パフォーマティブ・スカルプチャー|伊藤 誠 +吉川 陽一郎 [てれすこ+こんにゃく/指先のスケッチ]

 今週の+nightは「新・港村」出張第3夜、ゲストは伊藤誠+吉川陽一郎のコラボレーション!! 会場はこの日に限り、新・港村カフェエリア(Dゾーン)なのでご注意を…。
 これまでの彼らの彫刻作品に共通しているのは、共に彫刻という形式を思考の方法論として抱えこんでいるということだ。というのは、最終形態としての彫刻が持つ意味からエキスパンドしていく試みである。
 どういうことかというと、外界にある肌理、質、ボリューム、長さや距離、重さ、際、などとそれらの結合具合、つながり方などなど、細部と全体を見ることや接触することで起こる脳内の反応、つまり彫刻的な思考というものを物差しにして、それらを彫刻的な経験として捉えなおしながら彫刻作品として再構成してきた。
 つまり作品を経験するその部分に作品の本体があり、作品はその経験を誘発する装置として機能をしている。
 彼らの仕事を一緒くたにして語っていることに少し抵抗を感じるが、あくまでも共通している部分だけを指摘している。共通しているといえば、近年、この2人のアーティストはそれ自体が行為を誘発するような彫刻作品に取組んでいる。
 私はそういう作品をパフォーマティブな作品と勝手に呼んでいるのだが、「パフォーマティブ」とは、「約束する」のようにその言葉を発言するだけで行為が完結するような語のことを言う。
 特に伊藤誠の水面から顔を出して、水面に映る景色を視野に徘徊するという、行為をシュミレーションできる装置や、吉川陽一郎の遠くにある小さな彫刻作品をそれらが置かれているスペースの端に設置されている階段を昇ってスコープで見る装置などがそれだ。
 インタラクティブといってしまってはそれまでだが、それらの装置を装着したり、一連の行為を観客は装置とともに経験しなくては、作品は不在のままなのだ。
 示されているのは、前述の通り、形としての彫刻ではなく、体と脳と行為のあいだに起こる知覚経験である。
 今回の2人のコラボレーションは、それぞれにつくり出した経験のための道具を持ち寄って4つの演目を追っかけこするように交換していく。来場のお客さんにも彼らの道具を触ってもらえる時間も用意しているので、ぜひこの機会に参加してください。


こばやしはるお


今週の+night↓
http://blanclass.com/japanese/


伊藤 誠 +吉川 陽一郎 [てれすこ+こんにゃく/指先のスケッチ]


伊藤が考える、かたちの誤読と笑いについてのパフォーマンス[てれすこ+こんにゃく]と、吉川のものとからだが触れ合ってかたちができる、物質と肉体の均衡パフォーマンス[指先のスケッチ]。それぞれのプランを交換する。


会場:新・港村カフェエリア(Dゾーン)/新港ピア:横浜市中区新港2-5
日程:9月17日(土)
開場:19:00 開演:19:30
入場料:1,300円/学生 1,100円


伊藤誠 Makoto Ito
1955年生まれ。1983年、武蔵野美大彫刻科修了。1996〜97年、在外研修(アイルランド)。1990年〜2002年、Bゼミ講師を務める。現在は武蔵野美大彫刻科教授。1983年より活動を始め、その原理的な形態には定評がある。近年の発表は、2009年個展、ガレリアフィナルテ(名古屋)村松画廊(東京)、2009年グループ展、「自然哲学としての芸術原理」(tokyo art museum・東京)、「第1回所沢ビエンナーレ美術展」(埼玉)などがある。


吉川陽一郎 Yoichiro YOSHIKAWA
1955年宮崎県生まれ。1980年多摩美術大学彫刻学科卒業。