2.15[金]-17[日]|小林 あんぬ 企画 [ラ・フォトグラフィア・デ・アンヘリート(天使の写真)]展


2013.2.11 オーディエンス筋トレテーブル #05|[あの日のBゼミとblanClassの今 〜現代美術の私塾から実験の場へ]記念撮影


古い写真を見るとついつい昔だなーと単純に思ってしまう。
例えば服装、髪型、持ち物、車、看板、建築物などなどその時代にあったと何かで見聞きした情報と照らし合わせてだいたいこの頃かな?と思ったり、あるいは写真用紙そのものが劣化して、色が抜けていたり、一部が破れていたり、極端にいうと白黒やセピアだというだけでそう思うこともある!?そして、その時代に勘違いや思い込み、ステレオタイプを駆使しながら「このころは大変だったんだろーなー」「貧しいなー」「暗いなー」「ださいなー」とか想像する。


でも実際はどうだったんだろう。


先日blanClassの前身はBゼミ、そしてそれよりももっと前のこの場所(井土ヶ谷周辺)の写真を見る機会があった。この場所に小林晴夫の曾祖父が移り住んだのが約80年前と聞いたので、正確にはわからないがおそらくそれくらい前の写真。


着物を着た男性が窓辺に腰掛け、左手で手すりをつかみ窓の外を眺めている。窓は大きく開いていて、外には電柱が数本、電車の線路がある土手、さらにその奥に低いか高いかよくわからない丘がみえる。今のblanClassの2Fの部屋で撮影されたものらしい。住宅は全くなく、今の窓からみた景色とはずいぶん違う。


昔はこんなんだったんだぁーと思う一方で、彼らがなにを考えていたのか、また同じ場所にいる僕が毎週ここで写真を撮っていること考える。まず、古い写真で人々の表情が暗いのはただ写真に慣れていなくてかしこまり表情が固くなっているだけなのだろう。そもそも笑顔で写真を撮るようになったのはいつからだ?ハイ、チーズ?
さっきの無知甚だしいステレオタイプの貧しさ、暗さ、大変そう、みたいなものは、そういう時期もあったかもしれないけれど、本当にそんな毎日がつづいていたのだろうか。窓の外をぼんやり眺めてぼーっと季節の移り変わりを楽しんだり、猫をかわいがったり、一喜一憂したり、僕の日々の中にあるような時間はきっとあった。あたりまえだ。しかし、「昔(100年前〜30年前の事、異なる世代)」について、「今(現代、自分の世代)」とはなにかが決定的に違うという誤解(それもとても曖昧な)を無自覚に持っているように思う。果たして「彼ら」と「僕ら」、「昔」と「今」、「古いもの」と「新しいもの」、などと簡単に切り分けて考える事などできるのだろうか。地続きにつながっている時間の中で起こってきた様々な事例を参照しながら、そこで示された課題どうにかして考えて、交換して、次につないでいくことは大事とかではなくてあたりまえにやればいいことなのだろう。


僕が撮る写真については「歴史」には残らないかもしれない無数の例外を毎週収集して、100年後200年後の人々にその出来事があったことを届ける。ここで考え続けられていたことは未来の何かのヒントになり得ることを期待している。blanClassアーカイブス。


小林あんぬさんの展覧会のこととは直接関係ないような文章になったが、彼女のメキシコの死児写真の研究のモティベーションがどのようなところにあるのか、実際にオリジナルプリントを見える貴重な機会です!展示とトークあわせてぜひご覧ください。



はたのこうすけ

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|小林あんぬ企画[ラ・フォトグラフィア・デ・アンヘリート|天使の写真]展


写真発明直後から、ヨーロッパ、アメリカ、ラテンアメリカなどで撮影された死者の写真。メキシコでは特に、子どもの死者の写真が撮られていました。19世紀末ー20世紀初頭に撮影された、「小さな天使(アンヘリート)」とも呼ばれる死児の写真を展示します。写真についてのトークも行います。


展覧会日程:2月15日(金)-17日(日)
時間:12:00-19:00
入場無料

関連トーク:小林あんぬ× 新井卓
日程:2月16日(土)19:30〜
一般:1,000円/学生:800円

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小林 あんぬ Annu KOBAYASHI(写真文化論・メディア社会学

  • 1980年生まれ。早稲田大学文学研究科社会学専攻博士課程修了。2006年-2007年日墨交流計画にて渡墨。2004年より、メキシコの死者の記念写真の一形態である「死児写真」をテーマに研究を行っている。現在、東京総合写真専門学校講師。
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新井 卓 Takashi ARAI(写真家)

  • 1978年神奈川県生まれ。写真黎明期の技法・ダゲレオタイプ銀板写真)を独自に習得し制作活動を展開。内外の美術館、ギャラリー等で作品を発表しつづけている。