Clopen space +night

 blanClassで +nightというイベントを毎週土曜日の夜(18:00 - 22:00)に行っている。平たくいえばパフォーマンスナイトなのだが、パフォーマンスに限らず、その時間の枠でできることならば、どういったことにでも挑戦していきたい。今週末には土曜日がちょうど10月31日だったので「ハロウィーン・ナイト」と銘打って、blanClassのオープン記念パーティーをする。オープニングパーティーとは前後してしまうが、すでに2回、+nightの催し物が無事終了した。(10/17:丸山由貴、柿ハンドルドライブ、10/24:おととことばこ)両日共に30人ほどのお客さんに恵まれた。
 2回の +nightを終えて、正直やっと「始まったな」と思っている。1回目は、こけら落しの緊張からワサワサしていて、落ち着く暇もなかったから、2回目は観客の1人として鑑賞した。それで「あー始まったなー」と思ったわけだ。
 ステイトメントでも「空間の実践」として一部触れたが、blanClassを始める前に、いくつか「場所」に対して考えていたことがある。その1つがblanClassをclopen spaceとして機能させていきたいというもの。この場所がおもいっきり住宅街に位置しているため、商業エリアに見られるような完全に開いている場所を考えることができない。そこでシックリしたのが「clopen」という概念。ほどよく閉じて、ほどよく開くという発想だった。
 「clopen」というのは数学や建築の領域で使われている用語で、「close」と「open」を掛合わせた合成語。閉じつつ開き、開きつつ閉じるというように、相互の状態をデュアルに兼ね備えた状態を現している。
 「clopen」をネット上で検索していたら、電気配線の上でも上記のような状態があるらしく、その部分に「clopen」をしめす記号がつかわれているらしい。配線図上の「clopen記号」をみていたら、マルセル・デュシャンの「ラリー街11番地のドア」(1927)を思い出してしまった。これはパリのデュシャンのアパートの寝室と浴室の2つの部屋、直角に隣接した出入口を1枚の木製ドアで兼用しているという、デュシャンが実際に生活のなかで使用していた珍しい作品。寝室を使用しているときはそちらにドアを閉め、浴室を使用しているときはそちらに閉める。寝室と浴室という別々の機能をもった2つの部屋を隔てながら、しかもどちらの機能も無駄なく機能させる。つまり一方の部屋のドアが閉まっていても、もう一方のドアは必ず開いていることになる。面白い。すごく単純なことなのに、やっぱり面白い。
 宇佐美圭司氏がその著書「デュシャン」のなかで、この「ラリー街11番地のドア」に触れていて、その作品からデュシャンの作品に共通して流れている「倹約の精神」を汲み取っているが、私などは、その「ドア」がもっている「兼用の機能」が気になってしまう。
 「おととことばこ」さん、別名、山本唯さんはblanClassのことを「白い教室」と前置して「求める空間に対応し変化してくれる場所」というような意味のことを指摘してくれた。このどんなことにも臨機応変に対応し、必要に応じてちゃんと変化し、いろいろな機能を兼用し得る場所であることが、閉じているとか、開いているということよりも、うんと重要な要素だ。「おととことばこ」さんのパフォーマンスを、一瞬、幽体離脱状態で俯瞰しながら、「いけるかもしれない」と感じた。
 ほとんど自前の機材を用意できないまま、おもいきって始めてしまった +nightだが、とりあえずこの場所が備えている「兼用の機能」を最大限生かし、デザインしていきたい。それに5年前には考えられなかった現在のネット環境をなんとかうまく使いこなすことが可能であれば、私が想像する以上にスピードをもって外に開いていくかもしれない。

小林晴夫