semi-documentary

今週の+nightはYoungest Artists Night vol.2 。ゲストに高士真一+渡辺貴大、馬君馳、渡邊トシフミの3組を迎えて、最若手の作家に発表と対話のチャンスをとはじめた企画の第2弾!!
 綜合のタイトルにした[semi-documentary]、セミドキュメンタリーとはそもそも文学からでてきた1ジャンル、いわゆる実録ものというやつだ。それが映画にも影響して、たとえば黒澤明の「一番美しく」(1944)とか深作欣二の「県警対組織暴力」(1975)などを思い出す。
 だからこの手法が重宝がられた最初のきっかけというのはフィクションに新たなリアリズムを与える意味があったと想像する。
 それが徐々にドキュメンタリーサイドに展開していったように思われるのだ。その権化のような人がクリス・マルケル(Chris Marker)。彼が製作した「ベトナムから遠く離れて」(Loin du Viêt Nam・1967)は何度観ても新鮮で刺激的な内容だ。
 最近、その「ベトナムから遠く離れて」にも参加しているアニエス・ヴァルダ(Agnès Varda)の映画「落穂拾い」(Les Glaneurs et la glaneuse・2000)、「アニエスの浜辺」(Les Plages d'Agnès・2008)をビデオとDVDで観たのだが、本当と嘘が入り交じり、主観と客観の区別のない編集に度肝を抜かれた。私小説とも自画像とも思える彼女の仕事は、しかしどうやっても虚構に回収されてしまう薄い皮膜の体験を「本当の側」にグイグイ引っ張り寄せているように思われたからだ。
 ジャン・ポール・ジョーの「未来の食卓」(2008)は完全にドキュメンタリー映画なのだが、フランス映画が培ったセミドキュメンタリーの文法が随所に活かされていて、人々が俳優のように見えて、まるでフィクションでも観ているような滑らかな感触があり、そのせいでのめり込んでしまった。
 当然のことながらアートサイドにも、こうした作品はある。ビデオアートにおけるナラティブな表現のなかに多くみられるのだが、そのなかでも天才は、ジョージ・クチャール(George Kuchar)。80年代の半ばからポータブルビデオカメラで制作された「Weather Diary #5」(1987)などの一連の作品がすごい。
 それらはまるで無計画に撮影され、なんの気なしにつぶやいている本人のナレーション、フィーチャーされた友人やアーティストなどとの気のおけない会話などによって構成されているのだが、一発撮りのビデオ日記のたぐいではなく、実は執拗にリハーサルを繰り返されてつくられたセミドキュメンタリーなのだ。
 ..と、どちらかというと映像表現が向いている、この手法だが、最近blanClassで発表した最若手の表現のなかに、このセミドキュメンタリーなアプローチを感じた。
 それもグローバルに開かれたときに、ずいぶんとこなれてきたコンセプチュアルな文法からの展開や脱却にも見えなくもない..そう思って、今回の企画になった次第。コンセプチュアルなアートの文法から一歩踏み込んで、本当と嘘の間で作品を展開する本気のアートにご期待あれ!!



こばやしはるお



今週の+night↓
http://blanclass.com/japanese/


Youngest Artists Night vol.2 [semi-documentary]


高士 真一+渡辺 貴大/馬 君馳/渡邊 トシフミ
対象化しようとすればするほど、スルリと手から滑り落ちてしまうような、現実や事件や時間といったものをいかに捉えるか? こぼれた水をコップに戻す。記述された物語の裏側に忘れられたバグを拾う。そんな3組のアーティストが集合。


日程:2011年6月18日(土)
開場:18:00 開演:19:30
一般:1,200円/学生:1,000円


高士 真一+渡辺 貴大 [mesoRelation] スピーカー、モニターなどを配置した空間で、音と光が循環する輪の、媒体の一要素になろうという試みを行います。


Shinichi TAKASHI 1/2 2010.8.21 blanClass+night

Shinichi TAKASHI 2/2 2010.8.21 blanClass+night


高士 真一 Shin-ichi TAKASHI 1985年埼玉県生まれ。2010年武蔵野美術大学院卒業。2010年8月21日「Relief in me,Relief in you」に吉川陽一郎、伊禮卓司と共に参加(blanClass+night・神奈川)、2010年9月18日、吉川陽一郎個展「街で迷うために」展示内パフォーマンス「Relief in you」に参加。http://natakashi.xxxxxxxx.jp
渡辺 貴大 Takahiro WATANABE 1986年生まれ。現在、音楽、映像を中心に活動中。


馬 君馳 Chun Chih MA [in a / the room #2] 一度も母国で制作したことのない自分に母国での滞在制作という課題を与え、そこで生まれたものをblanClassで発表する。


Ma Chun Chih 2010.7.24 offlimits blanClass+night
blanClass放送室 05/30/11 ゲスト:馬 君馳↓
http://www.ustream.tv/recorded/15058812


1984年台湾生まれ。2006年元智大学応用外国語学科卒業。2008年来日。2011年東京綜合写真専門学校卒業。発表は「渡辺兼人クラス展」gallery mestalla 、「東京綜合写真専門学校卒業展:ヒッチハイク」(横浜市民ギャラリーあざみ野)、「東京綜合写真専門学校学生有志卒業展:卒業制作展2011」(BankART NYK)など。+nightには2010年7月24日ステューデントナイト vol.2 [off limits]に参加している。


渡邊 トシフミ Toshihumi WATANABE[WATANABE night BATTLE ROYALE] 死と生と美術について考える夜。渡邊トシフミが言いたいこと、やりたいこと。



Toshifumi WATANABE1/2 2010.12.11

Toshifumi WATANABE2/2 2010.12.11
blanClass放送室 2011/6/13 ゲスト:渡邊トシフミ↓
http://www.ustream.tv/recorded/15358170

1985年-新潟県新潟市生まれ。現代美術家。これまでに個展・グループ展多数。主な個展に「WAITING ROOM」(2008・ギャラリー山口・東京)、「鉄の彫刻展」(2009・燕市産業史料館・新潟)、「ON TIME」(2010・UP LINK・東京)、主なグループ展・参加展に「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2006」(2006・「脱皮する家」制作・新潟)、「Bank ART Artist in Residence 2010」(2010・Bank ART Studio NYK・神奈川)。+nightには2010年12月11日[WATANABE night]をしている。
http://watakichi.com/