最近ある男友達が、ヘテロからバイセクシャルになった。彼には現在、緩やかな形で関係を続けている男性のパートナーがいる。彼は以前よりもずっと生き生きしていて、毎日がとても楽しそうだ。
ある日わたしはそんな彼からある相談を持ちかけられる。「自分は家庭を持つ夢を諦められない」というものだ。周知の通り、日本で同性婚は認められていない。そして、なかなかゲイの男性ともこの悩みが共有できないと言っていた。(どうやらバイセクシャルの人々はゲイコミュニティの中でも微妙な肩身の狭さを感じることがあるらしいのだが、このあたりの心情についてははわたしもまだ勉強不足である)
そしてわたしはある時、彼から「もしよかったら僕の子どもを産んでくれないか。そうしたら、僕と僕のパートナーでその子を育てる」ということを伝えられる。
わたしは思う。わたしは鼻からスイカ的スペクタクルとしての出産という経験自体はしてみたい。ただぶっちゃけ月額平均8万円で暮らすこの経済状況で子どもを育てることは現状かなり厳しい。それ以前にきっと「おとうさん」と「おかあさん」のたった二人の人間から成り立つ「夫婦」という単位による子育てというもの、あるいはその強迫観念自体がいろいろとすでにわたしには無理なんじゃないかという気がし始めていた。(これはすでにそういう形で子育てをされている方を非難するものではまったくない)もし「おかあさん」が3人で「おとうさん」が1人とか、もしくは逆とか、あるいは「日曜日だけ現れる謎のおじさん」みたいな人が急に我が家の食卓に参入してくれたならば、まだ見ぬわが子(神木隆之介くん似)の笑顔が実体となって輪郭を帯び始めるのか。おお神よ、貴方はきっとこんなズボラで非人間的な女にそもそも御子をお授けにもなりますまい。
そんなことを思っていたところのこの彼からの相談であった。この図はまさにカッコウの托卵である。
その美しい声とは似ても似つかぬえげつない托卵行為は、しばしばカッコウを非難する際の格好の題材となってきた。
もし、そのカッコウと仮親鳥との間で、事前交渉が交わされ、双方のポジティブな同意が得られていたとしたら?
カッコウも、たまに巣をのぞいたりして、姿の違う雛鳥たちとみんなで歌を歌ったりするようになったとしたら?
それはもっと「育児」をめぐる「家族」という単位のあり方について、さまざまな可能性を示唆する寓話になっていたかもしれない。
今回は、まずは友人のこの相談を手紙という形で紹介する形から導入を行う。そして、それを実現するためにどういったプロセスが具体的に必要になるのか、わたしが弁護士の方に相談して伺った内容を不慣れながらにプレゼンする。そのあとで皆様からいろいろな意見を伺いたいと思う。場はおそらくこのわたしの文体よりもずっとカジュアルな感じになる予定である。
なお、ディスカッションにはわたしのパートナーである斎藤玲児くんにも快く参加してもらえることになった。彼のパートナーシップに対する寛容さに深く敬意を払うとともに、何よりこのようなことを考える機会を与えてくれた友人にも深く感謝を伝えたい。
ももせあや
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★POST-ER OFFICE参加ミーティング
《カッコウの事前交渉》プレゼンター:百瀬文@POST-ER OFFICE
https://www.facebook.com/events/1769535906649793/
今週の火曜日、TWS本郷オープンサイトで現在開催中の「POST-ER OFFICE」展会場にて、百瀬文を中心に、ポスターをつくるためのミーティング〈プレゼンテーション〉をします。
「POST-ER OFFICE」は、芸術表現の「過去」「現在」「未来」に関連する種々の声や思い、願い、訴えを、ポスター化・ステートメント化してみることで、あらたな提案や議論のポイントを生み出すことができるのではないかという考えに基づいて、ポスターの展示およびテンポラリーなオフィス機能を核とする、議論のためのプラットフォームの構築を目指しています。
blanClassからも何人かのアーティストにお声がけをして、幾つかのミーティングを企画しています。
ミーティングは開かれた場ですので、ご興味のある方はぜひ参加してください。
日程:2016年11月1日(火)17:00〜19:00 入場無料
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企画:POST-ER OFFICE実行委員会
http://poster-office.blogspot.jp/
会場・主催:トーキョーワンダーサイト本郷 3F(東京都文京区本郷2-4-16)
地図:http://www.tokyo-ws.org/access/index.html
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百瀬 文 Aya MOMOSE
- 1988年東京都生まれ。2013年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。個展に、「サンプルボイス」(横浜美術館アートギャラリー1・神奈川・2014)、「ホームビデオ」(switch point・東京・2013)、グループ展に、「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」(森美術館・東京・2016)、「アーティスト・ファイル 2015 隣の部屋――日本と韓国の作家たち」(国立新美術館・東京・2015)、「引込線 2015」(旧所沢市立第2学校給食センター・埼玉・2015)などがある。
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POST-ER OFFICE 実行委員会「POST-ER OFFICE」
- 期間:2016年10月15日(土)〜11月13日(日) ※月曜休み 11:00〜19:00
- 場所:トーキョーワンダーサイト本郷 3階(東京都文京区本郷2-4-16)
http://poster-office.blogspot.jp
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オープンサイト|プロジェクトB 2016-2017
http://www.tokyo-ws.org/archive/2016/08/OS-B-main.shtml