からだをつかって考える|百瀬文 [定点観測]の場合

あなたの言葉が、あなたのからだから引きはがされるとき


  今週の Live ARTは、百瀬文の登場!! 百瀬はblanClassでは昨年12月の「ステューデントナイトvol.5」に出演しているので、実は2度目の出演。
  ステューデントナイトのときのパフォーマンス「いま目の前です」は、部屋を真っ暗にして行った。窓から明かりがこぼれるミニチュアの住宅へ、作家本人がビデオカメラを持って床を這って向かっていく。撮影しているその映像は、壁にリアルタイムにプロジェクションされていて、最終的に本人の手によって、そのミニチュアの家に火が放たれるのだが、リアルスケールの小さなお家と、クローズアップされていくサイズを失い別種のリアリティーをまとったお家とのコントラストをデュアルに経験するという作品だった。


2011.12.03 Aya MOMOSE 百瀬 文 StudentsNights vol.5 blanClass


  彼女の作品は、現実に垣間見るフィクションさながらの状況や、フィクションのなかに見るドキュメンタリーな状況を、設えられたシンプルな装置によって、揺れ動きながら経験することができるというもの、といったらいいだろうか? シンプルな装置とは、ああすればこうなるというような、よく見ると事の次第が単純な仕掛けでつくられているという意味。
  そういう単純な仕掛けは、彼女が自覚的に作品を作りはじめた頃から、それらの作品に現れていて、それらの作品のほとんどの要素になっている。ハンマーで膝の少し下を叩いたときに起こる足の動きに連動して、頭の上を狙って吊るされた包丁が下に落ちてくる「脚気検査」(2009)、高いところから紙パックにささったストローの先を伝って、地上にいる作家の口めがけてミルクが注がれる「Milk」(2009)、双眼鏡を装着した2人の一方が長い棒の先に結ばれたスプーン(フォーク?)で、もう一方に食事を与える「Invisible distance」(2010)などがそれ↓
http://ayamomose.com/performance.html
  そういう単純な仕掛けを作品の骨格に持ちながら、現在百瀬の関心の中心にある「フィクション」と「本当」の間へ、彼女の作品世界が展開している。
  武蔵野美術大学卒業・修了制作展で発表されたという「breathing」(2011)は、暗い部屋に水が入ったコップが置かれていて、プロジェクションされた映像のなかで、喪服を着た女性が、横たわっている頭部の口あたりに口を寄せると、そのコップの水がブクブクと音を立てて空気を出すという作品。その作品を見た人から聞いたところによると、最初は、映像で送ることが、何かしらの装置によってコップの水に反映され、相互の関係を暗示するものだと理解していたが、壁の裏を覗くと、録画された映像と思っていたものが、リアルタイムに実演されている行為の中継映像だったことがわかり、実はコップの底と女性の口がチューブでつながっていたのだという。そこまでわかって、たしかに同時に起こっていることのはずなのに、バラバラに認識され、それぞれに醸し出している意味やイメージ同士の関係をどうにも統合しきれない変な感触を生み出してしまうのだろう↓
http://ayamomose.com/breathing.html
  それはステューデントナイトでの「いま目の前です」も同じで、全体に示されている、フィクションでおなじみの事件めいた雰囲気とは相容れない、短絡的ともいえる単純な装置が、隠されることもなく明示されていることで、その作品世界が決定づけられている。
  さて今回は参加する人々の言葉がその人々のからだから引きはがされて、ゆれながらひとつのつながりに結びついていくという参加型のプロジェクトだ。もしかするとこれまでの百瀬の作品にはなかったことが起こるかもしれない。それは作家がコントロールしきれないことが起こるかもしれないからだ。作家と共になにが起こるかを見届けたい。

※ 参加者が最低26名必要な企画なので、奮って参加してください!!!


こばやしはるお


放送室は2012.9.10 百瀬文「定点観測」リハ&プレトーク
http://www.ustream.tv/recorded/25313994


軽食(無料)は「鶏とじゃがいもの煮込み、えびせん」お楽しみに!!
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今週の Live ART↓
http://blanclass.com/japanese/


参加型パフォーマンス
百瀬文 [定点観測]


日程:9月15日(土)
開場:18:00 開演:19:30
一般:800円/学生:600円


1.いくつかの質問が書かれた紙を渡しますので、それに回答を書いて下さい。
2.その答えだけで構いませんので、それを読み上げて下さい。


ある質問に対してある人の答えがある。紡ぎだされた言葉は本来その人の持ち物のはずである。しかしここで放たれた言葉は、やがてあなたの体を離れた別の場所で、もうひとつの物語を立ち上がらせる。そのときその言葉は必ずしもあなたの持ち物とは言えなくなるのかもしれない。

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百瀬 文 Aya MOMOSE

  • 1988年東京都生まれ。2011年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。2012年武蔵野美術大学大学院美術専攻油絵コース在籍。個展に「10th CICF-Spiral Independent Creators Festival」(SPIRAL・東京・2009)、「Park」(Gallery kyabetsu batake・神奈川・2010)、「なぞる人々」(新宿眼科画廊・東京・2012)。パフォーマンスに「ステューデントナイト vol.5」(blanClass・神奈川・2011)「同じ星」(小沢裕子と百瀬文・Art Center Ongoing・東京・2012) がある。ほかに2011年「武蔵野美術大学卒業・修了制作展」優秀賞受賞。2012年「群馬青年ビエンナーレ2012」奨励賞受賞。

http://ayamomose.com