吉本伊織 [アウフヘーベンー絶句から絶景]

  今週の Live ARTは、吉本伊織2度目の登場!! 「孤独の大河」という、独特の巷談口調のパフォーマンスや、独り語りの演劇風パフォーマンスを展開してきた吉本伊織だが、よく考えてみると普段からして演じているようなしゃべり口。
  聞くところによると、自作を語る態でスライドトークした折、まじめに自分の作品の話しをしているのに、観衆の1人に、描かれた絵も含め、みな嘘だと、つくられた架空の画家の話しを、さも自分のことのように演じているパフォーマンスだと言われたそうだ。
  そう思われるのも無理はないくらい、吉本の普段の話し方は巷談口調だし、どこからどこまでが本心で、どこからどこまでがつくられているものか見分けがつかない。きっと本人も無自覚なほど板についている。面白いと言えば面白いのだが、対面している方からすれば「心」が見当たらないから、イライラもする。
  彼が描く絵が「架空の作家の絵」という考え方だって、聞いてみて「なるほどそうだ」と思えてくるし、実際、吉本はそういうスタンスで絵を描いているのではないかと深く思う。そう本人に聞いてみると「そうかもしれません」という答えが返ってきた。
  ならばいっそのこと、本当にそのつもりでやったらいいと思う。そうすれば嘘も本当もなくなって、とても誠実な態度に見えるし、いろいろと考えることもできる。などと話していたら、今回の講演会パフォーマンスになった。「真偽」や「演技」も抱えたまま、しかし誠実に諏訪直樹の表現を考察する。諏訪直樹はすでに亡くなってしまった人だが、本当に存在していた画家。そのうえ私は若い頃、よく横浜駅の喫茶店でお茶した仲だった人。その作品も彼が若かった頃からよく知っている。
  だから諏訪の絵を架空のものに仕立てて話すというのではなく、諏訪が生前考えていたことを空想しながら、さらに吉本が絵を描くその行為によって、ねじれた架空の作家像を生み出しているようなのだ。
  私も諏訪直樹を、その作品を想いながら、今度の吉本の作品につき合ってみようと思う。本当の諏訪の絵と吉本がフィクションとしてつくり出す諏訪風の絵を丁寧に分けて、どちらに対しても大袈裟にならないように気をつけてみようと思う。


こばやしはるお



放送室でプランをしゃべってもらいました↓

2012.7.30 吉本伊織



軽食(無料)は「茶粥、インゲンのナムル」お楽しみに!!
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今週の Live ART↓
http://blanclass.com/japanese/


|講演会パフォーマンス
吉本伊織 [アウフヘーベンー絶句から絶景]


日程:8月4日(土)
開場:18:00 開演:19:30
入場料:1,000円/学生:800円


吉本隆明著『言語にとって美とはなにか』は画家・諏訪直樹にとってナニか。「既成の言語に対する、憤りと畏怖と沈黙と虚無と挑発。それからどう手をうごかすの? それから先は?」ということを考えている作品です。作品自体は諏訪さんが生前書いたテキストの中から『言語にとって美とはなにか』の影響を汲み上げ、どのような美術作品ができたかを考察する講演会とそのためのステージセットで構成されます。


吉本 伊織 Iori YOSHIMOTO
1978年富山県生まれ。2001年BゼミLearning system 理論専修生。2002年「海の向こうより山の向こう展」(旧西塩田小学校・長野県)企画運営。2010年「神奈川県美術展」神奈川県立近代美術館賞受賞。個展・パフォーマンスに、「すき景」(ココラボラトリー・秋田・2009)、「キレギレ」(blanClass・神奈川県・2010)、「佳景」(ココラボラトリー・秋田・2011)、「鉛と墨」(nitehi works・神奈川県・2012)など。ほかに、野外展「Art Plant」(狭山丘陵・東京・2009,2011)BankARTスタジオインアーティスト2010参加、参加、「めまい/たちくらみ」(森下スタジオ・東京・2011)舞台美術などがある。