からだをつかって考える|大久保あり[その壁を登るには、]の場合

  今週の Live ARTは 大久保ありが初登場!! 今回は参加者が希望、予約すれば実際に、blanClassの裏にあるコンクリートの壁をクライミングすることができる。もはやアートとかドキュメンタリーとかを超えてしまって、そのものの体験をする。
  最近Live ArtのチラシやWEB用に、ゲストにカテゴリーをお願いしているのだが、大久保さんから「クライミング」と、そのままのカテゴリーが届いて、「おっ」と声を出してしまった。とってもダイレクト。アートっぽいものに変換するような迷いがないのが良い。
  これまでの彼女のアートワーク「山の夢」で、さまざまな形式の言語を駆使して、見るものの頭のなかに想像を促してきたリアルな山の情景。リアルと言ってもそれはきっと頭のなかで伸び縮みする、夢のような情景としてあるのだろう。私が手に取って読むことができたのは小さな冊子、2011年の個展と同名の「山の夢」(2005年初編の際には「I dreamt」)という短編だったから、言葉で拾いあげた夢の断片で編集された山の情景だった。個展では、もっと多様なメディアで山登りを体験できたというから、開かれた空間で自由に見る人が編集をすることができたのだろう。
  テレビドラマや映画のなかに出てくる夢のシーンには、その夢を一人称で見ているはずの本人が、なぜか三人称で登場してしまっていることが多い。夢のなかにいる自分を客観視することで、夢と自分を切り離して語る語り口は、文章などにもみられる技だ。
  夢を題材にしたものではないが、中平康の映画「紅の翼」(1958・日活)は、冒頭の殺人シーンを一人称のロングショットで表現したり、石原裕次郎が扮するパイロットがセスナを離陸する際の、細かなメカニック動作を、端折らずにリアルタイムに編集したり、当時の映画としては、すごく変なことをしている。特にその離陸シーンは、なぜだか忘れがたくて、物語とは無関係に頭に刻まれたシーンだ。冒頭の一人称のシーンも含めて、見ている夢のように脈絡がないように感ぜられるし、物語に回収されない日々の経験にも似ている。
  そもそも人はどんなときでも、知覚するものを頭のなかでテキトーに編集してしまうもの。そういう手強い人の脳を相手にさまざまな業種の達人たちが、情報やら、シグナルやら、システムやら、編集技術を駆使して、人の思考をコントロールしてきた。
  だからこそ、なにかしらのメディアを通して、一生懸命に学習を積んでも、いつも歯痒い感触から逃れられない。あるいは頭ではつなぎきれない、なんかもっとハイパーなもの(マネーみたいな)によって、連結されてしまっているかのような世界に疑心暗鬼に怯えている。
  繰り返すが、今回の大久保あり [その壁を登るには、]では、参加者が希望、予約すれば実際にクライミング体験ができる。脳は手やからだをつかうことで、うんとリアルに考えることができる。体験できて、考えることができるのは、意味とかイメージとひと味違うもの。今週の月曜日に、大久保さんがリハーサルをした後、実は私もクライミングに挑戦した。たいして高いと思っていなかった頂上で、久しぶりに全身で怯えてしまった。(でも、大半の人ができる範囲のクライミングだと思います)
  からだをつかって本当のサイズを実感しながら考えることで、あなたの脳がなにを見出し、読み取るか?
  まだ予約を受付けていますので、ぜひ挑戦してください!!(体験予約の詳細は下記に記載、観覧のみの場合は予約不要)。


こばやしはるお


放送室は大久保ありの「How to Climbing」!!↓

2012.08.27 大久保あり http://www.ustream.tv/recorded/24995783より


軽食(無料)は「冬瓜と鶏肉のスープ」お楽しみに!!
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今週の Live ART↓
http://blanclass.com/japanese/


|クライミング
大久保あり [その壁を登るには、]


日程:9月1日(土)
ライミング体験希望者は、18:00集合、19:30までクライミング
(19:30-20:00片付け)
20:00〜クライミング体験のビデオスクリーニング+歓談。

ライミング体験:1,400円/学生:1,200円
観覧:1,000円/学生:800円


ブランクラスの横の壁を登ります。クライミング=サヴァイヴァルの疑似体験を通して
「目指すこと」・「克服すること」・「生き残ること」について考えてみる。

※ クライミング体験希望者は予約必須。定員10名。お問い合せ・ご予約
はinfo@blanclassにて受付けます。
※※ メールにて予約申し込み後、大久保より〈クライミングの注意事項〉に関するメー
ルをご返送いたします。〈注意事項〉をご理解頂き、もう一度ご返信頂いた時点で受
付完了となります。

※※※ 安全帯装着のため、サイズの制限があります。メンズのズボンのサイズに換算し
てXS〜Lまで。
体験なし、観覧のみの場合は、予約不要。

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大久保 あり Ari OoKUBO

  • 1998年に武蔵野美大油科卒、1999-2000年 英ロンドンのgoldsmithsを経、2001年Chelsea college of Art & Design修士修了。個展は2003年 武蔵野美大G-fal、2011年LOOP HOLE 等。今年は森田浩彰と共作で参加した'Ryugu is Over'、竜宮美術旅館。