中川 敏光+山口 紘 [前夜/The previous night]

 今週の+nightは、blanClassの常連アーティスト中川敏光の企画による新ユニット、中川 敏光+山口 紘が登場する。
 昨晩遅くに「放送室」で中川君とスカイプをつないで対談をした。本来ならば、山口さんも一緒に話すべきところだったのだが、彼とは本番のあとにじっくりお話を聞くことにしよう。

 昨晩の「放送室」では、今回の[前夜/The previous night]という作品についてお話を伺った。お2人に共通しているのは、「音」だから、ユニットの接点もやはり音なのだろう。山口さんが作品のベースになる物語や映像をつくっているのだそうだ。演じられるパフォーマンスには舞台などで主に活動している小原謙二さんという俳優も出演する。映像は12日にblanClassで撮影された。その日は女優もみえていたので、男女が出演する映像なのだろう。私は邪魔になるといけないので、席を外していたからあまり多くを知らない。プロジェクションされる映像と演劇的な空間がレイヤーされるのか、または対峙されるのか? いずれにしても山口紘がそこにテーマとして抱えているのは「記憶」なのだそうだ。中川君から聞いたキーワードは、ほかに「車輪」、「引越」だった。
 当日車輪は会場にインスタレーとされる。さらにその上に音が重なって行くという構造になっている。「音」にあたえられたミッションは「ノイズ」というよりも「現実の音」。というのは、現実にもの同士が接して発する新藤のことか? あるいはなにか具体的な事象を想起させる装置としての音ということか、いずれにしろ、「記憶」というテーマと寄り添って観客に届けられる「音」のことなのだろう。
 「記憶」といって、勝手にポジティブなイメージを持ってお話を聞いていたのだが、それは必ずしもキラキラしたおぼろげなイメージなどばかりではなく、失われたものを想起させるそれだったり、忌まわしい記憶へ誘ってしまうなにかだったりするらしい。「あぁ」と思った。
 覚えていてもなんということのない、つかみ所の無い記憶が、「なぜいま?」というときにフッと蘇ってビックリすることもあれば、思い出してしまって胸に塊のようなものが蘇ってしまうようなメランコリーもある。
 「放送室」では波多野くんが中心に話しを進行していたから、どちらかというと「記憶」から「写真」のほうに話しがシフトしてしまって、もっと「音」の話しをすれば良かったというプチ反省会になった。


こばやしはるお



今週の+night↓
http://blanclass.com/japanese/


中川 敏光+山口 紘 [前夜/The previous night]
物に残った記憶。その物の振動する音に私たちは記憶を聴きとり、そこに演劇が立ち現れる。物理的な電気仕掛けの音響装置とコンピューター、ひとりの俳優による、聴取のための演劇の試み。生活の音と物。そして、そこに残された見えない悲劇。幸福の風景。幽霊のように浮かび上がる、古い未知の世界とは何か。今ここの生と記憶を問う。


日程:7月23日(土)
開場:18:00 開演:19:30
一般:1,000円/学生:800円
出演:小原 謙二


中川 敏光 Toshimitsu NAKAGAWA
神奈川県生まれ。多摩美術大学絵画科油画専攻卒業。サウンドアート作品の制作やコンピューターでの音楽制作を中心に活動。近年は鉛筆の黒鉛を利用した自作電子楽器を使ったパフォーマンスで2010年にはTWS主催EXPERIMENTAL SOUND,ART&PERFORMANCE FESTIVAL入選。その他には2009年に代官山インスタレーション関連企画”hair prayer flame ”や2010年にBankArt1929 の展覧会”CityBeats + Live explosions”や BlanClass +nightなど多数。
http://www.myspace.com/luluskin
http://soundcloud.com/luluskin


山口 紘 Hiromu YAMAGUCHI
1983年生まれ。作曲を綿村松輝、湯浅譲二の各氏に師事。演奏会用作品の作曲とともに、舞台・映像用音楽の作曲、ジャンル横断的な演劇表現の企画・演出を手がける。2007年、サントリーホール小ホールにて「音楽展〜作曲家・山口紘〜」を開催。2010年、TWS主催EXPERIMENTAL SOUND,ART&PERFORMANCE FESTIVAL入選。主な作品に、弦楽四重奏の為の「clio」、メディア・パフォーマンス「無数の終焉/終演」など。作品は国内外で上演されている。日本大学大学院芸術学研究科在籍中。
http://jp.myspace.com/1004947692
http://soundcloud.com/hiromu-yamaguchi


小原 謙二 Kenji Ohara
1983年5月3日生まれ。高知県出身。趣味は映画鑑賞、ギター演奏。剣道初段。高知で生まれ育ち、高校卒業後上京。2005年にモデルとしてスカウトされ、その後演技に興味を持ち俳優を志す。自主映画等に精力的に出演する一方、自身でも日々有志を募り映像作品を制作。