鷹野 隆大[カメラに罪はない]

今週の+night↓
http://blanclass.com/_night/archives/2958

2010年9月11日(土)
鷹野 隆大[カメラに罪はない]
開場:18:00 開演:19:30
入場料;1,300円/学生:1,100円

初期から最新作まで全シリーズをスライド上映(未発表作品を多数含む)。上映後、blanClassの小林晴夫との公開対談では、国際的に見ても特異な世界観を持つ日本写真の特質について解明を試みる。


 鷹野隆大氏とは、今回+nightにお呼びするためにはじめてお会いした。あいだに入ってセッティングしてくれたのは、古い友人の栗原元氏。この人は、作家でもあるが、長年現代美術の展示のスペシャリストとして、いろいろなギャラリーや美術館の展示を手がけている。経験の豊富さもあるのだろうが、持ち前の勘の良さで、難しい展示でもちょっとした工夫で切り抜けてしまう。その栗原氏がユミコチバアソシエイツからの仕事として、鷹野隆大展のいくつかを展示しているのだ。
 その栗原氏が鈴木理策氏の+nightを見に来てくれて、その日、鷹野氏の+nightを提案してくれた上に、鷹野氏に下話までしてくれた。
 鷹野隆大と言えば、写真集「In My Room」(2005・蒼穹舎)で、第31回木村伊兵衛写真賞を取ったあたりから、その写真集を見て知っていたが、それだけでなく、知っている人が2人もモデルとして関わっていて、不思議な縁を感じていた。
 展覧会は、「おれと」(2009・ナディッフ)を5月に見にいっている。まちまちのサイズのプリントがいろんなタイプの額に入れられて飾られていた。その展示(この展覧会には栗原元は手伝っていないらしい)もすごく良かったのだが、なんといっても写真家本人も全裸になって全裸のモデルと肩を組んでいる様がなんともいえない可笑しさをつくり出していた。プリントをする際の色合わせのために同じ肌色の本人が入った写真を必ず最後に撮るという理由で、シリーズを飛び越えて撮りためられたのが「おれと」なのだそうだ。モデルをした友人の1人高橋永二郎は、すべての写真を撮り終えた後に、鷹野氏がおもむろに脱ぎ、自分の隣に来て、あっという間に撮影したのだと話してくれた。
 モデルとカメラとその後ろにいる写真家、という図式のなかにあって、はじめて生まれる(成立する)視線のあり方に、突然、写真家本人の視線がこちらに投げ掛けられている、可笑しいけどギョットする瞬間でもある。観客の私が見られているように思うからだろうか?
 7月に「金魚ブルブル」(2010・ツァイト・フォト・サロン)にも行った。ギャラリーに置いてあった写真集「男の乗り方」(2009・ Akio Nagasawa Publishing)を見てなおさら思ったことだが、「金魚ブルブル」ではさらに踏み込んでいて、身体の一部が別の身体の一部に接する瞬間を、スナップやスナップのような写真をつくることによって、写真が写すことのできる「センシャルな(エロい)瞬間」というものが、分析的に表れている稀な写真だと思った。
 今回、打合わせでお会いしたときに、なにかパフォーマンスの要素があるようなこと? という可能性も含めてお話をしたのだが、これまでに公で自身の作品を見ながら話すということもなかったということなので「鷹野隆大、自作を語る」という内容で進めていただくことになった。ただ、未発表の作品も用意していただけるということなので、乞うご期待。


こばやしはるお