「新・港村」出張blanClassもいよいよ大詰め、今週と来週はblanClass企画のコラボレーションをお贈りします。これまでの出張企画は2年間のblanClassの紹介という意味合いが強かったが、最後の2週は井土ケ谷のblanClassでは収まりきらない、まさにお祭り企画です。
ラス前企画は、多田正美+鈴木理策 [西浦の田楽]。[西浦(にしうれ)の田楽]とは、静岡県の天龍川沿いにある西浦の観音堂に1200年間、毎年旧暦1月18日、月の出から翌日の日の出まで(約11時間)、夜を徹して行われる農祭り。地元の人は「西浦の観音様のお祭り」と呼ぶこのお祭りは、地能三十三番、はね能十ニ番と、おそろしく演目の多いことも特徴になっている。1200年前といえば、今年の大津波と同じ規模の津波が1200年前にもあったというから、このお祭りのはじまったわけも、そうした大災害を引き起こしたあらぶる神々を「しずめる」のが目的だったのかもしれない。自然の驚異を目の当たりにし、古のお祭りを通して、人の一生の時間では計ることのできないほど長い時間を知るような不思議な感覚を得る。
28年前に、そのお祭りを観た多田正美氏は、その後のサウンド・エンカウンター(多田独自の即興演奏)の着想の得たと言う。15年前に多田氏に誘われて観にいったことのある私は今度は、今年の2月に写真家の鈴木理策氏を誘って西浦に行った(当然、多田氏と一緒に)。理策氏を誘ったのは、和歌山県新宮の「お燈祭り」を撮っている一連の作品があるからだ。「お燈祭り」とは、また違う種類の古い日本のお祭りを観たら、どんな反応をするのかが知りたかった。結果は想像以上のもので、彼は一瞬でその場の空気にのめり込んでいった。もちろん今回のコラボレーションを視野に入れての道行きだったのだが、来年の2月にもまた一緒にお祭りに行こうという話しになっている。もしかすると鈴木理策版の「西浦の観音様のお祭り」写真集が巷に出まわるかもしれない。ちなみに来年は逆に、多田正美氏を「お燈祭り」に連れて行きたいとも思っている。
西浦の観音様のお祭り|小林晴夫↓
http://d.hatena.ne.jp/blanClass/20110223/1298440491
何をそこから学ぶか|多田正美↓
http://d.hatena.ne.jp/blanClass/20110225/1298611507
さて今回の現代版[西浦の田楽]では、サウンドスタッフに中川敏光、舞の演出に「柿ハンドルドライブ」こと浅岡由生子など、blanClassでも常連のパフォーマーにも参加してもらって、8月から打合わせや練習を重ねている。
この間の10/23(日)に井土ケ谷のblanClassで朝からリハーサルをした。私も邪魔にならないように、ちょっとだけ覗いてみたが、大分ユニークな仕上がりになっている。多田氏に「どんな調子?」と、尋ねたところ。「いいですよ。演目を三十三番に増やして、いずれ再演しよう」と早々に先の展望を話してくれた。
今週末の演目は以下のようになっている。
プロローグ 鈴木理策スライドショー
1.ささすり
2.いろこさらし
3.浮枕
4.おおう舞い
5.ついこの唱え
6.天ひき揉んど 多田正美ソロ+鈴木理策スライド
7.てっぽうの舞
8.布団揉んど
9.ついの舞
10.むてっぽう舞
11.くだりのさすり 多田正美ソロ
こばやしはるお
今週の+night↓
http://blanclass.com/japanese/
多田正美 + 鈴木理策 [西浦の田楽]
出演:中川敏光、柿ハンドルドライブと舞いびとたち(浅岡由生子、クゼナミコ、鶴崎いづみ、筒丸優子、大月圭子、那須誠、西浜琢磨、相澤秀人)
多田正美のサウンド・エンカウンターに多大な影響を及ぼした静岡県の天龍川沿いに「西浦の観音様のお祭り」。そのお祭りを今年の2月、和歌山県新宮の「お燈祭り」を撮っている鈴木理策と一緒に観にいった。1200年のあいだ毎年繰り広げられる「地能」「はね能」の現代版。
会場:新・港村カフェエリア(Dゾーン)/新港ピア:横浜市中区新港2-5
日程:10月29日(土)
開演:19:00 開演:19:30
一般:1,500円/学生:1,300円
多田 正美 Masami TADA
1953年生まれ。1974年〜1979年即興グループ「GAP」ではノイズをてがけていた。1994年より自身のソロ・パフォーマンスをサウンド・エンカウンターと呼称する。「素材(石、竹、木の枝、おはじきなど)」を直に擦り合わせたり打ち合わせたりして生まれる生音に満たされた演奏は圧巻。その生音にさらに映像や増幅器を使って多重な空間を実験している。ほかに秦野、オランダ、ネパールで撮った写真作品も発表している。
http://tada-masami.com/
鈴木 理策 Risaku SUZUKI
1963年和歌山県新宮市生まれ。時間や記憶、場所の気配など目には映らないものを主題とする写真作品を発表し続ける。2000年、第25回木村伊兵衛賞。2006年、第22回東川賞。2008年写真協会年度賞。写真集『熊野、雪、桜』(淡交社)、『Yuki Sakura』(Nazraeli Press)他。現在、東京芸術大学美術学部先端芸術表現科准教授。