女と武器|柴田漢央+湯浅加奈子


例えば美しさをつくることが芸術としましょう。個々の表現や主張はあれど、それは個性という事でとりあえずはそうまとめておくとします。では、美しさを基としない意図で作られたものは美術芸術の品物ではないという事になります。とはいっても食器や家具など工芸品として、美術的価値をふまえながら製作されているものもあります。では、武器はどうでしょうか?武器は何かに対するための「力」として在るものです。日本刀の鍔や鞘、目貫などの拵えには細かく美しい彫刻が施されている事がほとんどです。工芸品かというとそのとおりなんでしょうが、工芸品であるといわれると私はどうもピンときません。人を傷つける為に考案された道具、道具は使わなければ存在価値はない。しかし、武器が使われるときは誰かが傷つくとき。そういった陰の気配に造形的美観を加える事によって輝く危うい美しさが武器の魅力であり、美術品であるにもかかわらず一線を画した存在であります。
今回はそんな武器の在り方から少し原点寄りに戻って、「欲しい武器」というところから注目してみました。武器を公に携帯することが許されていた時代に生きていた人には、頭の中で武器のイメージの仕方がスムーズであったはずです。今はほとんどの場合、日常生活で武器の活躍するところはありません。よって人が武器を考える事もほぼ皆無といっていいでしょう。しかし、本当は人それぞれに狂気とそれを抑える力とあると安心する武器があるはずです。武器を考えるという事は、何かを、または何かから「守りたい」「攻撃したい」という気持ちの象徴的なかたちであるはずなのです。