9月24日[土]アーティストトーク「彫刻の原点/彫刻の条件」@BankART KAIKO

鷲見和紀郎「brilliant corners」展、第3弾にして最後のトークイベントは、冨井大裕さんをお迎えして、彫刻という形式を抱えて表現をしてきた2人のアーティスト、それぞれが考える彫刻の違いや共通点などを通して、彫刻の原点とは? 彫刻の基本とはなにかを紐解きつつ、未だ彫刻の基本に魅せられている鷲見作品の魅力に迫ります。

この展覧会は、そもそも、池田修さんと鷲見さんの間では、鷲見和紀郎がもの派と80年代に出てきたニューウェイブの狭間の名前のない、あるは歴史化されていない世代の作家であることに注目して、「NO NAME AGE」という仮題で進んでいた企画です。池田さん真意はもはや聞きようもありませんが、助っ人としては、池田さんの企画意図を汲み取りつつ、鷲見さんの作家性にも寄り添いながら、これまで、あまり鷲見作品に触れていなかった人たちへ、つなぎ合わせることが役目と承知して、カタログの編集もトークイベントも進めてきました。

これまで、トークイベントは1回目が、現代美術における彫刻を再考している、千葉市美術館の森啓輔さんをお呼びしてギャラリートークを、2回目は鷲見さんと旧知の仲で、画家であり、批評家でもある松浦さんをお呼びして、対談を行いましたが、今回は私も進行役で加わり、私から鷲見さんに冨井さんを紹介する形で、アーティストトークを行います。

冨井大裕の作品は、最小限の手わざで彫刻を成立させることから、レディーメイドやオブジェ、デュシャンやミニマルアート、ひいては李禹煥の初期の作品につながる作品群を彷彿とさせるところもあるのですが、冨井作品の特徴は、本当に身近にあるものが、そのまま置かれてるようなカジュアルなテイストにも関わらず、それでも彫刻の条件を充分満たして、そこにある。もちろんそれは美術を成立させている制度自体に寄り添い、浮かび上がらせる姿勢の表れでもあると思うのですが、この最低限の彫刻の条件というあたりを手掛かりに、お2人の作品を考えていきたいと思っています。

冨井さんに、今回のトークの依頼をした際、冨井さんは鷲見作品の印象を「彫刻の原点、彫刻家が基本として抑えなければならないポイントだけで作品を作ろうとしている人」と表現しました。

それが今回のアーティストトークのタイトル「彫刻の原点/彫刻の条件」になったのですが、冨井さんが、セゾン美術館の「視ることのアレゴリー」で鷲見作品に初めて触れて以来、彼が、そこはかとなく感じてきた、鷲見作品への諸々の疑問もぶつけてもらおうと思っています。

トークは予約が必要ですのでご注意ください。また1ヶ月の展覧会も25日(日)が最終日です。ぜひお見逃しのないようにお願いします。

 

こばやしはるお

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9月24日[土]19:15〜20:45
アーティストトーク「彫刻の原点/彫刻の条件」
鷲見和紀郎(美術家)、冨井大裕(美術家)、進行:小林晴夫(blanClassディレクター)

参加費:¥1,500 要予約
予約:info@bankart1929.com
会場:BankART KAIKO 鷲見和紀郎個展会場内

〒231-0003 神奈川県横浜市中区北仲通5丁目57−2 KITANAKA BRICK & WHITE 1F
http://www.bankart1929.com/bank2022/pdf/sumi.pdf
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鷲見和紀郎 Wakiro SUMI
美術家
1950年岐阜県生まれ。1972年Bゼミ修了。三木富雄のアシスタントを経て、1976年ニューヨーク(アメリカ)に滞在。ブロンズやアルミの鋳造、ワックスインスタレーション、石膏の直付けなど、触覚に訴えかける表情を備えた造形と多岐にわたる方法を用い、彫刻、インスタレーション、絵画と、独自の空間表現を追求し続けている。1986~87年フランス文化省の招聘でエクス・アン・プロバンスに滞在、マルセーユ、トロワで制作と展示。1999~2000年文化庁特別派遣芸術家在外研究員としてリヨン(フランス)に滞在。2018年インゼル・ホンブロイヒ美術館(ドイツ)、アーティスト・イン・レジデンスで滞在制作と展示。個展に、1994年「THE VAIL」ギャルリー・ところ(東京)、1995年「Wax Works」秋山画廊 (東京)、2007年「今日の作家Ⅺ 光の回廊」神奈川県立近代美術館(神奈川)、2008年「yukel」島田画廊(東京)、2016年「LE CALME —凪—」ギャラリー・メスタージャ(東京)、2019年「メテオール—1. 考える月」ギャラリー21yo-j(東京)など、グループ展に、1992~93年「現代美術への視点・形象のはざまに」東京国立近代美術館, 国立国際美術館(大阪)、1995年「視ることのアレゴリー=1995:絵画・彫刻の現在=」セゾン美術館(東京)、2001年(〜2005年)、「椿会展」資生堂ギャラリー(東京)、2002年「かたちの所以」佐倉市立美術館(千葉)、2017年「彫刻を作る/語る/見る/聞く」東京国立近代美術館など多数。

冨井大裕 Motohiro TOMII
美術家
1973年新潟県生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科彫刻コース修了。既製品に最小限の手を加えることで、それらを固定された意味から解放し、色や形をそなえた造形要素として、「彫刻」のあらたな可能性を模索する。2008年よりアーカススタジオにて、作品が朽ちるまで続く実験的な個展「企画展=収蔵展」を開催。SNSにて日々発表される「今日の彫刻」などと併せ、既存の展示空間や制度を批評的に考察する活動も行う。現在、武蔵野美術大学教授。

小林晴夫 Haruo KOBAYASHI
blanClassディレクター・アーティスト
1968年神奈川県生まれ。1992年よりBゼミの運営に参加。2001年Bゼミ所長に就任、2004年Bゼミ休講。2009年blanClass設立。Live ART+公開インタビュー+アーカイブを運営してきたが、2019年10月、10周年を機にLiveイベントを休業。現在はWEBアーカイブのみ運営。編著に、1997『market by market 12:原口典之 スカイホーク特集』(マーケット発行)、2005『Bゼミ「新しい表現の学習」の歴史』(BankART1929発行)、2022『鷲見和紀郎 brilliant corners』(BankART1929発行)がある。