5月15日blanClass+nightに出演した片岡亮太について
全盲和太鼓奏者片岡亮太のパフォーマンスは二部構成でおこなわれた。
16:00からの一部では片岡氏のオリジナル曲『大地』『ライオン』を演奏したあと、お客さんと一緒にリズムを作るというワークショップを行なった。10数名のお客さんを3つパートに分け、それぞれのパートで手拍子のリズムを練習した後、今度はその手拍子を声で発するということになった。「カ・・カ」「・タ・・・・タ」「・・オリョウ」というパートを一斉に演奏すると「カ・タ・オ・カ・リョ・ウ・タ」という名前になるというリズム遊びだった。
休憩をはさみ18:00からの二部へ。
視覚情報をなくすために部屋を出来るだけ暗くし、暗闇の中で和太鼓の演奏をおこなった。今回のパフォーマンスの中で片岡亮太が実験したことは視覚を失った自分と同じ感覚で音を見るということであった。開始直後、まだ外は明るく会場の様子はぼんやりと見えていたが、約一時間の演奏の中で日が沈みほぼなにもみえないという中で演奏を聞く事になった。私が片岡氏の演奏を聞いたのは約2年ぶりであった。当時はプロデビューをしたばかりでもあり、今回とは環境も異なるが、打楽器や和太鼓の技術については詳しくない私からみても以前の演奏よりも音の一つ一つがクリアで力強く、2年間の成長を感じた。
また暗闇の中で目を閉じて演奏を聞くことで、演奏者の視覚的なパフォーマンスはみえなくなり、音だけに集中することはできた。その中で、音が遠くから近づいてくるように聞こえたり、体に響いて来るピリピリとした太鼓の振動、彼が作曲するときの方法の一つである「イメージする情景を頭の中で視覚化し、音にする」ということもある程度は共有できた。何も見えない状態で複数の太鼓を叩いていることも改めて驚かされた。
しかし、一曲一曲の間のMCを行なう度に薄明かりが点灯し、まぶたに明るさを感じては目をあけてしまう。やはり自分は目が見える、片岡氏の見ている世界は共有も想像もできないのではないかというところに引きもどされてしまう。片岡氏は聴覚や体をどのように駆使して世界を知覚しているのだろうか。その苦悩や努力も私には計り知れないのが、一度じっくりとその辺りを聞いてみたいと思った。
絵を描くことが大好きだった片岡氏は10歳で視覚を失い、そのころ和太鼓に出会い「ドンッ!」と和太鼓を叩いた瞬間にこれだと思いそれから約14年間和太鼓を演奏している。
彼は視覚を失った経験と福祉士であることを活かし、さまざまな場所でライブや講演を行い福祉の視点からもメッセージを発している。来年よりアメリカに留学しさらに福祉の勉強を深めるそうだ。同時に彼は演奏者としても分岐点に立っているようだ。アメリカに行くのは音の表現とどう向き合っていくか一度クリアにするためでもあり、さらに多様な音楽に触れたいと話していた。帰国後にまた彼の演奏や話を聞きにいこう。
はたのこうすけ