澄 毅 [Light is blank(光の空白)]

 
  私が彼の作りだす光を初めて見たのは、かつて四谷三丁目にあった自主企画ギャラリー・明るい部屋でのことだった。折り鶴を焼き尽くす炎と残った灰の写真は、彼の祖父が原爆に遭遇した事実と、今この時代を生きる私たちの意識を繋げる触媒として存在しているように思えた。

  災禍によって失われた過去、もう触れることができない個人的なルーツ。その空白を埋めるべく彼は写真作品の制作に取り組んできた。私たちの視野が盲点(目の構造上存在する見えない部分)を知らず推測しつつ形成しているように、記憶にも盲点といえる無数の空白があり、それを無意識に埋めながら日々編集している。彼は作品を通して、その心の働きを駆動させる力の源泉に迫ろうとしているように思える。

  昨日からblanClassで行われている澄毅の展示「Light is blank」では、天井からつり下がる無数の穴が空けられた写真を、光に透かして見るというもので、それはちょうど木漏れ日を見るような感覚に近いかも知れない。彼はこれまでも写真に穴を空け、光を通し撮影する試みを行ってきたが、光そのものを体感できる作品は初めてだ。この作品を見て感じるきらめきは、私自身が動くことによって生まれていることに気づく。図像としては空白である部分に何かを能動的に満たそうという心の働きが、光を媒体として明らかにされているのだ。

  最終日12日(土)には8人のダンサーが来場し、それぞれが作品とのコラボレーションを試みる。光に触発された彼女たちがどのような動きを見せるのか。それを見つめるわたしたちとの間で何が発生するのか。もはや予想はつかない。この試みから記憶と呼ばれるものが、意識のなかで過去を思い出すという一方向性のものではなく、今この瞬間にも呼吸をするように発生しているのではないかという彼の問題意識が透けて見える。是非ご来場頂き、ご自身の目で確かめて頂ければと思う。
 
みきよしかず


今週の+night↓
http://blanclass.com/japanese/

澄 毅 [Light is blank(光の空白)]

写真に光を透す。
光が透けた場所に生ずる「空白」。
盲点と同様に、「空白」をうめようとする人の願望や願い。
今回の展示では写真に直接光を透すことで、視覚だけではなく、痛点としてもその空白を感じてほしい。
またダンサーとのコラボレーションを通して発生する「想定外」の魅力を探る。

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展示:2011年11月7日(月)〜11月12日(土) 12:00〜19:00 (土曜日は18:00まで) 入場無料
ダンスパフォーマンス&トーク:11月12日(土) 18:00開場 19:00開演・一般¥1,500 学生 ¥1,300
当日はフードデザイナーのモコメシさんによるお茶菓子も振る舞われます。

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澄 毅 Takeshi SUMI
1981年京都府生まれ。明治大学文学部文学科ドイツ文学専攻卒業。多摩美術大学情報デザイン学科情報芸術コース卒業。主に久保田晃弘教授、三上晴子教授の指導を受ける。
現在、写真を表現のベースに作品を制作している。写真新世紀ひとつぼ展など入賞多数。個展に「メテオ」(企画ギャラリー・明るい部屋)、「光」(Port Gallery T)がある。
http://www.sumi-takeshi.com