今週のLive Artは、田中功起、奥村雄樹に続いて、「MOT ANNUAL 2012|Making Situations, Editing Landscapes|風が吹けば桶屋が儲かる」の「勝手に関連企画」第3段、佐々瞬が登場!! 「風桶」での佐々作品3部作は、すべてblanClassで発表した作品の展覧会バージョン。blanClassでは今回も新作での参戦だ。
さて、チラシでは「あの人の紹介/読んではみたものの、大げさに言えば許しがたい」というタイトルだったが改題された。ちなみにコメントは「あの時代に生き、ある苦労をした両親を親に持ち、私とは少し違う生活習慣を持つ、あの人。そんなあの人を、紹介します」と、これまでの佐々作品同様、主体と一緒に揺れ動いてしまう「あれ」「これ」「それ」が満載のタイトルとコメントだったのだが、改題の後に示されたタイトルが「恋人のための催眠術/戦争経験について書かれた手記(ケー坊の半生記)」、コメントは「この作品は、ある老人が書いた戦争についての手記を基に、戦争という今となっては体験不可能な出来事と、死者との関係性に 新たなアプローチをするためのアイデアを提示する」と、だいぶ具体的なものになった。
とはいえ、扱っている事柄は、相変わらず、特定しようとするとスルリと手からこぼれ落ちてしまいそうな、解明困難なもの。そして前作同様、対象となる人物の一人は、やはり他界していて、今から確認しようにも、もはやどうすることもできない。そして作家が見つけて、格闘している「もの」は、想像したり、解釈しようにも、そもそもそれがなぜそのような状況で終息したのかが、わからない状態で保管されていた「もの」だったのだ。追いかけていけば、周りは固めていけるかもしれない。歴史からこぼれ落ちてしまったものを確かめるのにも、歴史は有効だろう。でもそれは本当に解明しても良い種類の事柄なのだろうか?
ネタバレを避けるために、私の文章も曖昧模糊としたものになってしまうが、今回、佐々が扱う「ある老人の手記」それ自体は曖昧を極めたものではない。ただその「手記」の有り様が、佐々を唸らせ、考えさせている。
今回blanClassの発表では、「手記」をめぐって佐々が考察した一部始終を1つ1つ開いていく。MOTに行った人なら、お気づきだろうが、この人の作品を体験するということは、その作品や作品行為に思いきって付き合うしかない。それは「MOT ANNUAL 2012|Making Situations, Editing Landscapes|風が吹けば桶屋が儲かる」に出品しているほかの作家にも言えることだが、観る側も「わかりやすさ」や「観やすさ」を求めてはいけない。「美術館で作品を観るお手前」みたいなものを当てはめてもいけない。もはやこれまでの安全な観客の位置に甘んじていてもなんにも起こったりはしないのだ。
美術館に隣接した街や公園や、過去に沈んだ時間も含めて、そうした美術館の外で計測している身体のすべてを稼働して、いつだって生きていれば良いということでもある。
もちろんそうに決まっていると思うからこそblanClassはあるのだが、今回の佐々瞬の作品も、つまりそうやって付き合うよりほかない、という作品なのだ。18:00開場から、展示や映像のスクリーニング、パフォーマンスはいつものように19:30から、一部、演劇の上演もあり…。19:30にあわせて来ても全貌は観られる仕掛け、どういう見方でも楽しめる作品だが、外枠も中身もあるので、できればゆっくりと時間をかけて楽しんでいただきたい。
こばやしはるお
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今週のblanClass Live Art & archives↓
http://blanclass.com/japanese/
|パフォーマンス
佐々瞬 [恋人のための催眠術/戦争経験について書かれた手記(ケー坊の半生記)]
日程:12月1日(土)
開場:18:00 開演:19:30
一般:1,200円/学生:1,000円
この作品は、ある老人が書いた戦争についての手記を基に、戦争という今となっては体験不可能な出来事と、死者との関係性に 新たなアプローチをするためのアイデアを提示する。
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佐々 瞬 Shun SASA
- 1986年生まれ。東京で活動中。2009 東京造形大学美術学科絵画専攻卒業。インスタレーション、パフォーマンス作品を制作。個展に、2009年「それについて」(TAKE NINAGAWA・東京)。グループ展に、「No Man’s Land」(在日フランス大使館・東京)、2010年「camaboco」(東京造形大学・東京)、2012年「テグフォトビエンナーレ2012」(Deagu Art Factory・韓国)などがある。パフォーマンス作品に、2012年「それらの日々をへてあの日がやってくる」(blanclass・横浜)など。MOTアニュアル2012に出品予定。毎週火曜日にスタジオセンター開催中。