大崎 清夏+神里 雄大 [にほんごと英語の朗読会]

 今週の+nightのゲストは、詩人の大崎清夏と作家で演出家の神里雄大。ことばを手がかりに、ことばを扱って、それぞれに異なる活動をしているお2人がコラボレーションをする。大崎清夏+神里雄大とはなっているが、大崎さんは静かに闘志を燃やして、大崎清夏 VS 神里雄大の様相を呈しているようだ。
 神里雄大は岡崎藝術座を主宰する演劇人だから、当然ライブ・パフォーマンスをしてきた人だ。最近は劇場が活動の中心だそうだが、はじめた当初は飲み屋とか、自宅の部屋とか、街のなか移動しながらなどと、演劇を発表する場所としては特殊な場所を選んで発表をしていたと言う。
 大崎清夏は近年ユリイカなどの雑誌に投稿する傍ら、昨年は詩の朗読会「サイファー」などにも参加している(その様子は「現代詩手帖2月号」にエッセイを寄せている)から、やっぱりライブの経験がある。
 大崎さんは最初、お客さんとしてblanClassに来てくれた。その後昨年の「+ART ENGLISH TRAINING」に受講生として参加してくれた。今回のタイトルにもあるが、日本語と英語の翻訳、あるいは言語がそもそも持っている機能である翻訳という、ことばの問題を考察しながら表現をしているのだと言う。
 その「+AET」の講師を務めてくれたアズビー・ブラウンが、その著書「江戸に学ぶエコ生活術」(著:アズビー・ブラウン・訳:幾島幸子・阪急コミュニケーションズ・2011)のためにリサーチをしていたときに、「江戸時代までの日本人は黙読することを知らなかった」という文献を発見したと言っていた。裏取りはしていないので、たしかではないらしいのだが、「源氏物語」なども夜な夜なの社交の場で、女房たちが雅な人々へ読み聞かせをするために使われたと聞く。あながち嘘ではないような気がするのだ。
 先日「放送室」のためにお2人とおはなししたときに、「3.11」以降にテレビで頻繁に流されるACの広告のにお話をした。そのとき神里さんは、ACで語りかけてくる有名な人々の顔を見ていると、誰なのかがわからなくなると、憤りを語ってくれた。
 たしかに不特定多数のわたしたちに、有名人たちがなにを語りかけているのかも、さっぱりわからない。政治や行政のだらしない感じが露呈されるにつけ、「あいかわらず日本は護送船団だったんだなぁ」とか、「東電も日本もひとつだったんだなぁ」とかは実感するが、少なくともわたしたちはチームでもないしひとつになんかなってはいけない。第一、萎えてる人に「がんばれ」って言ってはけない。ACはたしかちょっと前に「がんばらない勇気」なってことも言っていたはずではないか。バカ。
 声から生まれた言語は、図像から生まれた言語や、音律の文化などと合体を果たして、高度に概念化してきたのだ。だから単にコミュニケーションにはじまってコミュニケーションに終わるという代物でもない。現実の世界では、挨拶したからといってポポポポ〜ンとお友達は生まれてきたりはしない。演劇や詩に限らず、形式やジャンルに偏って形骸化してしまった多くの骸に辟易として久しいが、マスメディアやコマーシャルを含むコミュニケーション言語もまた形だけの抜け殻と化しているのだ。
 今週の日曜日からお2人はblanClassで制作を進めている。今日も午後から神里雄大はblanClassの窓にはめ込む6枚のパネルに絵を描いていた。どうも話し合う度に内容も変化しているようだ。朗読も、もしかするとなくなるかもしれない。
 正直、どんなものになるかまだ想像がつかないが、制作途中の彼らを見ていると「ことば」の原初にあったであろう生き生きとした感触を感じる。神里さんがビックリするぐらい稚拙な絵を黙々と描いているところをたまに覗いては、そう思う。


こばやしはるお



今週の+night↓
http://blanclass.com/japanese/


大崎 清夏+神里 雄大 [にほんごと英語の朗読会]
ただ読むことは難しい。ただ読むことなんてできるのだろうか。
読むことは翻訳すること。読むことは、直訳の作業。
できるだけ真っ直ぐ読む。棒読みする。視界がひらけるように。


日程:2011年5月7日(土)
開場:18:00 開演:19:00
一般:1,500円/学生:1,000円


大崎 清夏 Sayaka OHSAKI
1982年生まれ・東京在住。2005年 早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。2008年より、ダンサーの福留麻里と朗読パフォーマンスの試みを断続的に行う。2010年9月、Bottle/Exercise/Cypher vol.3 桂冠詩人。2011年 ユリイカの新人(伊藤比呂美・選)。詩集に「地面」(私家版)がある。
大崎清夏 ブログ「日々穴熊」↓
http://d.hatena.ne.jp/chakibear/


神里 雄大 Yudai KAMISATO
1982年ペルー共和国リマ市生まれ。演出家・作家/岡崎藝術座主宰・鰰[hatahata] 第2主宰。2003年「岡崎藝術座」結成。2006年『しっぽをつかまれた欲望』(作:パブロ=ピカソ)で利賀演出家コンクール最優秀演出家賞受賞。2009年『ヘアカットさん』が第54回岸田國士戯曲賞最終候補作品ノミネート。
岡崎藝術座↓
http://okazaki.nobody.jp/