藤川 直美 [NO BLOOD]

今週の「新・港村」出張blanClassは藤川直美が登場!!
 これまでに映像インスタレーション作品、演劇的形式への挑戦など、独自の物語空間を積極的に作品に取り入れてきた藤川。今回も無表情で平静な日常を描くようなテイストで描く、マッドサイエンスホラーな藤川ワールドを存分にご堪能ください。
 前回blanClassで藤川が発表した「WILD LOVE」(2010年2月20日)は、演劇形式の作品だった。直後にコラムにも書いたが、はじめて彼女自身が作品に出演した作品だったのだが、シークエンスごとにその流れに決着をつけるがごとく、藤川扮する「ハンター/なおみちゃん」は冷徹にライフルを撃って共演者を代わる代わる始末していく。
 その冷血漢ぶりに、私は作品のテーマとは別の層に、もうひとつ流れている作家藤川直美の本質のようなものを感じた。今回の作品「NO BLOOD」の演出を見ても、その躊躇のない、悪気のない残虐さが随所に垣間見られた。
 もうひとつのコラムで
─ 社会や本人が望む「仮面」や「着ぐるみ」を脱げずに、グニャグニャの主体を混乱させながら「プチカオス」を生き抜く我々の日常を辛辣に風刺する ─
と、藤川作品を解説したが、現代の日本の社会には、そうやって徹底的に個別化し、かつ内向化した「個」のなかに「闇」が育っている。でもその「闇」は、藤川が描くようにカジュアルな明るさを持って、あたり前のように在るものなかもしれない。もはや「心の闇」なんて、それほどショッキングなものではない。「エロ」も「グロ」も「テロ」も薄利多売に茶飯事なものになってしまったのだ。
 過激な刺激がなくなってしまったからこその恐怖がある。「日常」と「非日常」と」区分されていた裏表は、すっかり逆の構図になっているようにさえ思える。もしかすると、なにごともない「日常」なんていうものも、そもそも概念的な戯言に過ぎないのかもしれない。言いすぎか?
 藤川作品を通して、ぜひ「ありきたり」という旋律を味わってほしい。


コラム「主演監督/なおみちゃん」↓
http://d.hatena.ne.jp/blanClass/20100222/1266834906
コラム「WILD LOVE」↓
http://d.hatena.ne.jp/blanClass/20100220/1266639193


こばやしはるお



今週の+night↓
http://blanclass.com/japanese/


藤川 直美 [NO BLOOD]


新作の映像作品(出演:吉本伊織)とパフォーマンス作品。現代社会の暗闇をニートの吸血鬼、バンパイアボーイが語る映像作品。いまや世界中の吸血鬼達は自ら危険を冒して人間の血を吸ったりなどしない。いつでも通信販売で手に入るフレッシュで安全な「ブラッドジュース」を買えばいいのだ。そんな社会にブラッドジュースを買えなくなったニートのバンパイアボーイが問いを突きつける!

日程:10月8日(土)
開演:19:00 開演:19:30
一般:1,200円/学生:1,000円
会場:新・港村スクール校舎(Aゾーン)新港ピア:横浜市中区新港2-5


藤川直美 Naomi FUJIKAWA
1978年生まれ。小6まで国内、海外各地で暮らす。1996年都立芸術高等学校日本画科卒業。2002年Bゼミ Learning System of Contemporary Art修了。2003年『キリンアートアワード 』奨励賞受賞。個展に2009年『BROKEN COMEDY』展(創造空間9001・横浜)がある。主なグループ展は、2001年『UMIIE』展(大浜海岸・葉山)、2002年『Double Positive2』展(府中美術館 眞島竜男企画)、2007年『ZAIM FESTA』(ZAIM・横浜)、2008年「食と現代美術〜芸術のれん街〜」(BankART1929・横浜)、「daily life」(ZAIM・横浜)、「URANIWA-Labo」(グループマウンテン事務所として、都市発展記念館/横浜ユーラシア文化)などがある。