今週土曜日のLive Artはソロでは初登場、高石晃が出演します。
高石晃は2014年に早川祐太と共に出演。その時はスタジオの中で、彫刻家と画家が彫刻と絵画を制作するスタジオ内での思考する様をblanClassに再現しつつ、言葉にできない状態の、その思考や行為、ひいいてはその産物がつくりだす形自体をお互いに交換することができるかという実験的な時間を示したものだった。
普段は絵画作品を制作している高石だが、2015年にスペース23℃で行われたグループ展「わたしの穴 美術の穴」では、ギャラリーがある奥沢の住宅の庭に穴を掘った。
穴を掘ったのは、スペース23℃というギャラリーがアーティストの榎倉康二氏ゆかりのスペースであったことこともあり、榎倉がかつて穴を掘っていたこと、その後、榎倉康二、高山登、藤井博、羽生真が、1970年にアパートの敷地内に空き地で行った野外展示「スペース戸塚`70」を調べていくうちに、そのことに触発された石井が空き地に穴を掘るイベントを行い、高石自身の作品行為にもなっていった。
また彼らのキュレーションによるシリーズに展開、昨年の「わたしの穴 21世紀の瘡蓋」を挟んで、今年5月には第3弾、「わたしの穴 美術の穴」2019年企画が3つの会場で同時開催された。
私は全てを見ているわけではないが、2015年のスペース23℃でのグループ展では、石井の映像作品と、高石の穴を目撃していて、最近になって、そのシリーズが継続していることにいろいろと思うところもあり、blanClassにお呼びして、なにか一緒に考えてみようということになった。
いろいろとというのは、私ごとにもなってしまうが、1995年〜1997年、原口典之氏が1968-69年に制作した米軍の戦闘機の尾翼部分の実物大の作品、《スカイホーク》を再制作するという話を聞き、彼とMarket(当時横浜にあったアーティスト・イニシアティブ)に頼み込んで、1年以上取材を重ねて、《スカイホーク》オンリーを特集したムック本を制作したことがあって、その動機が《スカイホーク》がつくられたのが私が生まれた歳であったこと、テレビでNHKの映像の世紀を見ていたらスカイホークが鈴なりになっている空母を見たことだったのだが、石井+高石が美術史にも組み込まれているようで組み込まれていないような、しかしかつて確かにあった、あるアーティストたちの行為に、またそのわずかな痕跡に、なにかを手繰り寄せるように、静かに思考をし始める姿には、共感するところがあった。
「わたしの穴」のシリーズごと呼ぶという手もあったのかもしれないが、そこはblanClassなので、彼らの本体から一つだけ引っ張り出して、その正体を見てみたいという、そんな企画。
といっても、blanClassの敷地内に大穴を開けられては、ちょっとまずいので、本物の「穴」というわけにはいかないけれど、なにかしら「歴史」と「穴」の間で考えを巡らせるような、プレゼンテーションが展開される予定だ。
実は現在のところ、高石くんは3つぐらいの可能性を準備しながら、どれにしようかと詰めている段階(7/7現在)で、決定したら、また告知をします。
はっきりとした答えが出るようなイベントではないかもしれないけれど、blanClassを初めて訪れたはずの多くの人が、かつてのこの場所の、手の届かないはずのイメージと重ね合わせて、遠くを眺める目をしていることがあって、みんなはなにをしているんだろうと、いつも不思議に思っていたので、今度のイベントが、そこで起こっていることを、改めて考える良い機会にならないだろうかとも思っています。
より妄想が広がってしまうのか、それともなにかしらの気づきが生まれるのか、どちらでしょうか。
こばやしはるお
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【blanClass放送室】
今期あは2つの放送室が上がっています。それらもぜひご覧ください。
2019/5/17/高石晃#1/blanClass放送室
2019/5/17/Akira TAKAISHI/blanClass Broadcasting
7月13日(土)のゲスト高石晃さんとの放送して第1弾! 現在、三軒茶屋のclinicで行われている高石晃個展「下降庭園」会場でお話ししました。「歴史」と「穴」について、個展の作品を中心にお聞きしました。
2019/6/27/高石 晃 #2/blanClass放送室
2019/6/27/Akira TAKAISHI #2/blanClass Broadcasting
7月13日(土)のゲスト高石晃さんとの放送室第2弾! 今回はblanClassでお話ししました。イベントの具体的なお話を伺おうと思ったのですが、どんどん美術談義になってしまいました。ちょっと長めです。
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