AZBY BROWN [Semi-Automatic #2]

 今週の+nightは、アズビー・ブラウン2度目の登場!!
 前回は3月12日の+nightで[Semi-Automatic]をおこなった。その日が大震災の翌日だったため、当然のことながら客足にも相当の影響があり、「近々もう一回やりましょう」ということになって、今回の[Semi-Automatic #2]が決まった。
 今年2月に発行されたアズビーの本「江戸に学ぶエコ生活術」(著:アズビー・ブラウン・訳:幾島幸子・阪急コミュニケーションズ・2011)が巷で話題になっている。友人が所有している本をペラペラとめくってみたのだが、本のなかにはアズビーの手による挿絵がふんだんに使われていて目にも楽しいつくりになっている。


江戸に学ぶエコ生活術

江戸に学ぶエコ生活術


 まだちゃんと読んではいないので、テキトーなことは言えないが、彼が話す日本の住空間や都市空間のユニークさについて触れた講義のなどを思い出した。たとえば江戸の商家の構造に見られる、段差によってゆるやかな仕切りが生み出すコミュニケーションのあり方、閉塞されない管理や視線の豊かさが指摘されていた。
 いびつに欧米化、商業化された現在の日本では忘れてしまったと言っては、あまりにも簡単すぎる。古いものを見てもあたり前のこととして独り合点をして、ちゃんと分析しきれていないというのが、きっと正解なのだろう。近すぎて遠い日本の面影である。
 金沢工業大学未来デザイン研究所所長である彼の研究は建築やデザインを拠点にユニークな観点で独自の広がりを見せている。最近力を入れている研究は、たとえば「手仕事」について、見ただけで「手仕事」の行程を即座に理解してしまう、脳にあるミラー・ニューロンに着目して、プレヒストリカルなものから最新鋭の現在の生産物、さらにその目を欺くフェイクまでも考察している。
 その傍らで、夜な夜な制作しているアートワークが今回の[Semi-Automatic]シリーズだ。その映像作品で特に問題にしているのは、普段の研究にも通じる、人間の理解するメカニズム、つまり脳の問題なのだ。
 前回は4人のお客さんたち(よくぞ来てくださった)と一緒に体験したが、非常にクリアーな音と映像の作品を見ながら、やっているのは知覚と同時に認識したいという欲求をなかなか満たされずに動揺し続ける、ということだった。
 前回、見逃してしまった人もぜひ直接体験してください。



 一回目の直前(2011/3/8)に書いたコラムにアズビーの作品や研究について、[Semi-Automatic]という一連の作品が問題にしている「コラージュ」について少し触れているので、そちらもご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/blanClass/20110308/1299580661
今週の[blanClass 放送室]は、前回の[Semi-Automatic]の様子とトークなど↓
http://blanclass.com/japanese/



こばやしはるお




今週の+night↓
http://blanclass.com/japanese/


AZBY BROWN [Semi-Automatic #2]


アズビー・ブラウンが最近手がけている未公開の映像作品を上映します。作中にみられる、複雑で抽象的なイメージは作家自身によって作曲されたサウンドによってコントロールされていたり、サウンドがイメージに触発されて発生していたり、別の側面では画像合成モジュールによって時間の経過とともに、さらに変更が加えられるなどという、パラメトリックな画像処理システムによって生成されている。それは、「絵画」や「コラージュ」の概念を「時間の領域」に拡張する試みであり、最近のブラウン自身による脳科学研究が反映して、「ヒトの視覚処理システム」について、ひいては「人間の理解力」の境界、限界の探求でもある。


日程:2011年5月14日(土)
開場:18:00 開演:19:30
一般:1,200円/学生:1,000円


アズビー・ブラウン Azby BROWN(アーティスト/金沢工業大学未来デザイン研究所所長)
1956年米国生まれ。イエール大学にて彫刻、建築を学び1980年卒業。東京大学大学院工学部建築学修士課程を1988年修了。日本建築/デザインについての代表的な著書に講談社インターナショナルから1989「The Genius of Japanese Carpentry」、1993「Small Spaces」、2001「The Japanese Dream House」、2005 「The Very Small Home」、2009「Just Enough」など、日本語版に「江戸に学ぶエコ生活術」(2011・阪急コミュニケーションズ)がある。blanClassでは「+ART ENGLISH TRAINNING」の講師もお願いしている。
Long-timer(Azby BROWNブログ) http://web.me.com/azby/Personal
http://wwwr.kanazawa-it.ac.jp
http://www.justenoughjapan.com