文化孤児

 明日はヤング荘が+nightに登場する。

ヤング荘
[紙芝居やります]
2010年2月6日
18:00 open 19:30 start
¥1,000

 全員がBゼミLearning Systemを修了した。それぞれ入所年が1年ずつ異なり、2001年、最後に入所してきた津山勇の入所式と懇親会のときに「ヤング荘」はスーツ姿にサングラスという、おなじみの出立ちで、私たちの前に現れたのだった(春休みに仕込んだらしい)。彼らが在学中に「ヤング荘」として発表したものは、当時これぞ「ひきこもりアート」だなんて思ったものだ。その後の彼らの活躍は知っての通りだが、久しぶりに結成当時のメンバー3人(北風総貴、安野洋祐、津山勇)が、結成したのと同じ場所で一堂に会する。なんとも感慨深い。
 北風くんが今年30歳になる。それで全員が30代に突入する。今週を含めて3週にわたって、この世代の発表が続く。思えば彼らのような30代アーティストは、バブル崩壊からこっち、リーマン・ショックまでというもの、あらゆる既存のものがガラガラと音を立てて壊れていく、その様子ばかりを見ながら、勉強をしたり表現をしたりしてきたのだ。それはそれですごいことだと思う。
 最近、60歳になったばかりの師友の1人が、昨今の世の中の「閉塞感」を実感している、とぼやいていた。正直私は驚いた。個人的にはその10年近く我慢してきた「閉塞感」から、やっと解放されたと思っていたからだ。なにもかもがメルトダウンしたようないまの時代をこそ待ちわびていた感がある。
 たったいまヤング荘の面々が明日の準備をしている。先ほど彼らに、その「閉塞感」について聞いてみたところ、津山くんが「僕らはその閉塞感のなかで生きてきたからもう免疫ができている」というようなことを言っていた。
 サラリと発したちょっとした言葉だが、考えてみると恐ろしい発言だ。
 先週のステューデントナイト第1弾は、あたり前のことながら、さらに若い人々の表現に触れた。4つの学校から計7組のエントリーだったが、それぞれに問題意識が異なり、前回のコラムにも触れたような「ひらめき」に溢れていた。「考える」ことがそのまま表現されているからだと思う。彼らのような若い世代を見ると、とっくに「閉塞感」から逃れているように思える。そりゃそうだ、壊れてしまう前の価値観に、わざわざ戻って縛られる必要なんてないのだ。お客さんたちもこの刺激的な夜を充分に満喫していたと思う。その若い人たちが、どうか変な方向に洗練しないでほしいと強く願う。
 若い世代の無知や無学を憂う人々が多い。私もある程度はその意見にも賛成だし、彼らは言ってみれば「文化孤児」なのだと思う。でも誰が彼らを「文化孤児」にしたのだろう? 大人たちが素直にこれまでの歴史を教えられないでいるのだ。もしかすると彼らの方がわれわれよりも早く自立してしまうかもしれない。なんて思ったりしている。


小林晴夫