アジアを概念化し、西洋芸術に接ぎ木して作品製作をすることは、歴史を振り帰るまでもなく、陳腐であり、かつ危険な飛躍となりやすい。しかし、それを承知の上で、アジアに新たに向かい直す芸術家が増えている。しかも、彼らは、表現形式として展示ではなく上演を志向することが多いようだ。
この現象を「アジア(とか日本とか)」「上演」という言葉を使わずに記述できる言語を獲得したいと考え、「アジアで上演する」シリーズをはじめた。
まず、何人かの「アジアで上演する」アーティストにスポットをあて9月ー1月に発言を記録・交流を行い、2,3月には、いろいろやってみた。
4月ー6月は以上の体験から見出されたいくつかのテーマに基づく分科会をもち、ディスカッションを行う。
4月のテーマは「中世を仮設し、現実をシミュレーションする」とする。
半年に渡るリサーチを経、「アジアで上演」しているアーティストの一部は、近代が崩れてもやっていけることを提示していると捉えられた。彼らは、社会ルールなど西洋近代で形成されたコミュニケーションの基盤が失われ、足場がなくなっている状態を積極的、肯定的に提示している作家と考えられる。それは、近代以前すなわち中世を仮設しているような形態をとるため「アジアで上演する」ように見えてしまうだろう。しかし、彼らの眼目は、現実そのもののシミュレーションにこそあるように思われる。
そこで、逆に、中世を仮設したり現実をシミュレーションしたりしている作り手たちと、アジアで上演することについて考えることで、議論を進めることができないかと考えた。
最初に「アジアで上演する」シリーズの企画者である岸井から、これまで抽出された問題をまとめて20分話す。その後、各出演者から20分づつ、自己紹介もかねて話題を提供いただく。
出演者は、古代からの来歴まで書き込まれた平凡な空想都市中村市を描き続ける地理人こと今和泉隆行、舞台装置の搬入を見せることで建築を上演してしまう悪魔のしるしの演出家危口統之、30年以上の歴史をもつオルタナティヴスペースを「まち」にすると宣言しその運営方針を3年以上話し合い続けている民主主義の実験場パルルの新見永治の3人。これら異色の出演者間および会場を含めたディスカッションを行う。
私たちはどこかに立っている、しかし立場などない、という事態について、議論を深められればと思っています。
きしいだいすけ(劇作家)
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[2]★月イチ・セッション|岸井大輔[アジアで上演する #8|分科会1:中世を仮設する、現実をシミュレーションする]
https://www.facebook.com/events/864153163626970/
出演:今和泉隆行(地理人)/危口統之(演出家/悪魔のしるし主宰)/新見永治(パルルの住人)司会:岸井大輔(劇作家)
日程:4月3日(金)19:30〜22:30
入場料:2,000円 定員:30名(要予約)
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〈予約方法〉info@blanclass.comに以下の内容でイベント前日までに送信ください。こちらからの返信を持って予約完了とさせていただきます。なお定員に達した場合などお断りすることもございますので、あらかじめご了承ください。
〈タイトル〉アジアで上演する予約〈本文〉1)日にち 2)氏名 3)住所 4)メールアドレス 5)参加人数
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今和泉 隆行 Takayuki IMAIZUMI
- 1985年鹿児島市生まれ、生後すぐに横浜市に移る。7歳のときから実在しない都市地図「空想地図」やバスの路線図を描き始め、今も描き続ける。埼玉大学経済学部卒、現在は都市や地域情報、地図に関する講演、ワークショップ、記事執筆を行っている。NHK教育番組やドラマで使われる架空の舞台の地図制作を行っている。
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危口 統之 Noriyuki KIGUCHI
- 1975年岡山県倉敷市生。1999年横浜国立大学工学部建設学科卒業。大学入学後演劇サークルに所属し舞台芸術に初めて触れるも卒業後ほどなくして活動停止、 建設作業員として働き始める。周囲の助けもあって2005年あたりから断続的に活動再開。 2008年、演劇などを企画上演する集まり「悪魔のしるし」を組織し現在に至る。主な作品に「搬入プロジェクト」「わが父、ジャコメッティ」など。2014年度よりセゾン文化財団シニアフェロー。
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新見 永治 Eiji SIMMI
- 1957年京都市生まれ。1982年より名古屋市中区でスペース「パルル」の運営に関わっている。当初は新栄画廊というレンタル・ギャラリーとしてスタートし、現在はカフェとイベントスペースを兼ねた場となっている。2011〜2012年創設から関わった名古屋市長者町のアートセンター「アートラボあいち」の運営に携わる。あいちトリエンナーレ2013へプロジェクトFUKUSHIMA!の一員として参加。
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岸井 大輔 Daisuke KISHII
- 劇作家。1995年より、他ジャンルで追求された創作方法による形式化が演劇でも可能かを問う作品を制作している。代表作『P』『potalive』『文(かきことば)』『東京の条件』