からだをつかって考える|田中功起 [不安定なタスク#1,懐中電灯を振りながら夜の街を歩く]の場合

  今週の Live ARTは、田中功起!! 初登場にしてシリーズの参戦だ。シリーズ名は「不安定なタスク」。現在、#1(9/29)、#2(11/9)、#3(1/25)の日程がFIXしている。参加型で起こる行く先不明の事態は記録されて、その一部、またはすべてがヴェネツィアビエンナーレ日本館でも展示される予定。(来年6月開催まで、さらに数回「不安定なタスク」シリーズを計画中)プロジェクトに起こるアクト、リアクト、身をもって体験できる希有なチャンスだ。
  先日(9/3)田中功起さんと打合わせをした。blanClass周辺の地図を見ながら、懐中電灯を振りながら歩き回るコースを探した後、夕方に、まだ日のあるうちだったので、懐中電灯は持参しなかったが、小一時間かけて周辺の街を歩いた。井土ケ谷駅周辺というのは、その名の通り海抜6mと、ずばり谷の街、ただしすぐに坂にぶちあたり、丘だらけの横浜の典型的な地形。昔はどの家にも井戸があり、水がきれいだったためか、染色屋さん、捺染印刷工場、木工所など、清水や大岡川の水を利用した小規模工場の街だった。blanClassのすぐ裏の丘をあがると、清水ヶ丘という地名。戦前には井戸ばかりでなく、小川や小さな洞穴を冷蔵庫代わりに生活に利用していたと聞く。今ではその片鱗は、そうとうに目を凝らさないと見当たらないのだが、地形そのものはほとんど変化がないので、散歩すると、ちょっとだけ面白い光景もある。
  清水ヶ丘は、国大の跡地に市営のスポーツ公園がつくられていて、朝や夕方は近隣の犬たちの遊び場になっている。この丘の周囲にある谷合の住人にとっては、災害時の避難所にも指定されていて、地震が起これば、きっとここの体育館で寝ることになるのだろう。blanClassのLive Artをやっている最中とかに大地震が起きたら、お客さんたちを誘導して、ビックリするぐらいに急な坂を駆け上がらなければならないのだろう、などと想像した。
  炊き出しなんかも率先してやらなきゃいけないのかな? 毎週土曜日に炊き出しみたいなことをやっているから…。そのための準備をしているわけではないけど。
  まずは土曜日に田中功起と「懐中電灯を振りながら夜の街を歩く」をする。はげしいなにかが起こるわけではないだろうが、微細なことがたくさん起こるのだろう。こういうときにARTが元々使われていた通りの「術」として、頭やからだや心にダイレクトに効いてくる良いと思う。以前「臨床芸術」がありうるか? という文章を書いたことがあるが、ジャンルとして浮ついた言葉として捉えられてしまった感のある「ART」を「術」ぐらいの本来の意味に戻して実感するべきときに、今はある。

  全然関係ないが、いつも火曜日か水曜日に書いているコラムを日曜日に書いている理由は、明日から関西に旅行に行くからだ。目的は国立国際美術館でやっている「〈私〉の解体へ|柏原えつとむの場合」を観にいくことと、久しぶりにその柏原えつとむ氏とビールを飲むこと。展覧会では氏の「方法のモンロー」が久々に見られる。展覧会を観てから柏原さんと飲もうと思っていたが、月曜日休館日のため、飲みが先で展覧会が後という変な予定になってしまった。
 柏原えつとむとは、日本のコンセプチュアルアートの先駆者の一人。初期の逆遠近絵画にはじまって、「Mr.Xとは何か?」、「方法のモンロー」など、一筋縄ではいかない独特な考え方で概念や観念と真っ向勝負してきた作家。小品も多く、本を素材にした「THIS IS A BOOK」や「A HOLE」などはユーモアも孕みつつ手に取れるサイズのトポロジーをつくり出している。
  今年、特にblanClassで力を入れて呼んでいる、形態をもたないアーティストたちの、その思考の原点であるような気がして、柏原さんもぜひゲストにお呼びしたいと願っているのだが、本人はその気がないらしく、とりあえずは会いましょうということになったのだ。とてもお酒の好きな人なので、楽しい会になるの必至だが、面白い話しができたら、それはまた後日報告します。



1973.7.17(火)Bゼミ斎藤義重ゼミ「柏原えつとむ「方法のモンロー展」(楡の木画廊)にて


こばやしはるお



9/24(月)放送室は田中功起さんとリハ&トークを予定(スペシャルゲストもあり?)↓
http://www.ustream.tv/channel/blanclass%E6%94%BE%E9%80%81%E5%AE%A4


からだをつかって考える(完全版)ネットTAMリレーコラム↓ http://www.nettam.jp/topics/column/93/


軽食(無料)は「豆おこわ」お楽しみに!!
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今週の Live ART↓
http://blanclass.com/japanese/


コレクティブ・アクト、パーティシペイション
田中功起 [不安定なタスク#1|懐中電灯を振りながら夜の街を歩く]


日程:9月29日(土)
開場:18:00 開演:19:30
一般:1,200円/学生:1,000円


特殊な事態が生じ、一時的にひとが集まり、その状況に対処する。これはアートの文脈においても、普段の生活においても起きうることです。きっとblanClassで毎週末に起きているイベントの数々もそのようなことのひとつかもしません。

今回、blanClassでのプロジェクトではこの特殊な状況における対処、反応、経験をすこしゆるやかな枠組み - いくつかの未成熟な、おぼつかないアイデア - を元に、シリーズで参加者とともに行い、考えてみたいと思っています。

例えば「自販機の中身を購入し道行くひとたちに配る」「懐中電灯を振りながら夜の街を歩く」「本を焼いてフライパンを温め、食べ物を作る」「ろうそくが一本なくなるまで会話する/一緒に過ごす」「都心から郊外まで歩く」など。

またこのプロジェクトの一部、またはすべてはヴェネツィアビエンナーレ日本館(2013年)でも展示される予定です。(田中功起

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田中 功起 Koki TANAKA