blanClass + portfolio 2016

art & river bankで毎年開催しているファイル展「depositors meeting #14」に、今年もポートフォリオを出展する。これが7回目。そしてセレクターとして棚がもらてからは3年目。1年間にblanClassに出演したアーティストから、有志で十数組のファイルが一緒に並ぶ予定。相変わらず段取りが悪くて、締め切りを大幅に遅れて、2日ほど徹夜して間に合わせたのだが、早足で1年を振り返る年中行事となっている。


さて今年は新年パーティーイベントの企画を河口遥にお願いをして、音楽フェスからスタートした。[NEW YEAR MUSIC, MONKEY MUSIC!!]、通称「さるフェス」。出演バンドは、うたにならないうた おどりにならないおどり/川久保ジョイ/CAMP/集中力/DJもしもし/tnwh/Hideki Umezawa+Yoichi Kamimura/ファンテン/松尾宇人/真美鳥Ulithi empress yonagunisan/吉濱翔。即席で結成されたバンドもあったらしいが、ワイワイと楽しい新年の幕開けとなった。


2月には昨年に引き続き、TPAMショーケース2016に参加した。昨年は応募してきた作家をTPAMから紹介してもらい、演目を決めるという方法だったのだが、どうもblanClassの運営とかみ合わない感じがしたので、これまでのイベントから飛び出した形で、さらなる実験の場になればとの思いから、自主企画で一種のアンソロジーとして参加することにした。それが、中村達哉 週イチセッション発表[ボディマップを重ねる]、岸井大輔 戯曲「好きにやることの喜劇(コメディー)」上演、第3回 Whales公演[名絵画探偵 亜目村ケン episode1]の3組。


週イチセッション発表は、中村達哉担当以外にも、津田道子、平倉圭が担当したセッションの発表も土曜日の枠で実現したのだが、どのセッションの発表も個々人の作品をそれぞれに示すというよりも、なかなか個別にはわけがたいような「場」が立ち現れるような印象が強く見られた。その示され方を「プロジェクション」と呼んだらどうだろうと考えたりした。


年度が変わって、大きく普段と違った試みをした。それは、blanClassのスタッフを長年やっていた野本直輝、新年イベントの企画もお願いした河口遥の2人に隔月で、土曜日のLive Artイベントの企画をお願いしたこと。


野本直輝へのミッションは、彼が彼の周辺で起こっている彼と同世代の作家たちと一緒に、今彼らがやろうとしている表現について考えていくこと。総合タイトルが「シリーズ 〇〇のかたちを探す」で、ゲストの抱える問題を1つの概念として捉え、トークも含めたイベントを企画している。これまでに呼んだゲストとお題は、レンタルズが「遊び」、奥 誠之が「ものがたり」、佐藤史治が「仲良し」、荒木美由が「なくなる」となっている。


河口遥へのミッションは22:00画廊でやっていたようなことのミクロな展開だった。ゲストは外島貴幸、渡辺美帆子、酒井貴史、遠藤麻衣。それぞれに割と近い距離で対話をしながら、それまでに企画者と作家、双方が交換し得る問題を展開していたように思う。


というわけで、いつもの年とはまた違った雰囲気が流れ込んだのは間違いないのだが、9月からは1年間、「岸井戯曲を上演する。」というシリーズも始まったので、その分、土曜日に私がゲストを呼べる枠が大幅に減ってしまったため、楽になると思いきや、寂しいというか、責任が足りないというか、思ってもみなかった感想が芽生えている。


私の方から声をかけたのが誰かというと、藤川琢史、金川晋吾、冨井大裕、菅谷奈緒、百瀬文、橋本聡、小山友也、吉川陽一郎、良知暁と本当に少なかったことがわかる。その中でも、いつもと違った企画をしたのが上村洋一。[0℃]という水や氷にまつわるサウンドイベントを立ち上げ、国内外から有志で参加した作家は、Leah Beeferman/Marc Behrens/Hafdís Bjarnadóttir/Daniel Blinkhorn/Jez Riley French/藤本由紀夫/蓮沼執太/Lily Hibberd/France Jobin/上村洋一/川崎義弘/Francisco López/森田浩彰/Katie Paterson/Steve Roden/齋木克裕/Philip Samartzis/sawako/白石由子/鈴木昭男/高橋征司/梅沢英/Jana Winderenと、なんだかそうそうたるメンバーが参加するイベントとなった。


もうひとつ特殊だったのは、元中学校教員で、関東大震災時の横浜での朝鮮人虐殺を研究している後藤周という人をお招きしお話を聞くイベント。聞き手に岩田浩、佐々瞬、趙純恵をお願いして、珍しくblanClass企画でイベントを行った。それは、世の中に急に増えてきたヘイトなムードに対して、考える場を設けるためだった。


その他に、アーティストからの提案に応じて、話し合った結果、お呼びしたゲストや企画が、A/T (近藤愛助/古堅太郎)、シュウゾウ・アヅチ・ガリバー+川久保ジョイ+荒木悠、橋本匠、南雲由子/野本翔平/清野和彦、小口菜緒実、タカハシ ‘タカカーン’ セイジ×仲俣暁生+YukoNexus6、うつくしい雪(河村美雪)、[公開!! 眞島竜男 踊ります 2016年参議院選挙]、橋本聡[Fw: 国外(日本〜マレーシアなど)]、大道寺梨乃と、こういうことは、以前より多くなっていて、当初から望んでいた「場」のシェアが現実的に機能してきたことを実感している。


ステューデントナイトをステューデントアートマラソンと呼び変えた。というのも、そもそも夜にやっていたわけでもないし、今年から、参加者を募集することにしたからだ。それまでは、いろいろな学校で教えているアーティストたちに、blanClassを使って面白いことをしてくれそうなステューデンツを紹介してもらっていたのだ。募集を始めて、4月の回はさすがに召集開催だったが、11月の回では、おかげさまで、14組のステューデンツが参加した。


月イチセッションは、2012年に拡張計画として、月1企画を始めた当初から未だに続いている2つのお化けセッション、杉田敦ナノスクールと、CAMPの月1イベント(今年は前月の話をするという「先月の話」)の2セッションが中心の年だった。その他には、特別セッションという形で、笠原恵実子[アメリカ先住民、大陸横断鉄道、そしてアメリカ現代美術]を3回行った。これは、不定期に数年間は続ける予定。ちなみにナノスクールは来年度、一旦お休みすることになったが、リスボン発のナノスクールがひそやかに開催されるという噂もある。


CAMPは月イチセッションのほかに、土曜日のLive Artの枠に隔月でお呼びしているのだが、昨年同様、ゴールデンウィークには5泊6日のホテルCAMPを行ったほかに、CAMP、基礎芸術とともに参加した「POST-ER OFFICE 実行委員会」として、トーキョーワンダーサイト本郷での「オープンサイト」公募企画を出張参加した。そこでは、blanClassも前後(神村恵、高嶋晋一)、(ウラブラ、百瀬文、笠原恵実子、眞島竜男にお願いをして、ミーティングプログラムを実施した。


昨年からトライしている週イチセッションは、週1回のペースで全10回〜12回、3ヶ月完結にして、参加者たちによる発表を前提にしたセッションだが、今年は前後(神村恵、高嶋晋一)[固有時との会議]を行っている最中。来年2月からは沖 啓介[ARTCOG (Artistic Cognification)プロジェクト|空想科学Science Fictionと科学現実Science Factで越境する未来]が始まる。


blanClassがデザインしようとしているのは、形があって触れるものというよりも、もっとグニャグニャとどんどん変形していってしまい、なかなか触れないようなものをデザインすること。そういう不確かなものごとをなんとかデザインしようともがくことで「場」らしきものが、一瞬だけれど立ち上がる。そういう仕事に不可欠なのは、イメージを持つということよりも、目の前に起こることに、いかに柔軟に対応できるかということ。


とか言っているが、それはとても難しくて、たまにはへこたれそうになるが、ちょっとずつ、ゆっくり進めていきたい。


こばやしはるお(2016.12.22)