杉田 敦 [ナノ・ソートのナノ・トーク]

 今週の+nightは、杉田敦が登場!!
 なにやら怪しげな飲物を持参してトークイベントを行う。
 さて杉田敦とは何者だろう? 美術批評家として執筆活動をしているのは知っているし、2004年に私も講師をしている東京綜合写真線も学校の同僚で、共に現代美術を専門にしていることから、同校の谷口雅校長に紹介してもらってから、何度もお会いしているので、知らないというわけではない。
 はじめてお会いしたのが、杉田氏が夫妻で運営している多摩川にある「art &riverbank」というオルタナティブスペースだった。現在は女子美芸術学部の教授であり、大学院のGPというプロジェクトも運営していて、最近「Na+」というタブロイド判の美術批評誌を発行している。
 前回の越後妻有の「大地の芸術祭」では「杉田敦+ art &riverbank」としてエントリーし、湯之島(浦田地区)の民家で“Oral Critic Archive”を展開、毎週末に“dictionary”という、毎回異なるテーマ、ゲストを招いて、文字通りディスカッションをした。
 そのうえポルトガルの文化にも精通しているらしく、遠目で見ているだけではちょっと実態がつかめない人だと、思っていた。
 月曜日にやった「放送室」を見てください。きれいな色をした飲物を試飲しながらアートのカテゴリーをもやもやと話し合うという変なリサーチをした。遠回りに、自分の身体と語られる芸術の接点を探ろうという試みらしい。私たちは杉田さんの仕掛けたゲームのなかで悪ふざけをしただけかもしれない。でも、共有の言葉を使って議論するということは、そもそもそういうゲームなのかもしれないのだ。
 放送の後にした雑談で、杉田さんは面白いことを口にした。普段の活動や表現と教育を分けてしまうのはおかしい、という意味の発言だったのだが、発言者である個人の位置というものをアウトプットの形や意義みたいなものに摺り合わせていてもなにも生まれない、と理解した。それにはとても同感する。
 表現するものと批評するものが行儀良く役割分担していてもしょうがないのだ。どちらにしてもその活動が表現行為であり、「お勉強」の芸術批評ではなく、臨床の芸術になることを実践しなければならないのだろう。
 今回は波多野康介がセッティングした企画なのだが、私も多いに便乗して杉田敦の実態を確かめよう。杉田敦を美術批評家とあなどらずに1人の表現者、あるいはアーティストとして迎えよう。
 騙されたと思って、彼のゲームに参加してみてはどうだろう。


こばやしはるお




今週の+night↓
http://blanclass.com/japanese/


杉田 敦
[ナノ・ソートのナノ・トーク]


現代アートについて、不確かに考えていることを、無謀に語ってみる。関係性の美学、ポスト・プロダクト、エドゥアール・グリッサン、クレア・ビショップ、オクウィ・エンヴェゾー、政治的正当性、ポスト・エキジビション、ハンス=ウルリッヒ・オブリスト、アーカイヴ、マラソン、脱消費、……。ゲストもいるかもしれない。危ない液体を飲みながら……。


日程:2011年5月28日(土)
開場:18:00 開演:19:30
一般:1,200円/学生:1,000円


杉田 敦 Atsushi SUGITA
美術批評。オルタナティヴ・スペース art & river bankディレクター。女子美術大学芸術学部教授。最近の著書に、『ナノ・ソート』(彩流社)、『アートで生きる』(美術出版社)、『アート・プラットフォーム』。出版予定に『inter-views』(共に美学出版)がある。昨年キュレーションしたポルトガルの現代美術展『極小航海時代』(JAM)は、5月にソウルに巡回予定。文部科学省、大学院GP、女子美術大学プログラム代表者。
art & river bank http://www.art-and-river-bank.net/
女子美大学院GP http://www.joshibi.net/outreach/gsgp/