井出 賢嗣 + 高橋 永二郎 [Round 2]

 今週の+nightは「新・港村」出張第2夜、ゲストは井出賢嗣+高橋永二郎!!
 タイトルの[Round 2]は2人の2度目のセッションを意味する。パフォーマンスの核になるのは「会話」。普段、何気なく交わされ、とらえがたく消えてしまう「会話」を、ひとつのかたまりとして、作品として、提出する。
 前回の2人のコラボレーションは1月29日にblanClassで行われた[登戸 マクドナルド 1階座席 壁側 午後7時からのおよそ30分]。
 ガタガタとトラックの模型が走るワークテーブルを挟んで展開する2人の会話。トラックにはCCDカメラが仕込まれていて2人のあいだにプロジェクションされている。会話の内容は長距離トラックドライバーのこと。東から西へ、西から東へと行ったり来たりしながら彼らがなにを考えているのか? 他愛のない会話は噛み合ったり合わなかったりしながら、うつろ、うつろと進んでゆく。
 どんなときに「会話」が目的になるのか? ほかに目的があって、手段として会話をするというより、会話そのものが目的になることがある。居酒屋での過剰な会話、展覧会オープニングパーティーでのぎこちない会話、深夜のファミレスでの不条理な会話などなど…。思い返してみると、そんなときに、後々まで印象に残る言葉の端々が蘇ってくる。が、しかし、その会話の全貌はすでに煙と消え、全体像の輪郭が微かに残っている程度か…?
 そんなあいまいなはずの「会話」を、良い会話だ、とか、良くない会話だったとか、自己診断したりするが、もしかすと良い会話というのは、ちょっとずつ細部が拮抗しながら、少しずつ脱線しながら、離れるようで離れすぎず、DNAのような螺旋状にどこまでもグルグル展開していくような感じかもしれない。
 前回の2人のパフォーマッスを観た私の印象では、井出が「会話」というものの構造を、大づかみにつかみ、高橋がその全体像に批判的な態度で、細部にずらしを加えるというように見えたのだが、どうだろう?
 2人のパフォーマンスは、そういう不確かな、認識や共有をしにくい、それでも確かにしたであろう「会話」という、モヤモヤしたものを、作品として見えるもの、捉えられる形に収めようとしているのだ。
 

 ちなみに「新・港村」では高橋永二郎がCゾーンの動物園エリアで、井出賢嗣が「Essential Ongoing 静寂と狂気」に、
http://www.ongoing.jp/essential.html
それぞれ作品を出品しているので併せて観に来てください。


こばやしはるお


今週の+night↓
http://blanclass.com/japanese/


井出 賢嗣 + 高橋永二郎 [Round 2]
今年1月にblanClassで行った2人のコラボレーション[登戸 マクドナルド 1階座席 壁側 午後7時からのおよそ30分]に引き続き、同じ場所に同居しつつ、平行に交わらないそれぞれの作業と、平行して交わる2人の会話さらに繰り返される会話を作品として切り取り、その作品を再度繰り返す….


会場:新・港村スクール校舎(Aゾーン):新港ピア/横浜市中区新港2-5
日程:9月10日(土)
開場:19:00 開演:19:30
入場料:1,200円/学生 1,000円


井出 賢嗣 Kenji IDE
1981年神奈川県生まれ。2006年多摩美術大学大学院絵画研究修了。発表は2010年の「AIR」(台北芸術村・台湾)、「ポールは僕が好きで、僕はジャッキーが好きでした」(Art Center Ongoing・東京)、「台湾慕情エトセトラ」(blanClass +night・神奈川)、また2011年の「SLASH 2」(Island Medium・東京)、「逃避・丸い化粧台・パンティとパイプ・7.16」(遊戯室・水戸)など精力的に発表をしている。8月より横浜の黄金町バザールにて滞在を作品として発表している。群馬青年ビエンナーレ2010 奨励賞受賞。


高橋永二郎 Eijirou TAKAHASHI
1979年東京都生まれ。BゼミLearning System 修了。エレクトロニクスを用いて、動く作品はもちろんのこと、光ったり音が出たりする作品もつくる。また Theater Company ARICAに参加、舞台装置/音楽を担当。国内外で公演をおこなう。2009年より、ときに不自由な言語と芸術の「かたち」を問う、実験的パフォーマンスプロジェクト「Bot-tom Boy(ぼっとんぼーい)」を始動。