12月のゲスト、L PACK.は3年ぶりの出演。3年ぶりに呼んだのには理由があって、そういう約束になっているから。
L PACK.の小田桐奨と中嶋哲矢のお2人は、blanClass創設当時から、近くの黄金町でお店を出していて、その当時のスタッフとも親しかったことから、2009年に出演をしてくれた数少ないアーティスト。ということもあって、3周年記念イベントでお呼びすることになり、その時はほぼ1週間、小田桐くんが住む形になり、そこへ中嶋くんが通ってきて、それまでに溜まったblanClassのアーカイブから勝手に再演をしていくという、コーヒ付きのイベントをしたのだが、その折に、「また来てね」とお願いしたところ、「じゃあ、3年に一度に来ます」ということになり、それを真に受けて、3年経つたびに連絡をしているのだ。最近、横浜に戻ってきて、新たに「DAILY SUPPLY SSS」というお店をスタートしたばかりなので、ちょうど良いタイミングになった。
もう1組12月のゲスト、ヤング荘はもっと久しぶりの出演。
ヤング荘は津山勇、安野洋祐、北風総貴の3人で結成したユニットで、2010年にその3人のパフォーマンスをしてもらって以来、2回目のソロ出演なのだが、何度か新年のイベントに年賀状と干支をテーマにした映像作品の上映をしてもらったことがある。当初より干支が一周(12年)したら発表すると言っていた年賀状のシリーズが一周し、次のターンに入り、今年4月に晴れて「十二支超」というタイトルの展覧会が行われた。
なんだか他人事なのにホッとして、呼ぶことにしたのだけれど、ここまで間が空いてしまったのは、シリーズが完結するまで、暗に待っていたからかもしれない。
今回イベントでは、紹介文に「約束事について考えてます。」とあるので、もしかするとまたしても新たに長期の約束事が生まれるのかもしれないと思うと、ちょっと怖い。
今では副業も奨励されて、社会全体が終身雇用の世の中から大きく舵を切ろうとしているが、少し前まで、自分の人生の大半のことを十代、二十代には早々と決定してしまうのが当たり前だったころは、一度してしまった約束は、今以上に拘束力があったに違いない。いやいや今だって、ブラック企業を辞めることができず、自ら命を絶ってしまう人もいるのだから、そう易々と価値観が変わるものでもないようだ。
だから約束にしても約束事にしても、とても怖い。その約束や約束事に縛られてしまうからだ。
そんなわけで、普段からできるだけ約束をしないよう、心がけてはいるのだが、だからといって約束せずにはいられない。なぜならば、blanClassなんて、約束をして、それを実行することでしか成り立っていないからだ。
いろいろな価値観、ルール、思想や正義なんかとも距離をとりつつ、しっかりとした書類を交わすのでもなく、クォリティーの高い仕事を目指すのも諦めて、ほとんどなにもしていないけれど、テキトーにした「約束」をテキトーに守ることが、唯一、blanClassのクリエイティビティーだと思っているところがある。
果たせなかったり、破ってしまった「約束」がなかったわけでもないが、それなりに正直に小さな約束をぽちぽちと守りながらblaClassを続けている。
小林晴夫(2018.11-12 チラシ掲載)