blanClass + portfolio 2017

毎年参加してきたファイル展、art & river bankの「depositors meeting」が、今年はなかったから、どうしようかと思ったのだが、毎年やってきたことなので、今年もポートフォリオを引き続きつくろうと思う。そのポートフォリオにやはり毎年寄せていた文章のつもりで、今年もこの1年を振り返ってみようと思う。


今年の新年パーティーの企画を吉田和貴にお願いしたところ、cat's heaven…! (猫天国?)というプロジェクトの展開として新年から「ヤミ市」を開催した。猫天国というのは、犬死せしものについて考える姿勢に対して、例えば戦後を強かに生きぬいた図太さの象徴のようなネーミングだそうで、blanClassの勝手にやる精神にも通じるものがある。テキトーにあるものを売ったり買ったりしながらワイワイ楽しく2017年がスタートした。


昨年に引き続き「岸井戯曲を上演する。」の#5から#11が上演され、榎本浩子/大川原脩平/萩原雄太/鷲尾蓉子/二十二会(渡辺美帆子/遠藤麻衣)/及川菜摘/武田 力/和田唯奈/河口 遥/小宮麻吏奈/田上 碧/根本卓也/森 麻奈美/眞島竜男/二十二会/西尾佳織/佐藤 悠/山田宏平/大石将弘/寒川晶子/岸本昌也/田口アヤコ/荻原永璃/小島夏葵/鈴木千尋/住吉山実里/辻村優子/山内健司…と、たくさんのアーティストが参加、岸井戯曲の演出と上演に挑戦した。また、全シリーズを通して描き続けた今井新作の漫画は単行本になって、blanClassの受付でも売っている。シリーズが終わった後に、総集編として、総合司会を務めた佐藤朋子のディレクションで、上演ではなく展覧会を開催した。


もう1つ昨年から継続したのは、野本直輝企画の「シリーズ 〇〇のかたちを探す」。今年のゲストとお題は、藤井龍が「あきらめ」、青柳菜摘が「物語」、加藤果琳が「隙間」、中村大地が「忘れること」だった。ちなみにこのシリーズは来年3月で完結する予定。


月イチセッションは、2012年に拡張計画として、月1企画を始めた当初から続いてきた、杉田敦ナノスクールと、CAMPの月1イベントだったが、杉田敦は4月からリスボンなので、3月のナノスクール「出国手続き」というイベントで、一旦休講中。CAMP月イチシリーズも1月を最後に休講中。代わりというわけでもないが、2月からcomos-tv(藤井光、粟田大輔、水田紗弥子、井上文雄、青山真也、原田晋ほか)の公開配信イベント「インタビューズ」が始まり、蔵屋美香、田坂博子、山城知佳子、遠藤水城、gnck、長谷川新、成相肇などのゲストを招いた。CAMPは月イチはお休み中だが、土曜日のLive Art枠での隔月シリーズは続行中で、4月に行った「春の終わりの上映会|川上幸之介×田中良佑」は盛況であった。


週イチセッションは、週1回のペースで全10回〜12回、3ヶ月完結にして、参加者たちによる発表を前提にしたセッションだが、今年は前後(神村恵、高嶋晋一)[固有時との会議]と沖 啓介[ARTCOG (Artistic Cognification)プロジェクト|空想科学Science Fictionと科学現実Science Factで越境する未来]の2つのセッションを行い、前後のセッションの発表は3月に行った。ARTCOGの発表は、来年1月に行う予定。


ほかに不定期に特別セッションを開催したのは今年の特徴の1つかもしれない、開催したのは、「ポピュリズムの時代と美学|アメリカという傷口からの考察」(笠原恵実子+中村寛+小林晴夫)や「思考の交点としてのdocumenta」(井上文雄/大舘奈津子/笠原恵実子/進行:良知暁)など、7月からは不定期ながらもシリーズ化している、藤原ちから(BricolaQ)港の探偵団とASSEMBLIES(後藤桜子/吉田和貴/村上滋郎 ほか)が始まった。


7月からは、新たな試みとしてblanClassで2つのクラブ活動を始めた。1つは「農園クラブ」。これは隔月CAMPの「blanClass農園化計画」というイベントで生まれた。以降、月に1回のペースで集まり、これまでにサカタのタネで苗や種を買って野菜を育てたり、クラフトビール、味噌、豆腐づくりなどに挑戦しては収穫祭をしている。もう1つは「TEC系工作クラブ」。これは高橋永二郎を中心に、なんでもDIY、DIWOをして自分たちで勉強しながら工作やプログラミングを学んでいこうというクラブ。どちらのクラブも始まったばかりでヨチヨチ歩きな感じだが、じっくりと継続していきたい試みだ。


さてさて、今年一番の出来事といえば、やはり「引込線2017|美術家と批評家による 第6回|自主企画展」(8月26日- 9月24日)に「blanClass@引込線2017」として出張したこと。これまでにもblanClassは、2011年にBankArt企画の「新港村」や、2013年に森美術館クロッシングへの出張をしたことがあったが、今回も一応自前のルール通り、横浜のblanClassは閉めてほぼ完全出張をした。展覧会の中に全く別のディレクション入れ子状に、12組15名(小山友也/村田紗樹/阪中隆文/野本直輝/加藤果琳/関 真奈美/おしゃべりスポット実行委員会(奥 誠之/宮澤 響/橋場佑太郎)/うらあやか/関川航平/岡本大河+宮川知宙/及川菜摘/吉田裕亮)のアーティストを呼ぶという方法をとり、さらに「引込線」と同じようなアーティストの集め方を意識して、私から小山友也、村田紗樹、野本直輝、関真奈美、宮澤響、関川航平、宮川知宙の7人に声をかけ、一人で何かやっても良いし、さらに企画をして、誰かを呼んでも良いと言ったところ、そのうちの小山友也が、野本直輝、宮澤響、宮川知宙の4人が、さらに小山が及川菜摘、吉田裕亮を、野本が阪中隆文、加藤果琳、うらあやかを、宮澤が奥 誠之、橋場佑太郎を、宮川が岡本大河をゲストに呼ぶという…、見る人から見るととてもややこしいことになったかもしれない。


このほかに、引込線では引込線2017 サテライト会場で、隔月CAMPを、ゼミナール給食センターでは「セクシュアルマイノリティを考える会」(高山真衣/齋藤哲也)をそれぞれ、blanClassから紹介し、共同企画で行った。また、これは参加するにあたり、最初から考えていたことなのだが、引込線というアーティストが手動で行い、さらに特殊な会場で行う展覧会に参加するにあたって、blanClassが生きたものとして機能するためには、できるだけ会場に「いること」が大事だと考えた。いる間は、blanClassの若きスタッフが中心になって、放送室などを運営、できるだけ、引込線本体へ、いろいろな関わり方を模索した。ただし、出品作家たちに協力してもらってやっと成立したことであり、反省点もたくさん残った出張企画だった。

引込線は展覧会が終わった後も年内blanClassでスピンオフ企画が展開し、11月には伊藤誠企画の「スケッチ旅行」というワークショップの「反省会が、12月には「blanClass@引込線2107」を振り返るイベントを行った。


昨年同様11月にステューデントナイトをステューデントアートマラソンを開催。今回は8組のステューデンツが参加した。前回が14組で参加者全員がグロッキーになり、8組ならば、ちょうど良いかと思いきや、やっぱり大忙しのイベントになった。いろいろな学校や専攻の学生が集まって交流することには意義を感じるものの、もう少し、ひとつひとつのパフォーマンスに向き合えると良いのかな? などと考えてしまう。3組ぐらいでできそうなイベントも模索しようかな?


通常のLive Artはというと、外島貴幸、岩田 浩、関 真奈美、西野正将、大槻英世、橋本 匠、高山玲子、中川敏光、大久保あり、鈴木悠子、三杉レンジ、泉イネ、津田道子、荒木悠/荒牧悠/荒木美由、山城大督、眞島竜男と、今年もシリーズの演目が多かったため、ソロイベントが少なめだったが、初登場も含めて、どのイベントもリラックスしつつ緊張感のあるblanClassらしい企画を運営できたと思う。ただし、もっとお客さんを呼べたらなあと、改めて反省している。


今年は引込線もあってバタバタしてしまった。そのせいで経済的にはなかなか辛いものもあったが、それでも井土ヶ谷から所沢の給食センターに通う日々は、この先何年かは思い出すであろう良い思い出。先にも書いたが、展覧会は本来作家が不在でも成立するはずの形式なのだが、現状のアートをめぐる状況下では、作品と観客と批評という形に依存するわけにはいかないところがあり、何かを発信するものにとって、その仕草が、生きたものとして機能するためには、まずは、できるだけ、そこにいて、あるいはそこに行き続けるような姿勢が問われるように思う。社会と言って距離を感じるならば、まずは人と人の間に、その時だけでも確かに立ち現れるものやことを頼りに「場」を模索するのが、いつも言っていることだけれど、大事なことなのだと思うのだ。


こばやしはるお(2017.12.31)