今週のLive ARTはドイツ在住のアーティスト近藤愛助が初登場!! 日本での発表は実に11年ぶり。当時は絵を描いていたが、現在は写真作品を中心に制作、発表をしている。
写真といっても、「MASK」や「Man and Woman」に見られる、被写体の真っ白なものは、自身がつくったもの。素材は紙粘土か石膏か(本人に確認していない)? そのものもののフォルムは、11年前までに描いていた絵の中に物憂げにたたずんだり、うなだれたり、座っていたりする男の子ととても似た印象を受ける。
最近の写真作品は、コンピューターでいくつかのイメージを重ね合わせてイメージをつくり込んだりもしているが、見るものにあたえる印象はとてもシンプルなもの。それは色を使わずにモノクロの画面に落とし込んでいるせいかもしれない。
写真に見える黒、白、グレーは、グラデーションというより、それぞれがマットな色面として共存しているという感じだ。その黒は黒、白は白というマットな色面が、メランコリックに抑圧された感情として示されているように感じる。
11年前に描いていた絵は、描かれた男の子や机や椅子よりもペールで鮮やかな色面が、まずは目に飛込んでくる。その色面がやっぱり稚拙なまでにマットな色面なのだ。
先日、小説家の横田創さんがご自身の小説「埋葬」(早川書房)の装丁に使用した絵の話をしてくれた。上村亮太の絵なのだが、上村のブログ「Day by Day」(http://shipponashi.blog98.fc2.com/)を見ながら、「こういう作家はほかであまり見たことがない」と、横田さんが言うので、「15年ぐらい前から、同じような感触の絵が有名無名を問わずたくさんいるよ」と、答えた。
- 作者: 横田創
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/11/25
- メディア: 単行本
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同じような感触というのは、社会に蔓延しているステレオタイプのイメージとは逸脱した、閉じたプライベートに確かに存在するチャイルドフッド。特に抑圧した傷みや性を感じさせる絵画の数々のことだ。
私が、そういう絵のことを、はっきりと自覚たのは、1995年にJulian Trigoの個展(Luhring Augustine・NYC)がきっかけだった。
成熟した社会に多様に展開する個の営みが、いつも開かれた社会のイメージと齟齬をきたしてしまう。そういう情景を、そうした表現から思い知ったのだ。ホームドラマに代表されるような家庭のイメージやモデルは、もはやどこにも存在しない。
かつてナイーブと括られた絵画の中に感情表現としてあった、稚拙で図式的なグラデーションもなく、マニファクチュアラルな制度としての色面でもない、凍てついたようなマットで震える色面。頭のなかでイメージとして肥大したものと、個として存在する人間が対峙して描かれている。その間をつなぐものはほとんど描かれない。少し乱暴だが、そういう感触の絵画のことだ。
近藤愛助の仕事にも、同じような感触がある。昨年の秋、彼からメールが届き、久しぶりに交流が再開し、スカイプなどで何度かお話しを重ねた。昨年の津波や原発について、彼がドイツで考えたことを話してくれた。その話の中でも、個と社会との断絶が彼の問題意識の前提になっているように思えた。
今回、彼はblanClassでのワンナイトという条件に悩みつつ、彼が一貫してテーマにしている、〈存在する〉ということの曖昧さについて、〈境界〉というものの不確かさについて、[目に見えず、確かめられず、誰のものでもないもの]についての考察を、彼がこれまでにやったことのない方法で展開してくれる。
軽食は「スコッチブロス(大麦と野菜の具沢山スープ)」お楽しみに!!
こばやしはるお
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今週の Live ART↓
http://blanclass.com/japanese/
パフォーマティブ・プレゼンテーション
近藤愛助
[目に見えず、確かめられず、誰のものでもないもの]
〈存在する〉ということの曖昧さについて、〈境界〉というものの不確かさについて、写真、映像、テキストなどを、時間と共に変容するパフォーマティブな手法にて提示し、最終的にそれら断片が混ざり合い、ひとつの(もの)となるような、そんな(こと)ができたらと思う。
日程:2月4日(土)
開場:18:00 開演:19:30
一般:900円/学生:700円
近藤 愛助 Aisuke KONDO
1980年静岡生まれ、2001年Bゼミ修了。2008年ベルリン芸術大学造形学部マイスターシューラー過程修了。現在ベルリンにて作家活動を行う。最近の主な展覧会に「LOST WORLDS > < MAKING WORLDS」(Gallery Murata&Friends・ベルリン・2011)、「Illusion/Reality」( Emerson Gallery・ベルリン・2010)、「we are the islands」(Bethanien, Berlin・ベルリン・2010)などがある。
http://aisukekondo.com