時間から8時間の長丁場で、思ったように切れ目のないループ上演は不可能で、断続的に始まっては終わり、ひとしきりお客さんと交流するという流れになった。また「ハイツ高山」でも、装置に新美太基、撮影・編集に前澤秀登、ドラマターグ・翻訳に中田博士、グラフィックデザインに一野篤という新たなメンバーでのコラボレーションが実践された。

 

ゴーストライター」では、高山が演じた「終焉」は誰かしら人間のものだったが、「ハイツ高山」では、建物の「終焉」を高山が演じるという試みになった。

 

「建物」とはblanClassの建物のことだが、その「終焉」は少し先に訪れるであろう、この建物の「終焉」。blanClassの活動が今年の10月で小休止するという告知をした後だったので、実際に訪れるであろう終わりと重ねて示されたフィクションの「終焉」だった。

 

この建物の記憶ですと言って小冊子が手渡される。そこには年表のような物語が書かれていて、読んでいくと、きっと本当のことなのではと思ってしまう。blanClassはその昔、Bゼミという現代美術を学ぶ寺子屋のような場所だったので、そこで本当にあったことが少しだけ脚色されているのかもしれない? などと思うかもしれないが、全くのフィクション。読み進めていくとここに住った女主人の物語のようで、実は建物自身の物語が描かれている。

 

観客はその小冊子に目を通しながら、目の前で高山玲子による独演が繰り広げられる。パフォーマンスは40分間で一周する照明が照らし出す年代ごとに、冊子に描かれた物語が演じられる。上演回ごとに、差し替えられる部分もあり、テレビのゲームショーのようだったり、簡単なワークショップなどが観客の参加型で行われた。その中で1度、これら「ゴースト」シリーズを制作する発端となった、近しい演出家の死と、長年一緒に暮らしていた猫の死について触れた。現実に彼女をおそった自分以外のものの「終焉の時」に立ち会った経験が、この実験へと繋がったのだ。

 

ゴーストライター」と「ハイツ高山」共に、あらかじめ形の決まったやり方をなぞるのではなく、とても抽象的で行き先が不明な状態から出発をしている。それぞれユニークなコレボレータたちと、実際に装置を動かしたり、ビデオで撮影をしながら、その都度できることやその効果を確かめながら、ちょっとずつ行き先を見つける作業が繰り返される。おそらくこの2つの試みの手前にぼんやりとした形で彼女が抱えたものが、現実に起こった突然の不在感だったのではないだろうか?

 

場というものは、立ち現れては消え、また立ち現れるもの。それは芸術のようなものも同じで、ふと立ち上がっては、わりとすぐに死んでしまう。どこかしらに遺物のような痕跡としての作品はあり、そこからいろいろと察することもできるので、そうしたものは死守しなければ…と長年思ってきたのだが、私自身の周りで確かに起こったはずの芸術のようなことは、その瞬間に立ち会わなければ、露のように消えてしまう。昔ある人に私の活動が酷評されて、夏草のように現れるが、夏草のように枯れてしまったと書かれたことがあったが、また少し時間が経って、また夏が来れば夏草のように生えるもの。死んではまた生き返るのもアートの理なのだ。

 

でもしかし「ハイツ高山」が思い起こさせてくれたのは、そういう意味での「終わり」や「死」ではなく、本当にこれでおしまいといった、後戻りができない現実の「終焉」のこと。

 

高山さんの愛猫が亡くなった、その少し後、わが家の愛猫も予期せず亡くなってしまったことも重なり、その取り返しがつかない誰かの不在をあらためて思い知ることになった。

 

 こばやしはるお


★TPAMフリンジ2019参加作品
インスタレーション・シアター|高山玲子[ハイツ高山]

blanclass.com

 

★TPAMフリンジ2018参加作品
演劇+WS(自由参加)|高山玲子[ゴーストライター

blanclass.com

 

4月20日(土)加藤康司[父を語ることは、世界を語ることかもしれない]

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《父を語ることは、世界を語ることかもしれない》2019
 
今週土曜日のLive Artは加藤康司がソロでは初登場。
 
blanClassでは2017年のステューデントアートマラソンに出演している。その時の作品にも扱っていたのが、彼が当時住んでいたエリアのほど近くにあった米軍厚木基地。イベントでは、近隣の空を飛ぶ軍用機の影を撮影した映像のインスタレーションを発表した。
 
他にも厚木基地横田基地の周辺に住まう人や、そこに生まれた独特な文化を取材してみたり、何かしら自分と社会の間にある物的に見えているものを手掛かりにしながら、web siteやポスターなどを使ってパフォーマティブに関わる仕掛けを模索してきたが、しかしうまく距離を縮められず、一定の距離をとりながら、自分の方に引き寄せようとしてきた。
 
発端は、飛び交っている戦闘機の機影が、大学生の彼の日常に当たり前のように見えていることだったに違いないが、よくよく聞いてみると、「基地問題」に完結した興味というより、ニュース、食べ物、音楽やファッションなどに、時折、まとわりついてくる「アメリカ」というイメージ自体に、縮められない距離を感じているようなのだ。
 
今回のイベントは展覧会とディスカッションという構成のイベントなのだが、テーマは「父」。
 
米軍基地から始まって、「アメリカ」を中継した作品の展開は、一回りして出てきたテーマが、彼の父が持ち込み、彼には手の届かない「アメリカ」のイメージを通して感じてきた「父」の捉えがたい面影だった。
 
考えてみると戦後の日本にとって「アメリカ」は力技で伝染してきた、とても悩ましい文化。(世界の多くの地域で同じようなことが起ってきたといえるのかもしれないが?)家族間に感じる、なんとも収まりのきかない感情とも相まって、すっかりこじれてしまったまま、すでに遠くの問題になりつつあるのかもしれない。
 
どっぷりはまった世代とはまた違った距離感で、遠くのアメリカのことを…、それから遠くの父親のことを、しばし考えてみませんか?
 
 
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【blanClass放送室】

4/20(土)のゲスト加藤康司さんと、彼の作品が、これまでに扱ってきた米軍の基地について、基地周辺の文化について、そこから派生して出てきた興味として、彼の父と父が影響を受けたアメリカについてお聞きしました。

 

2019/4/9/加藤康司/blanClass放送室


2019/4/9/Koji KATO/blanClass Broadcasting

 

 

こばやしはるお

 
 
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展覧会+ディスカッション加藤康司[父を語ることは、世界を語ることかもしれない]
 
米軍基地に関心を寄せてからしばらく経ち、なぜこのようなテーマに至ったのか、考えてみた。そこでふと、若い頃にアメリカで生活をしていた父親という存在が見えてきた。どこにでもいるようで、どこにでもいない。世界でたった一人の、父と僕にまつわる物語。
 
日程:2019年4月20日(土)
展覧会:12:00ー19:00
イベント開始:19:00
入場料:展覧会 500円/イベント 1.600円(ワンドリンク付)
会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)
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アクセス:京浜急行「井土ヶ谷」駅の改札出て正面の信号わたりすぐを左折、一つ目の交差点を右折、二つ目の角を左折、三井のリパーク後ろ、blanClass看板がある細い段々を上がって右の建物2階
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加藤 康司 Koji KATO
1994年生まれ。2016年弘益大学校(韓国)交換留学。2017年多摩美術大学美術学部卒業。現在東京藝術大学大学院GAP専攻在籍。主に映像作品を制作し、政治的、社会的問題と自身との関係性を模索する。またそれらを通して、自己と他者との見えない権力構造を探求する。

4月13日(土) ★★シリーズ SakSak#12 西山友貴[Re:start]

今週の土曜日、SakSak#12のゲストはダンサーの西山友貴さんです。

 

西山さんとは、今年の2月に西山さんと僕と、タップダンサーの米澤一平さんと、3人で共演したイベントがきっかけで知り合った。そのときは3人で1つの公演を発表したのだけれど、それを経て、今回はSakSakでのソロイベントをお願いしてみた、という流れ。

 

最初にお願いするタイミングで、やるとこはダンスじゃなくても何でもいいですよ、と伝えたところ、何やらえらく喜んでいたのが印象的だった。

そうしたら、書道をやっていることや絵を描くことが好きだったこと、ドキュメンタリーが好きなことなどなど、ダンス以前に彼女の内にあった、根本的な表現欲求みたいな部分を改めて思い出したそう。

 

分かりやすさとか、伝えやすさばかりが大前提にされるこのご時世では、ダンスも美術も何かとそれぞれ形式化させて、切り離されて簡略化されがち。

アーティストが本来はひとりの人間である以上、形式上の肩書きに踊らされて、それっぽいイメージに回収させるような甘えあうやり方にはできる限り抵抗しないといけないはず。

そうすると、少し複雑なやり方だったり、端的な言い回しでは説明がつかない抽象的なことが、当たり前のように目の前に現れるわけで、それまでの大前提をひっくり返して見せてくれる。

 

だから、ダンサーだからといってダンスを踊らないといけないわけでもないし、美術家は美術作品だけ作っていればいいというわけでもなくて、それぞれの境界線をなんとなく認識した上で、それらを丁寧にひもといていくことも、同時にやっていかないといけない。

 

と、なんとなく、今回西山さんがやろうとしていることを想像して自分自身に置き換えてみたら、そんなようなことを考えてしまった。

イベントは、もしかしたら思いっきりダンスっぽいかもしれないし、アートっぽいかもしれなくて、それはそれで今の自分の大前提だと捉えれば、そこから本当にリスタートを切ればいいのだと思う。

 

新しい季節でもあります、ぜひぜひイベントに足を運んでみてほしいと思います。

 

野本直輝

 

2019/4/8/西山友貴/blanClass放送室


2019/4/8/Yuki NISHIYAMA/blanClass broadcasting

4月13日(土)のSakSak#12、ゲストの西山友貴さんのblanClass放送室を公開しました。 僕が、西山さんと今回のイベントについてひとりで話しています。西山さんは僕の後ろで踊っていて、ちょっとずつ大きくなってきたりして、最後は西山さんに絡まれます。

 

SakSak#12 西山 友貴 Re:start|ダンス、セルフドキュメンタリー

blanClass ウェブページ

http://blanclass.com/japanese/schedule/20190413/

facebook イベントページ

https://www.facebook.com/events/844873139210095/

 

企画の野本くんから「なんでも好きなことやっちゃってください」とお誘いをうけました。ダンスと出会って26年。時が経つのは早いなーなんて考えていたら、幼い頃に自分が好きだったモノやコトについて色々思い出しました。

2019年4月13日、この日、この場所から始めてみることにしました。つらつらと描きながら。思いのまま。

 

出演:西山 友貴/企画:野本 直輝

日程:2019年4月13日(土)

開場:19:00 開演:19:30

入場料:1,000円+投げ銭

会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)

https://goo.gl/maps/Q7Aat7nBarE2

アクセス:京浜急行「井土ヶ谷」駅の改札出て正面の信号わたりすぐを左折、一つ目の交差点を右折、二つ目の角を左折、三井のリパーク後ろ、blanClass看板がある細い段々を上がって右の建物2階

 

西山 友貴 Yuki NISHIYAMA

ダンサー。筑波大学大学院修了。09 年、文化庁海外研修員として一年間 NY に留学。 平山素子、北村明子山田うん、Inbal Pinto & Avshalom Pollakなど国内外の振付家の作品に参加。近年では自身のユニット〈Atachitachi〉の活動をはじめ、様々なアーティストとのコラボを展開。ワクワクすること模索中。

https://yuki1110mdn4.wixsite.com/yuki-nishiyamahp

SakSak

SakSakでは、誰かが発する表現を手掛かりに、その先を一緒に考えながら、その思考を交換することができる場の可能性を模索します。そのために取り敢えず、粗くてもろい、隙間だらけの場を想像してみる。(野本直輝)

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