認識のボーダーとは?

今週土曜、写真家・菱田雄介氏と写真評論家・飯沢耕太郎氏による対談 [ border / recognition ] が開催される。

菱田氏は、これまで世界を巡りながら、歴史の変わり目とも言える出来事に遭遇してきた。そんな中、突然自国で東日本大震災が発生、写真家とテレビディレクターいう2つの肩書きを背負った氏が何を制作したか、そしてそれはどのように伝わったかを、具体的に検証する作業を中心に進めていく。

今回、表題にもなっている認識にまつわるボーダーとは、どのようなものだろうか。大きく分けて二つの相があるように私は感じている。

一つは送り手側の問題である。動画/静止画、マス/パーソナルなど、送り手側の技術や動機にもボーダーを引き、分析することができるだろう。その試みは震災後、両氏の間で多くの考察がなされてきたところだ。

同時に、世代・思想・距離・・・情報を受け取る私たちにも無数のボーダーが存在している。その捉え方の多様さを個体差、と呼ぶのはいささか乱暴な気がする。差異の分布には偏向があるし、メディアがそれを助長している部分が確かにあるからだ。私たちの中に作られた、まだらな境界線を照らし出すことで、メディアそのものの偏りも明らかになってくるはずである。

トークに先立って18:00より、菱田氏による写真と映像の展示が行われる。あの時、この国で起こっていたメディアコミュニケーションの形をリアルに再現してもらう。一年と少し、時間が経過したことで、当時私たちが置かれていた状況や、情報がどのように浸透していったのか、冷静に顧みることができるのではないだろうか。

最後に、今回はいつものようなustream生放送は難しいことをお断りしておく。展示・トークを音声抜きで、中断を挟みながら放送するような形になるかもしれない。現場でより踏み込んだ話をしていくためということでご理解頂きたい。