伊藤丈紘 映画 [MORE]

 今週の+nightは、昨年の10月に一部blanClassで撮影をした、伊藤丈紘監督作品「MORE」の上映会。映画「MORE」は、昨今アートの文脈で多くみられる映像作品ではなく、blanClass初、ストレートな映画の上映!!
 この映画の感想は一度このコラムに書いているので、ぜひそちらも読んでいただきたいのだが、臆することなく、映画がそもそも持っているポテンシャルを充分に発揮している作品だ。臆することなくというのは、観客にこびる感じもなく、形式主義的な問題を制限にすり替えてしまってもいないという意味だ。無駄な部分もないし、かといって退屈さも感じさせないリズムもある。生気を宿した人間が映し出されていて、人生の断面のようにもみえる。まさに映画らしい映画。
 私は幼いころから、映画を鑑賞するのが、勉強でも仕事でもない唯一の趣味。どんなジャンルの映画でも平気で観てきた。生来無精なせいと、質より数を観たいせいもあって、ビデオテープやDVDでもジャンジャン映画を観てきたが、それでも劇場で映画を観た記憶は特別な記憶になっている。
 ウッディー・アレンの映画に、よく主人公に扮するウッディー・アレンがマンハッタンの名画座に入っていくというシーンがある。劇場でその映画を観ながら、入れ子状に名画の断片を主人公の肩越しに観る。観客の頭のなかで、映画と映画をつなぎながら、ついでに現実の劇場と映像の劇場をつなぐ。かならずしも本当と虚構の図式ではなく、現実に追体験が可能な本当と半本当の経験がつながれる。日記のように綴られる日常の中で映画館をはしごするように街や路地をつないでいく様子。映画を観終わった後に外に出たとき、映画の中と映画の外の境界線に自分がいることに気づく。それが劇場の映画体験のすべてに違いない。
 今週の上映会では「MORE」のなかにblanClassが映っている。よく知れた横浜の風景も映っている。映画の中と外、その境界線で映画を観る絶好の機会になること間違いなし。それ以上に、たまには週末の夜にぶらりと映画鑑賞はいかが? 軽食はもちろん「ポップコーン」をご用意します。


こばやしはるお


伊藤丈紘『MORE』 予告編


鑑賞直後のコラム2011-05-29 映画「MORE」のこと↓
http://d.hatena.ne.jp/blanClass/20110529/1306671584


今週の+night↓
http://blanclass.com/japanese/


伊藤丈紘
映画 [MORE](113min/16:9/ステレオ/カラー)


blanclassも撮影場所となった伊藤丈紘監督による東京藝大大学院修了作品映画『MORE』を上映します。20代終わりの3人の女性たちを主人公に、都市の片隅に暮らす男女が織りなす人間模様を描いた作品。わたしたちが都市において物語を生きる可能性/不可能性について、映画をとおして考えてみたいと思います。


日程:11月19日(土)
開場:19:00 開演:19:30
入場料:1,000円 学生:800円


伊藤 丈紘 Takehiro ITO
映画監督。1984宮城県仙台市出身。2009年、横浜国立大学大学院環境情報学府修了。同年、東京藝術大大学院映像研究科映画専攻に入学。その後2011年に修了。在学中より映画批評誌『nobody』にて映画レビューなどを寄稿。『MORE』(11)は大学院修了作品である。その他の主な監督作品に、『how insensitive』(09)、『ZERO NOIR』(10)などがある。
東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻第五期生修了作品展公式HP http://www.fnm.geidai.ac.jp/film5/