写真の実験|渡邊聖子 [石の娘/娘の石]

 今週のLive ARTは、渡邊聖子、2度目の登場!! 
 この人は、「写真」をめぐる問題を、少し遠回りするような手続きをとって、生け捕りにしようとしている作家。
 前回blanClassで行った[石の娘](2010年9月4日)では、仕掛けはとてもシンプルで、床に置かれた石を真上から撮影し、等倍か、やや大きめだったか? プリンターで出力したものに紙と同じ大きさのガラス板を重ねて床に展示していくという行為を、淡々とお客さんの前で展開するという作品だった。
 ガラスに覆われただけで、プリンターのインクと紙の質感が、情報として欠如してしまうせいか、不思議と本物の石を見るような錯覚と、写真を見ているという認識が行ったり来たりする。本物の石も部屋の中にはあるので、本物の石の方がチャチに見えてきたりもする。床に並べていった少しだけ厚みのある矩形の石の写真たちが、本物の石の実在感と写し取られた石の艶かしさを観客の前で、同時に対比させてしまう。
 アートや写真のフィールドで、アグレッシブに写真を問いかける彼女の姿勢から、作品にコンセプチュアル方面にエッジの効いた観念的な作品を重ね合わせて理解しようと頑張ってしまう感もあるが、そういう制度的なしがらみを度外視して体感するような環境が整ったら、だいぶ豊かな経験に違いない。
 杉浦日向子のマンガ「百日紅」のなかで、夏、主人公で北斎の娘お栄が、タライにはった水に足を浸して涼むというシーンがある。タライに寄ったコマでは、その足の間を金魚が泳いでいる。
 そういう風流と主人公の心象がオーバーラップして、マンガ独自の空間が生まれるというものだが、水の質を通して真上から金魚を臨む文化の有り様を面白いとあらためて思ったものだ。
 渡邉聖子の仕事を江戸の風流と一緒にしてもいけないだろうが、杉浦日向子の表現のそれと、透明の素材が持っている質感と、どうも重なってしまった。
 さて今回はタイトルには[石の娘]に主客が逆転した[娘の石]が加わっているから、さらに複雑な問題に挑戦、ということなのだろうか? 写真の問題だけではなくなってくるのだろうか? 当日までの謎である。


軽食は「えびせん、鶏とイカの団子汁」お楽しみに!!


こばやしはるお
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今週の Live ART↓
http://blanclass.com/japanese/


写真の実験|渡邊聖子 [石の娘/娘の石]
頼むから静かにしてくれ!


日程:2月18日(土)
開場:18:00 開演:19:30
一般:1,000円/学生:800円


渡邊 聖子 Seiko WATANABE
1980年鳥取県生まれ。2002年早稲田大学第二文学部卒業。2008年キヤノン写真新世紀佳作入選。個展、2010年「否定」(明るい部屋/東京)、ソウルフォト出展(Coex Hall/ソウル)ほか。