6月25日(土)高橋耕平[水と油と人と物。相容れないモノたちのオピニオン。]

今週土曜のLive Artは高橋耕平2度目の登場です!!


前回は「発話する主体と転移をめぐって」というタイトルで、ディスカッションをするパネラーの後ろに常にサポーターが見守る形を提案し、個人と集団の微妙な政治の変化を顕在化させる仕掛けを実験した。あらかじめパネラーとして準備していた人たちの会話に入りみだれるようにサポーターたちも参戦して、結果、収拾がつかないような盛り上がりを見せたイベントになった。

2014年12月13日(土)[発話する主体と転移をめぐって]↓
http://blanclass.com/japanese/archives/20141213/


今回もディベートの形をとったイベントになる。今回のキーワードは「水と油」、相容れないものの比喩によく使われる文言だが、実は、リテラルに「水」と「油」そのものが対立するイベントになっている。
というのも、参加者は自分にとって重要とされる水と油の両方を持参し、そのどちらかを手に取りイベントに参加してもらうというのが、導入になっているのだ。どちらかの具体的な水か油を擬人化するように感情移入して、それになりきって議論を進めていく。


明日にはイギリスで、EUに残留するべきか、EUから離脱するべきかという、ヨーロッパ社会を揺るがすような国民投票が行われる。それに先立って、白熱した議論が繰り広げられているようだ。ニュースを辿っていくと、発端はEU加盟国各地から止まることのない移民の流入問題があって、同じ地域内にあってはならないような大きな賃金格差が生まれてしまったことで起こってしまった、簡単には結論が出ないような深刻な社会問題が横たわっていることがわかる。残留支持派は都会のリベラルが多く、離脱支持派は地方の保守派が多いという図式だけで、このことを図るのは難しい。どちらに転んだら正解なのかはよく分からないし、投票結果も予測不能な状態だ。


「水と油」は、近代以降の国家がどうしても死守したい資源であり、その争奪戦で戦いが生まれるぐらいの要な物質。それらものの立場になって、(きっと脱線しながら)突き詰めて、その価値や有用性を宣っていったら、もしかすると、消費社会が目標と定めていた「欲望」の意味が、リアリティーを持って浮かび上がるかもしれない。


高橋耕平のディベートの形は、形の上でもいくつかのトライがあって、それはディベートの定式的に成ってしまったルールを疑っていること。紋切りのゲームになってしまうことを避けたいのだ。だから、そう深刻になることはない。話の内容があさっての方向に行ってしまっても、一向に構わないだろうし、相当な結論に至る必要もないのだ。その代わりに、実際に起こるであろうやり取りの中に、これまでになかった視点や道筋が実感されれば良いのだろう。


そもそも、その定番のディーベート自体が日本人は不得意なものとされてきたので、なにが正解なのか、実のところよくわからない。みんながディベートのルールをわきまえているような素敵な場面に出くわしたことがないからだ。イギリスの現在の議論はくっきりと対立を表しているように見えるが、最近の、たとえば都議会で起こっているような議論を見ると、対立項は不鮮明で、結論は限りなくグレーというお国柄なので、願わくば土曜日のイベントでは水でもあり油でもあるなんて答えにだけはならないで欲しい。


blanClass放送室では、blanClassのスタッフ達と高橋耕平さんとハングアウトでつないで、イベントの肝になる「水と油」についての話をしました。それぞれの大切な「水と油」について。とても盛り上がりました。こちらもご覧ください↓



2016/6/13/Kohei TAKAHASHI/blanClass broadcasting
2016/6/13/郄橋耕平/blanClass放送室


こばやしはるお

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参加型パフォーマンス高橋耕平[水と油と人と物。相容れないモノたちのオピニオン。]
http://blanclass.com/japanese/schedule/20160625/
https://www.facebook.com/events/197194650676099/


「水と油」、相容れない状態を表す際に用いる言葉。水と油、どちらが人間社会の中で重要なポジションを築いているのかを互いが主張し対決する。相容れないものが接する際に引き起こされるエネルギーと、非人間的な物から人間へと向けられる主張を記録する。
 参加者は自分にとって重要とされる水と油の両方を持参し、そのどちらかを手に取りイベントに参加。手にする物の人格となりテーマに沿ったディベートを行う。参加者全てが声を上げディベートしないといけない訳ではない。水、油を持ったままそこに居るだけでも参加は成立する。参加の途中、水から油へ、油から水へ、立場を変えることもよしとする。


日程:2016年6月25日(土)
開場:18:00 開演:19:00(1時間半〜2時間程)
入場料:1,500円(ワンドリンクつき)
軽食(無料)もご用意しております。

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高橋耕平 Kohei TAKAHASHI

  • 1977年京都府生まれ。美術家。物事の物質的・精神的継承と、記憶・記録の重ね書きをめぐる行為、個人史と歴史の交差、個人と集団の力学に着目した活動を行う。近年の展覧会に「社会の芸術フォーラム展『躊躇』」(HIGURE 17-15 cas、東京、2015年)、「ほんとの うえの ツクリゴト」(旧本多忠次邸、愛知、2015年)、「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭 特別連携プログラム『still moving』」(元崇仁小学校、京都、2015年)、個展「史と詩と私と」(京都芸術センター、京都、2014年)、等。

http://www.takahashi-kohei.jp/