今週土曜日のLive Artは、田中功起が2014年以来の4度目の登場です。
これまでの3回は、「不安定なタスク」というシリーズの参加型のイベントを行ってきたが、今回はまったく違って、企画会議とネットワーキングを兼ねたブレインストーミングのようなイベント。
なにを企てようとしているのかというと、Netflixみたいなネット配信番組として作品を制作できないかという提案?
田中功起作品は、そもそも経験するのに少し時間を有する作品作りをしてきたが、年々、その時間がより必要になってきている。
それは、もしかすると当然の成り行きかもしれない。作品が内容を抱えていけば、その内容はどうしても単純化が不可能なリアルな問題を巻き取ってしまう。
30年前ぐらいに友人たちが銀座のギャラリーで開催した政治性の強い内容の展覧会を見て、テレビなどで見るドキュメンタリーや教育的な博物館展示などと比べると情報量が少なくて物足りないと感じたことがあるのだが、それは最近では、劇場型の映画を見ても全く同じことを感じる。
最近になって情報の受け取り方が多様化してきたことにも理由があるように思うが、旧来のブロードキャスティングが培ってきた映像文法がネット上に開かれて、俄然面白みというか、可能性が広がっているように思う。
それに引きかえ、従来の芸術や娯楽鑑賞の方法は、その枠組みや限界に作品や内容自体が制限されて、先読み可能なメディアになってしまっているように思われてならない。
アウトプットの形自体の可能性を問うためにblanClassを始めたところも多分にあるので、また展覧会が持っている不自由さもなんとかしなければならない課題だけれど、これまでになかったアウトプットの方法を模索するのも、とても大事なことのように思うので、ここにきて、この企画はとても共感する。
一時、田中功起さんと一緒に先のことを考えてみましょう…。
こばやしはるお
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【blanClass放送室】
田中功起さんとの放送室は今週金曜日(8/23)に収録・配信予定です。
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企画会議、ネットワーキング|
今回は、企画会議とネットワーキングのための場所を作ります。
例えば時間があって、美術館とネットフリックスの二者択一を迫られるならば、あなたはどうしますか。ぼくは間違いなくネットフリックスを見てしまいます。『アグリーデリシャス』を見たひとはいますか。そこには現代社会の抱える問題も(主に人種問題ですが)、それに対する多様な視点も(ホストはコリアン・アメリカンのシェフ、デイブ・チャンです)、あるいはユーモアの要素も(シリーズの中ではさまざまな映像的な手法がふんだんに使われてます)、そしてプラスおいしさ(のイメージ)もあります。フライドチキンをめぐる人種問題を、日本の観客は知っていたでしょうか。学びとおいしさのバランスがいい感じに盛りつけられていて、でも暗くとらえがたい問題もしっかりと包み込まれている。
近年のぼくの制作はどんどん長い映像を作る方へ向かっています。4、5時間ともなれば、そもそも多くのひとは避けるでしょう。展覧会の空間で見せることに、限界も感じます。長さ的にはネットフリックスのミニシリーズぐらいあるわけですから。そう、逆に言えば、映像配信サービスならば、その長さがあっても見るひとはいるはず。ひとつのシリーズとして作ればいいのかもしれません。
自分の制作方法も、アウトプットも含めて見直す時期にきています。
そこでまずはぼくの最近の制作プロセスについて話し(あいトリの新作『抽象・家族』を例にして)、そのあとにいま考えているアイデアをいくつか話してみます。アイデアを話ながら企画会議として、自由にみなさんと意見交換できたらいいですね。
せっかくなので、ぼくと仕事をしてみたいという奇特な方がいればぜひ気楽に来てもらいたいと思っています。ぼくはこうしてあまりおおっぴらに仕事の募集をしないので、いい機会のはずです。最終的に仕事に繋がるかどうかはわかりませんが、あせらずにお付き合いできればと思っています。映像制作のプロデューサー、制作現場を取り仕切るラインプロデューサー(映像だけでなく、演劇でも)、撮影監督、照明技師など、あるいは問題意識を共有できる社会学者や政治学者、建築家などなど。その場で名刺交換ができたひとは参加費の一部をキャッシュバックします。
ちなみにネットフリックスでの発表の予定も、来年以降の新作の予定も何も決まっていません。
日程:2019年8月24日(土)
開場:18:30 会議スタート:19:00頃から
料金:学生:1,000円/一般:2,000円(ドリンク別)
※入場料のキャッシュバックあり
会場:blanClass(横浜市南区南太田4-12-16)
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アーティスト。主に参加した展覧会にミュンスター彫刻プロジェクト(2017)、ヴェネチア・ビエンナーレ(2017)、リヴァプール・ビエンナーレ(2016)など。2015年ドイツ銀行によるアーティスト・オブ・ザ・イヤー、2013年ヴェネチア・ビエンナーレでは参加した日本館が特別表彰を受ける。主な著作、作品集に『Precarious Practice』(Hatje Cantz、2015年)、『必然的にばらばらなものが生まれてくる』(武蔵野美術大学出版局、2014年)、『共にいることの可能性、その試み、その記録-田中功起による、水戸芸術館での、ケーススタディとして』(グラムブックス)など。
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