小林 孝一郎 [KAIGATEN]

今週の+nightは、小林孝一郎が初登場!!
 パフォーマンス&展覧会&トークの1週間と盛りだくさん。月曜日には初の試みで「+night」を平日の夜に、その後展覧会、土曜日の夜にはアーティストトークを「+night」の枠で行う。どの日程でもいいので、まだblanClassに来たことない人、週末になかなか来られなかった人も、この機会にぜひお気軽に遊びに来てほしい。
 小林孝一郎とは、今年の4月17日に、小林の個展「白とよこは縦」(竜宮美術旅館)のなかで企画された鼎談(小林孝一郎、小林晴夫、清水哲朗)に呼ばれたことが、知り合ったきっかけ。その企画の仕掛人がヤング荘の津山勇だったり、竜宮の運営をL PACKがしていることもあったので、簡単に引き受けてしまったが、それまでに私は小林孝一郎の作品を見たことがなかった。トークの3日前に予習のためにその展覧会をみにいったのが、初鑑賞。ちょうど作家本人がいたので、L CAMPの美味しいコーヒーを飲みながら、ポートフォリオを拝見しつつ、ひとつひとつの作品について、かなり丁寧な説明をしてもらった。
 なんだかずいぶんと話し込んでしまって、トークの本番では、知り合ったばかりなのに、どこか了解済みの質問やお話しになってしまったかもしれない。
 トークに同席した清水哲朗氏とも、おつきあいが長く、BankART東京造形大学の清水さんの受け持つクラスで、美術談義を何度となくしているので、なおさらそんな雰囲気になったのかもしれない。一昨日に電話で清水さんと「コラージュ」について盛りあがったが、「絵画」について話すのは楽しい。
 ちなみに「+night」のゲストのなかで、画家が一番少ないかもしれない。ワンナイト・イベントや、入場料を取るというスタイルが画家にとって違和感があるのかもしれない。でも画家もたくさん呼びたいと、いつも考えてはいるのだ。
 小林は「絵画」を問題にしている。それもかなり直球に、その形式を抱え込んでいる。その小林を画家と言って良いかどうかはわからないが、「絵画」を問題として抱え込んでいるからといって、いわゆる形式主義者とは括りきれない作家性を同時に備えているのではないか、と深読みをしている。
 なぜかというと、それはどんな形式についても言えることなのだが、外側の問題と同時に、ほとんどの作品がやっぱり内側、つまり内容を持っている作品がほとんどだからだ。
 「シュポール/シュルファス」の代表選手にクロード・ヴィアラという作家がいる。独特の雲形のパターンが繰り返されたペインティングで有名なアーティストだが、その表面と支持体が一致していく展開の過程で、縄を結んで網状にしただけの作品がある。全体に平行四辺形に歪めて吊るされた、その作品は平面の作品が形式的に抱えている問題を正にシースルーに暴きだしている。絵画における形式主義の究極的な作品だと思ったものだが、同時に編み目がつくり出す模様がいつものヴィアラの作品に現れるパターンと酷似して見えることも面白い。
 美術史のなかで、一旦は、還元され尽くした形式である「絵画」も、しかし一部の画家、たとえばジム・ダインやフィリップ・ガストンなどの得意な画家にとっては描かれるべき内容を示すための1メディアとして「絵画」を生きなおす術に見える。実はそうした独自なテーマを持った画家は、少なくない。
 小林はその「絵画」という形式と格闘しつつ、描かれるべき内容を摸索しているように見えるのだ。描かれるべき内容とは、つまり伝えたいなにかということになろうか? そうしたときに「絵画」はなおさらに大昔からある形に見えてしまうかもしれない..。が、そのことで、逆に形が(ヴィアラの縄の作品のように)透明になって、「絵」が生きたものに見えるということもあるのではないだろうか。


こばやしはるお



月曜の「放送室」はパフォーマンスの生放送↓
http://blanclass.com/japanese/


今週の+night↓
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小林 孝一郎 [KAIGATEN]


もし、描くという行為が絵画を形作る最も大きな要素なら、描くという行為が介在していないそれは、絵画なのだろうか。もし、フラットな画面に描かれているという状況が、絵画を形作る最も大きな要素なら、平面的でないものに描かれたそれは、絵画なのだろうか。僕はただそれを知りたいだけなのかもしれない。


パフォーマンス日程:7月4日(月)
開場:18:00 開演:19:30
一般:1,000円/学生:800円


展覧会日程:7月5日(火)→ 9日(土)
開場時間:12:00 → 19:00
入場料:無料


トーク日程:7月9日(土)
開演:19:30
一般:1,000円/学生:800円


小林 孝一郎 Koichiro KOBAYASHI
1982年横須賀市に生まれる。横浜在住2007年東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業2008年-2010年ベルリンに滞在。主な展覧会2006年「ART SCOOTER」八王子市芸術文化会館いちょうホール(東京)2006年「tlu yuvu Inejiの即興live painting 残り繁るあなた」六本木ヒルズアリーナ/六本木(東京)2008年「TACTILE」Gallery Littlish(東京)2009年「Weiss:SIRO」K-Salon(Berlin)2009年「Toys R Art」K-Salon(Berlin)2011年「白とよこは縦」竜宮美術旅館(神奈川)