神里雄大 [アーリーサマースクール発表会]

  今週の Live ARTは、神里雄大2度目の登場!! 今回は急な坂スタジオでおこなわれている、アーリーサマースクール、3週間の成果を発表する。
  アーリーサマースクールでは、ひとつの場面を一人一人の俳優が責任を持って演ずるという実践型ワークショップになっている。発表会では、そうやってそれぞれにトレーニングしたダイアローグをつなげていくものになるらしい。テキストには、パブロ・ピカソの戯曲と、皆が集めたニュース素材を神里雄大が脚色したものが混在している。察するに、それぞれの俳優に合わせた、それぞれ違う種類の脚色で、ピカソの世界と、最近耳にしたり、目にしたことのある言葉が、混乱しながら同時に接着剤のようにバラバラなものをつなげてしまうのだろうと思う。
  今年の4月にSTスポットでみた岡崎藝術座の「アンティゴネ/寝盗られ宗介」はすごかった。会場に入ったらいきなり大きな絵がかかっており、神里くん絵が上手くなったなぁなどと思っていると、不思議な振付けを終始している役者たちの「アンティゴネ」がはじまって、中盤あたりだったか、前ぶれもなく「寝取られ宗介」になってしまう。その瞬間に、笑ってしまうのだが、拮抗するそのテーマに、いまの日本の体制というものの、なんとも情けない情景と重なりあってしまい、なぜだかジワリと涙が出てしまうほどだった。何度か「アンティゴネ」と「寝盗られ宗介」が行ったり来たりしながら、あれは役もあちこち入れ替わったと思うが、主体も客体も、脚本家も演出家も、みている自分も、どれがどれやらわからない、本当に情けないジレンマの針のムシロに座らされた感...。
  それにつけても、後ろにかかった絵は、舞台装置にとけ込んでいる様子もなく、振り付けられたダンスも、台詞と呼応するそれでもない。それぞれがでたらめに貼付けられていて、そのせいか、逆に台詞に気が散る要素がなくて、言葉がスルスルと頭にダイレクトに入ってくる。そのことがとにかく面白い経験となった。
  今週の月曜にアーリーサマースクールの様子をみせてもらった。制作途中の言葉は、俳優の身体に縛られていて、その身体と言葉が遊離した瞬間、私の頭のなかで、フワッと解放されたりする。
  そうしてみると、絵と台詞と振付け、などという単純な図式だけではない、俳優がやっている、もうちょっと複雑な仕業のようなものがあるのだということに気がついた。
  ということで、そのアーリーサマースクールでは、神里氏は「態度」とか「姿勢」という言葉をたくさん使って、不思議なコミュニケーションを図っていた。
  演劇は演出家の作品であると同時に俳優の作品でもある。舞台に上がる全員が「主役」に成りうる「存在」であることを目指し、今日からblanClassに場所を移して練習真っ最中!!




こばやしはるお


ちなみに、一部その模様を放送室で流しました。とても面白いので、ぜひご覧ください↓

2012.06.03 ゲスト:高橋永二郎 神里雄大



2012.7.2 神里雄大 アーリーサマースクール 1 at 急な坂スタジオ



2012.7.2 神里雄大 アーリーサマースクール 2 at 急な坂スタジオ



2012.7.2 神里雄大 アーリーサマースクール 3 at 急な坂スタジオ
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今週の Live ART↓
http://blanclass.com/japanese/


|演劇
神里雄大 [アーリーサマースクール発表会]


日程:7月7日(土)
開場:18:00 開演:18:30
一般:1,000円


俳優が最も注目を浴びる「長ぜりふ」をしっかりとしゃべり、空間を成立させること
のできる実力を身につけてもらうこと、ひいては主役のできる俳優を目指してもらう
ことがこのスクールの目的です。ひとりひとりと徹底的に向き合い、その発表をここ
でします。(協力:急な坂スタジオ)

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神里 雄大 Yudai KAMISATO

  • 1982年ペルー共和国リマ市生まれ、川崎育ち。演出家・作家/岡崎藝術座主宰。『しっ

ぽをつかまれた欲望』(作:パブロ=ピカソ)で利賀演出家コンクール2006最優秀演出家
賞受賞。『ヘアカットさん』で第54回岸田國士戯曲賞最終候補作品ノミネート。
http://okazaki.nobody.jp/