blanClass + portfolio 2015

art & river bank 「depositors meeting #13」に、今年もポートフォリオを出展する。これが6回目。今年も昨年、一昨年同様セレクターとして棚がもらえたので、1年間にblanClassに出演したアーティストから、有志で何組かのファイルが一緒に並ぶ予定。


今年は新年パーティーイベントの企画を永田絢子にお願いをして、昨年増本泰斗が提案したモバイルキッチをつかった「モバイルキッチンでできること#2」で始まった。ゲストには後藤桜子、斎藤玲児、BARBARA DARLINg、宮崎直孝と、日頃から手料理に定評があって、自らの活動ともリンクしているアーティストたちが腕を振るった。


2月には池宮中夫が[HerdenohrーMINUTE 群生する耳ー微小]発表前に7日間の日程で、その発表を前提にしたワークショップを開催、3月にた佐々瞬は岩田浩、趙純恵らと協働して、コラボレーションを謀るが、過程で積み重ねた対話を決着させるのではなく、さらに延長する形で発表をしたりと、毎年お呼びしている作家のさらなる実験が展開した。


これは少し内々の話になるが、今年は私を除くスタッフの3人に「Live Artで発表をすること」を課題にしてもらった。ということで、野本直輝が1月に、安部祥子が2月に、宮澤響は飯山由貴と協働で9月に、それぞれ発表をした。通常裏方にまわっていろいろなイベントに立ち会ってきた彼らがどんな内容のイベントに臨むかが興味の対象だった。三者三様のプレッシャーと戦って苦労をしたようだが、相応の反応もあり、今後も折を見てこういう機会をつくろうと思っている。


昨年はできるだけ初めて呼ぶアーティストを中心にスケジュールを組んだが、今年も引き続き、VOLUTION! VOLUTION!、関川航平、小口奈緒実、清水 享、川久保ジョイ、(秋本将人/青山大輔/大槻英世/菊池絵子/杉浦 藍/高木秀典/永瀬恭一/西山功一/益永梢子/光藤雄介/箕輪亜希子/渡辺 望)、笠原恵実子、金川晋吾、趙純恵(ゲスト:李静和)、坂本悠、小泉明郎+高川和也、女の子には内緒などなど、初めて出演してくれた作家のイベントも多いのだが、今年は、近藤愛助、高橋永二郎、河口遥、山城大督、土屋紳一、原田晋、中村達哉、村田紗樹、津田道子、森田浩彰、井出賢嗣、L PACK、武久絵里、前後(高嶋晋一/神村恵)など、2回目、3回目の登場アーティストを意識的に呼んだ。間に何年か挟んで出演したアーティストも少なくなく、確実に変化を持って戻ってきてくれた感が強い。blanClassはワンナイトの経験で完結してしまうイベントが多いので、1回1回のインパクトも重要かもしれないが、繰り返し同じ作家がなにかをすることで、見えてくるものも重要だと改めて感じている。

一方、月イチセッションは、昨年から引き続き、岸井大輔「アジアで上演する」、発端となっていた、岸井も含めた日本のコンテンポラリーアーティストの中に見られる、土着的な興味と、上演のかたちが組み合わされた表現が多く見られることへの危惧への1つの決着として、9月には、戯曲『好きにやることの喜劇(コメディー)』の上演を行った。 これは来年2月にLive Art版を再演することになっている。今年は4月から、鈴木理策「写真のゆくえ」を1年で完結するかたちで行っている。こうした1年完結型のセッションは、月1回のペースで展開することで、短期集中型のセッションとは違う、じっくり変化していく、講師のリアルな思考の転換が手に取るように見ることができ、またある種の答えのようなものにたどり着いていく姿勢に立ちあう機会にもなっているようだ。ところが、2012年に拡張計画として、月1企画を始めた当初から未だに続いている2つのお化けセッションがある。それが杉田敦ナノスクールと、CAMPの月1イベント。この2セッションはきっと、どこまでも続きそうな気配なのだ。


CAMPは月イチセッションのほかに、土曜日のLive Artの枠に隔月でお呼びしているのだが、佐々瞬個展会場で、3人の佐々瞬の代理人が代理でトークしたり、ゴールデンウィークには5泊6日のホテルCAMPがあったり、吉祥寺のOngoingに出張して先行き不明な3つのチームが目隠しをして手巻き寿司をつくったり、子育て経験者たちの「アーティストにとっての子育て」などなど、今年もなかなかな企画が盛りだくさんだった。


今年はさらなるセッション、週1回のペースで全10回〜12回、3ヶ月完結にして、参加者たちによる発表を前提にした週イチセッションを10月に平倉圭(月)、津田道子 (金)、 11月には中村達哉(日・祝)の3セッションを始めた。初めての企画というのは、周知や運営に手こずるもので、まだまだ、問題は山積みなのだが、blanClassの開いている時間や空間を活用し、機能する企画に育てるべく、来春も沖啓介による「ArtCOG (Artistic Cognification)プロジェクト|アートの未来、コモンズ、シンギュラリティ(仮)」、佐々瞬による毎週リサーチを持ち寄って展開するセッション、前後(神村恵、高嶋晋一)による、ダンスのワークショップから拡張したようなセッションと…、現在準備が着々進められている。


12月11日に韓国の清州市にあるNPO法人のアート団体に呼ばれて「インターナショナル・セミナー」という企画に参加してきた。日本から「blanClass」と「てしまのまど」の安岐理加さん、タイ(ラーチャブリー)から「ART NORMAL」という街なかの展覧会を運営しているGrace Supphakarn Wongkaewさん、韓国からは清州市から、この企画の主催「PUBLiCAiR」と「HIVE」、忠州市から「Studio Good」と、それぞれの活動を紹介していくというイベントだった。


blanClassは、作品になりきらない段階のものでも、初めて試みるフォーマットでも、アーティスト本人がわかっていないことでも、結果うまくいかなくても、行き先も目的も不安定な、とにかくどんな制限も許さないような自由で実験的な思考の場だということを、わかってもらおうと努力したつもりなのだが、通訳を引き受けてくれた本島由美子さん(PUBLiCAiR)いわく「韓国では前例のない活動なので、韓国語にするのが、とても難しい」という。「私だって、わかってやっているわけではないから、そもそも説明するのが難しい」と答えたのだが、説明をする確かなことばも探しつつ、もっともっとわからない方向へ突き進むべきだという確信も改めて感じている。


こばやしはるお(2015.12.21)